第7話 驚く (2)
ガタガタガタガタ
「こんにちは」
「おじさん、お兄さんと一緒なのね。」
「おじさん、今日は牛乳、引いてもらってるの?腰痛いの?」
道の端で地面に絵を描いていた子供たちが駆け寄ってくる。
「ああ。こんにちは。腰は大丈夫だ。ありがとよ」
「今日の牛乳も美味しいぞ。ベコちゃんがご機嫌だったからな。良い乳を出したぞ」
「うわー!嬉しいな」
おじさんの周りを子供たちがはねて回る。
そんな子供たちの頭をなでる。
撫でられた子どもは、嬉しそうに笑う。
子供たちを後にした時にお兄さんも嬉しそうに言った。
「あんなに喜んでくれるなんて、仕事冥利につきますね」
「ああ。いい子供たちだ。ありがたい」
お兄さんは、子どもたちを見送るオーディーンさんを、じっと見ていた。
「すごいなあ」
「俺は、仕事してるだけだ。特別なことはしてないぞ。」
おじさんは頭を掻いた。
「淡々と牛の世話をしてるだけだ。」
腕組みして、付け加える。
「んー。ただ、牛が好きなんだ。
ああ。子どもも好きだがな。」
「好きな仕事をして、みんなに喜んでもらえる。いいですね」
「かもな。ま、俺も色々あったがな。」
おじさんは、ちょっと遠い目をした。
◇◇
いつの間にか丘の上の家が見えて来た。
おばあさんは戸口の椅子に座っている。
先日と全く同じように見える。
「こんにちは。今日もいい天気だね。牛乳だよ。」
おばあさんの皺が動いた。
「ああ。その声はオーディーン・サーンだね」
「俺のことを名前で呼ぶ唯一の人だよ」
おじさんはお兄さんに肩をすくめてから、説明した。
「おや。私が耄碌して死んじまったらお前の名前は誰が呼ぶのさ。」
「ああ。女房も子供もいないからな。婆さん長生きしてくれよ」
お婆さんは、鼻を鳴らした。
「私はまだまだ元気じゃ。若い頃は冒険者での。王様に勲章をもらったこともあるんじゃぞ。」
「そうだってなあ。」
何度か聞いた事があるのか、おじさんは特に驚いた様子も見せない。
「……王様?」
反応したのはお兄さんだった。
「そう。今の王様のお祖父さんに当たる方じゃ。名前は……」
「……エリンスロット・モーリアス・アレン」
「そう!よう知っておるの!」
お婆さんの目が大きく開いた。
「あ、いや、昔学生の時に習ったので」
「ああ。もう教科書にも載るのか。あの隣国との戦いや、ドラゴン討伐はすごかったという話だな」
頷きながらおじさんは空の牛乳瓶を荷台に乗せた。
「良い昔話ができた。ありがとうよ」
お婆さんは嬉しそうに手を振った。
おじさんも片手をあげた。
お兄さんは荷台を引いていた。
二人とも、頬いっぱいにクッキーを頬張っていた。




