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社畜係長のダンジョンヒャッハー  作者: ジェロニモR


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9/27

市役所へ

あの一件から数日後。

行政からの指導と工場長の計らいにより、佐藤の身の上はお咎めなしとして収束した。

理不尽課長の理不尽さが減ったわけでも、部下たちの無能さが改善されたわけでもない。相変わらず仕事は忙しく、人間関係は最悪のままだ。


しかし、佐藤の心境には大きな変化が訪れていた。


(また……行きたいな)


休日の朝、ベッドの上で佐藤は自分の両手を見つめた。

わざわざ命の危険を冒してダンジョンに入る必要など、一人の会社員にはない。しかし、あの夜に体感した【ステータス向上による体の軽さ】と、何より——日頃の怨念を乗せて金属バットをフルスイングし、ゴブリンを粉砕したあの恐ろしいまでの爽快感が、脳裏から離れないのだ。


「よし……これからは趣味として、安全第一でダンジョン探索をやってみるか」


佐藤は決意を固めた。

会社にバレず、法を遵守し、何があっても無事に帰ってくる。

社畜としての危機管理能力をフル稼働させた、大人の安全なレジャーとしてのダンジョン通いである。





正式にダンジョンへ入るため、佐藤は車で市役所へと向かった。

行政の手によって管理されている【地球産ダンジョン】は、アクセスしやすいよう各自治体の市役所地下や有名観光地などに設置されている。

市役所の地下1階にある『ダンジョン探索課』の窓口は、休日ということもあり、若い世代や私服姿の大人たちで賑わっていた。


手早くダンジョン探索についての申請書類を書き、窓口へと提出すると、しばらく待たされた後、会議室のような場所でルールの説明と、安全講習を受講することになった。


【ダンジョン探索課の制度について】


1.探索許可証の発行制度

地球産・侵略型を問わず、探索者を増やして侵略型ダンジョンを抑制するため、許可証の発行ハードルは極めて低い。発行を厳しくすると無断侵入者が続出するためだ。未成年は親の同意が必要であり、命の保証がない旨の同意書へ署名し、短い安全講習を受ければ誰でも発行される。


2.入出管理とアプリ連携

カード型の「ダンジョン探索許可証」または専用スマホアプリで入出ダン(ダンジョンに入ること)を管理。アプリに銀行口座を連携させておけば、持ち帰った魔石やドロップ素材の売却益が即座にキャッシュレスで決済・振り込みされる。


3.資源売買と税制優遇

ダンジョン資源の買取は国営で行われており、探索者や企業に損をさせないよう、ほぼ原価に近い無税で買い取られる(運営維持費として極小の手数料のみ徴収)。探索者には大幅な税制上の優遇措置が存在する。


4.武器の保持と重罪規定

地上での武器の持ち運びは自由だが、一般人への配慮としてカバーを被せ「探索者シール」を貼ることが義務付けられる。

※侵略型ダンジョンの発生により人類全滅のリスクがあるため、探索者同士の足を引っ張る行為(強奪、PK、犯罪など)は**「人権剥奪・生死を問わず駆除対象」**という超極重罪が適用される。


「はい、佐藤様。講習お疲れ様でした。こちらがアプリと連携した探索者IDになります」


職員から説明を受け、スマホの登録を完了させる。


佐藤が肩から下げているのは、黒い布カバーで頑丈に覆われ、「公認探索者」のステッカーが貼られた愛用の軟式野球用バットだ。周囲を見渡すと、カバーをかけた大剣や槍を担いだ若者たちが大勢歩いている。


ダンジョン探索課の横には小さいながら武器や防具も売られていた。

あくまで初心者用の量産武器、防具みたいだ。


(地上での犯罪は人権剥奪、即駆除か……。社畜の世界よりもルールが明快でいいな)


厳格だが合理的な法制度に、佐藤はどこか納得がいった様子で頷いた。



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