第5話 届ける(2)
「よく来てくれた」
牛小屋前で待っていたおじさんは、腰を曲げていた。
「腰を痛めてしまって。バイトを頼んだんだ。いててて。」
おじさんの顔が歪む。
「大丈夫ですか?」
「ああ。有難う。湿布を貼ったからコレくらいなら今日一日、休んでいれば良いだろう。」
おじさんは、たくさんの牛乳瓶が乗っている荷台を指差した。
「これを配達して来てほしい。毎日俺の牛乳を待っていてくれるお客さんがいるんだ。頼む。」
おじさんは頭を下げた。
「おじさん。頭なんか下げるなよ。俺たちが代わりに配って来るぜ」
「そうだよ。頑張ってバイトするよ」
「頼んだぞ」
おじさんは地図をくれた。
ギルの方は牛の世話だった。
「とりあえず、餌をやらないといけない。餌と水をやってほしい。」
「分かり申した!」
ギルはドンと胸を叩いた。
荷台は取っ手が付いていた。
お兄さんが引いて、俺たちは後ろを押した。
道は町と違い、泥道だ。
車輪の跡が残っている。
ガタガタガタ……。
「これ、結構大変だな」
ハアハア息があがる。
「そうだね……」
ミカも言葉が少ない。
地図を見ながら家々を回る。
「今日はおじさんじゃないの?」
「おじさんちの牛乳は美味しいんだよ」
「牛のベコちゃんのお乳は甘いのよ」
ガラス瓶に入った牛乳を見て喜んでくれる子どもたち。
「すげえな。こんなに嬉しそうにしてくれる。待ってたんだな」
「おじさんの仕事は、すごいね」
「俺たちは会ったばかりだけど。
でも、すげえよ」
こんなにみんなが笑顔になる仕事ってあるんだな。
「俺たちも喜ばれる仕事に就こうな」
俺はミカを見た。
「うん。僕たち、騎士か冒険者に、なるんだろ?」
「おう!」
なれるかわからない将来を話すのは照れる。
でも、話さないと自分が何になっていいのか分からなくなる。
家を継ぐ事は出来ると思うけど、そんなんじゃ、つまらない!
ミカも、同じように思っていたのかもしれない。
だから俺たちは、随分前から剣の練習をしていた。木の棒だけど。
お兄さんは急に止まった。
「レオンとミカは 騎士か冒険者になりたいの?」
「あ、ああ。なれるか分かんないけどさ。剣の練習もしてたんだぜ?」
「木の棒だけどね」
「それは言っちゃダメでしょ」
「うふふ。でも毎日練習してるもんね」
俺とミカは喋りながら二人で笑った。
「お兄さん。笑うなよ?」
自分たちで笑うのはいいけど、馬鹿にされたくなかった。
「笑わないよ。子どもなのにすごいなって思っただけ」
お兄さんは真顔だ。
「お兄さん、そういえばギルとの戦いの時、すごかったね。」
「そうだった。俺たちにも教えてよ。バイトしてない時でいいから」
「ああ、私でよければ。
こんなにお世話になっているんだ。そんな事でしかお返しが出来ないよ」
俺たちのお願いはあっさりと許可が出た。
「やったああ!」
「レオン!荷台が揺れる!」
バイトのない日も楽しみができた!
俺とミカは強くなるんだ!




