第7話 驚く (3)
「ギルは大丈夫かな?」
おじさんは帰り道になると言い出した。
「俺は、ギルを甘やかすわけじゃないが、仕事が出来るのも疲れると思うんだよ。ほどほどで良いんだ。」
「ほどほど?」
「初めて来たときも、ギルは無理だと思って出した仕事を、一人でやり遂げてしまったんだ。汗だくになりながらな」
おじさんの足が止まる。
「もちろんそれは素晴らしい。大事なことだ。」
「だがな……。」
おじさんは足元の草をちぎった。
「疲れすぎてしまっては、思わぬ事故になりかねないし、長続きしないこともある。」
そう言って千切った草を、風に流した。
「そうなんですか?頑張る事が大事だと教わりました。」
「それは、その通りなんだが。人生は長いんだ。『継続は力なり』って言葉もあるぞ。短距離走だけではないんだ」
「その考え方は、俺、初めて聞いたかもしれません」
お兄さんは風に流れる草をみていた。
◇◇
「おじさん!お兄さん!おかえり!」
ギルの大きな声。
それだけで、もう、仕事が終わったことがわかる。
牛小屋はきちんと片付いていた。
朝よりも綺麗だ。
「餌と水。あげたぜ。」
「すごいなあ。」
おじさんもお兄さんも本当に感心した声を出した。
「体は大丈夫か?」
おじさんが尋ねた。
「ああ。あの牛、良い毛並みだ。元気の良い若い牛って感じだね。体がきれいだ」
「ギル、お前の体のことだよ」
お兄さんは笑った。
「俺っち?何ともないぜ。どうして?」
「何ともないならいいんだが、無理するなよ。」
おじさんはギルの肩を軽く叩いた。
「牛は一日くらい餌や水が少なくても、すぐにどうこうなるわけじゃない。だが、人間は違う。怪我をすれば、一生残ることだってあるんだ」
ギルの顔を見た。
ギルは顔を傾げた。
「でも、それが仕事だ」
おじさんは、ちょっと考えて、ゆっくりと言った。
「俺はギルに何度も来て欲しいんだ。数回ポッチで体を痛めたから来れないって、言って欲しくないんだ」
ギルはパッと顔を明るくした。
「驚いたなあ!そんな事言う雇い主はいないでござる。
俺っち、わかった。良い従業員になるでござる。
ここは疲れるけど良い場所だし。
おじさんのこと好きだ。金もくれるし。親切だ」
「おう。ずっと来い。何度だって来い。待ってるぞ」
おじさんはギルの頭を撫でた。
「お前、本当に頭がいいな。うちの子どもを思い出すよ」
「俺っち、こんなに褒められたの初めてでござるよ!」
ギルは恥ずかしそうに飛び跳ねた。




