第1話 拾った(3)
「……で、あるからして、我がアウル王国は光あまねく女神様の恩寵の元、勇者アウル・エリンスロットが王となり、治める事となったのです。」
カッツ、カッツ。
黒板にチョークの音が響く。
(あの人、大丈夫かなあ)
「おい!レオン。聞いているのか?今日はいつもに増して授業に身が入ってないぞ」
先生が大きな声で、みんなが一斉にこっちを向いた。
隣に座るミカの心配そうな目も見えた。
「あ!」
(思いついた!)
「先生!ミカがお腹痛いって言うんで、一緒にトイレに行ってきます!」
挙手をして先生に大きな声をかける。
「なあ、ミカ。大丈夫か?」
そしてミカに顔を近づけた。
ミカは一瞬目が泳いだ。
(俺にあわせろ!)
すぐに合点がいったようで軽く頷く。
「いててて。先生チョット行ってきます」
ミカが急にお腹を抑える。
(荷物忘れるなよ)
レオンが小声で囁くと、それにも頷いた。
「おい!」
先生が呼んでいたけど、もう、俺たちは教室を走り出していた。
一生懸命玄関まで走る。
「ハアハア。レオンたら、こんなこと良くないんだぞ」
「だってさ、ミカだって気になっていただろ」
「それはそうだけど……」
「さっ。行くぞ」
急いで水車小屋に戻った。
水車はいつも通りギイギイと回っている。
朝見た時と何も変わらない。
「静かだな」
「しんじゃってないよね?」
ミカが震える声で俺のシャツを引っ張る。
「だから、心配で来たんじゃないか」
「大人呼ぼうか?」
「学校サボったことバレるだろ」
「それでもさあ……」
口ごもるミカを後ろにしてドアの前に立つ。
「俺が開ける」
そっとドアを押すと、ギギギーーーーと軋んだ大きな音が出た。
ミカがビクッとした。
シャツが引っ張られる。
中はもちろん暗いけど、元々掘立て小屋。壁は隙間だらけだ。光がもれて何があるのか一応分かる。
じっと目を凝らす。
でも、朝寝かせたところに男がいない。
どこに行った?
「レオン?」
「ミカ。あのさ……」
後ろにいるミカに話しかけた時、俺のすぐそばの壁が動いた。
「うわあああ!」
思わず飛び退いた。
「どうしたの?」
顔を寄せたミカにぶつかる。
でも、動いた壁は俺めがけて来たわけじゃなかった。
見ると床に朝の男が倒れていた。
「痛いいい……」
膝をさすっている。
「レオン大丈夫?」
「ああ。俺はなんともないけど、ミカは?」
「なんともない。ところでこの人は大丈夫なのかな?」
俺たちは、床に転がる男を覗き込んだ。
「なんで転んだの?」
男は膝にフウフウと息を吹きかけている。
「だって、誰か来る音がしたから。隠れていたら、君たちだったから、安心したら、体にちからが入らなくなって……」
涙目だ。




