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拾ったお兄さんを就活させるけど、なぜか10歳の俺たちが保護者です  作者: 南山


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第8話 目にする(1)



「いくぜ!やあ!」


カンッ!


「振りが大き過ぎだ、レオン」


「次!ミカ。来い!」


「ハイ! イヤアアーー!トウ!」


カンッ!


「さっきよりいいぞ!その調子だ」



俺とミカは、夕方にお兄さんから剣の稽古をしてもらえることになった。


「ハア、ハア、疲れるんだけどさあ」

俺は剣を構えながらミカに話しかける。



「今までも俺とミカで、剣の稽古をしていたけど、お兄さんとやると、何だか上手になっていく気がするんだけど。」


隣のミカは俺より肩で息をしている。

「ハア、ハア、ハア、ほんとに疲れるんだけど。」


ミカは額の汗を腕で拭う。


「僕も少しは上手になっているかな」


ミカは一呼吸おくと剣を振りかぶった。

「ヤアアーー!」

「ヤアアーー!」



お兄さんがミカの方に目を動かした瞬間を狙って俺は、お兄さんに仕掛けた。

でも……


カンッ!


あっさりと交わされてしまう。


「ミカもレオンも、上手になっているよ」

お兄さんはにっこりと笑う。


「休憩!お兄さん。」


俺は地面に座り込んだ。


「ハア、ハア、……」

ミカもへたり込んだ。


ここのところ、俺たちは水車小屋に通っている。お兄さんのバイトが終わる頃に集まって、剣の稽古をしているんだ。


剣といっても、俺が拾ってきた棒だけど。


お兄さんは、剣の稽古が好きらしい。疲れて帰ってきても、稽古になると嬉しそうだ。




「今日はさ。これ持ってきたんだ」

ハンカチにくるんだ荷物をミカに見せる。


「お!いいじゃん。僕の分もある?」

「へっへっへ。あるよ。たくさん家の庭になってるのをもいで来たんだ。」


「ほいっ!」

俺はミカに一つ投げた。


ミカは地面に横たわっていたけど、腕を伸ばした。


「ナイスキャッチ!」

「ちゃんと良いところに投げてよ。もう、腕が上がらないんだからさ。」

ミカはレモンを手に取るとガブリと噛み付いた。

「おおおお!すっぱ!」


「当たり前だろ。レモンだもん」


お兄さんを見る。

俺たちが休憩しているのに、お兄さんはまだ素振りをしている。

木の棒だけど。


「でもさ。お兄さん、かっこいい構えなんだよね」

ミカがマジマジと見ている。


「確かに。」


俺は手に持ったレモンを、見た。

「お兄さん、いくよ!受け止めて!」


そう言うと、素振りをしているお兄さんに放り投げた。


俺は、お兄さんが慌てて棒を投げ出してレモンを受け取ると思っていたんだ。


お兄さんは一瞬ビックリした顔をした。


でも、その後は俺の予想と違った。


お兄さんはレモンを見た。

その目が光った。

少なくとも俺には光って見えた。

そしてなんと、棒を構えたと思ったら、レモンを叩いた。


「うわああ!!!」


お兄さんが叫んだ。

目を押さえている。


「水!洗ったほうがいいよ」


ミカがお兄さんを川に連れて行く。

俺もお兄さんに駆け寄った。



必死に目を洗ってから、目をシバシバと瞬かせた。


「ああ!ビックリした。レモンだね。いい香りだ」


「ごめん。手で受け取ると思って。

まさか、剣で打つなんて思わなかったんだ」


「僕も驚いたよ。もう、目、大丈夫?」


「ああ、もう平気だ。川がそばで良かったよ。汗も流せてスッキリしたよ」


お兄さんは張り付く髪の毛をかきあげた。


「でも、すごいね、レモンを打つなんて。」


「それは、前に練習……いや、まぐれさ。」


「練習?」


「あ、いや、ほんとまぐれ。当たってラッキーだったよ。」


お兄さんはそう言った後、手を顎に当てて呟いた。


「……いや、待てよ。目を狙えば……」

「なんて言ったの?」


「え? いや。美味しいレモンだなって」


「食べてないじゃん!」

「いい汁だったってこと!」


「まだ俺んちの庭にあるぜ。また、持ってくるよ」


「頼むよ。」

お兄さんは新しいレモンを受け取ると、齧った。


「すううううっっぱああ!

でも、練習の後の体にちょうどいい!」


「すごい顔!」

「ただ普通に髪をかきあげてたら、かっこいいのに、今の顔はすごい顔!」


「もう!」


「それより、レモンを叩くやついるか?そんな事したら、汁が出るに決まってるだろ?次持ってきた時は気を付けてくれよ?」


「わかった。」

お兄さんはちょっとシュンとした顔をした。



「投げるレオンもどうかと思うおけどな」

ミカが俺の肩に手を置いた。





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