結果
それから一時間後。
工場長室の電話が鳴り、行政からの回答が届いた。電話を終えた工場長が、どこかほっとしたような表情で佐藤に向き直る。
「佐藤君。……結論から言うと、君に対する不問・罰則なしが決定した」
「え……? 罰則が……なし、ですか?」
佐藤は耳を疑った。工場長が頷きながら説明を続ける。
「行政側の判断として、まず連日の過酷な激務による一時的な判断力低下が認められたこと。そして何より、君が衝動的とはいえ内部の魔物を一定数駆除していたことで、初期段階での魔物の地上溢れ出しが食い止められていたと評価されたんだ」
「駆除が……防波堤になっていた……?」
「ああ。さらに幸いだったのは放置時間だ。君が去った後、今朝の午前五時に出社してきたうちの早朝シフトの、勤勉な社員が路地裏の異変に気付いて速やかに通報していたらしい」
佐藤が去ったのが午前四時。通報が五時。 実質的にダンジョンが放置されていたのは、たったの一時間程度だったのだ。
「発生最初期だったこともあり、君の討伐によって魔物の数が激減していたため、自衛隊が到着するまで地上への被害はゼロで済んだ。行政としては『第一発見者の初期防衛と、過労による報告の遅れ』と整理し、お咎めなしとするそうだ」
「よかった……本当に、よかったです……」
佐藤は膝から崩れ落ちそうになりながら、何度も胸を撫で下ろした。最悪の事態は回避されたのだ。
工場長室を出た後、廊下で白石凛が待ち構えていた。
「お疲れ様、佐藤係長。お咎めなしで良かったわね」
「白石係長……本当にありがとうございました。付き添っていただいて、心強かったです」
「お礼なんていいわ。ただ……」
白石は佐藤に一歩歩み寄り、メガネの奥の瞳を妖しく光らせた。
「バット一本でダンジョンに入り、怪我一つなくゴブリンを全滅させて帰ってきた男……。佐藤健一係長、あなた、本当は一体何者なの?」
「えっ……」
『魔物使い』のステータスと、自分の中に眠る異能の存在。 白石の鋭い追求に、佐藤は再び冷や汗をかくのだった。
...いや、白石係長、ごめんなさい。
ほんとにただヒャッハーしちゃっただけなんだ...!
やめて。そんな目で見ないで...!




