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社畜係長のダンジョンヒャッハー  作者: ジェロニモR


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7/27

はい。やっちゃってます。

緊急防災会議が散会となり、ゾロゾロと退室する役職者たち。その中で、佐藤健一だけは立ち上がることができずにいた。パイプ椅子に座ったまま、膝の上で握りしめた両手が微かに震えている。


(……隠し通せるわけがない。いや、そもそも隠し通してどうする? 放置すれば魔物が溢れ出て、工場どころか街の人たちに被害が出るかもしれないんだぞ……!)


佐藤は根が真面目で、責任感の強い男だった。だからこそ、理不尽な要求にも耐え抜いて中間管理職を続けてきたのだ。昨夜はあまりの激務とストレスで一時的に思考が焼き切れていただけ。正気に戻った今、自分の失態を誤魔化す選択肢など微塵もなかった。


「……佐藤係長」


静寂の漂う会議室に、低く澄んだ声が響いた。見上げると、そこには米飯課の白石凛係長が立っていた。細いフレームのメガネを指先でクイと上げ、冷静な瞳で佐藤を見下ろしている。


「白石……係長……」


「他の人はみんな退室しましたよ。……ずいぶんな汗ね。顔色も最悪。単刀直入に伺いますけど、あの『通報なしで放置された侵略型ダンジョン』の件……あなた、何か知っているでしょう?」


心臓が跳ね上がる。だが、佐藤は目を逸らさなかった。深呼吸を一つし、固く口を結ぶ。


「……ここで話すわけにはいきません。白石係長、少しだけお時間をいただけますか」





誰もいない第二応接室。鍵をかけた室内で、佐藤は頭を深く下げ、事の顛末をすべて白石に打ち明けた。

連日の残業で思考が麻痺していたこと。昨夜、深夜三時にアパート近くで怪しい洞窟を見つけ、衝動的に金属バット片手に飛び込んでしまったこと。中でゴブリンをぶちのめして爽快感を得た後、「明日も仕事だ」と焦って通報せず帰宅してしまったこと——。

すべてを聞き終えた白石は、しばし絶句していた。あの「氷の女王」と恐れられる彼女が、ポカンと口を開けて佐藤を見つめている。


「……待って。突っ込みどころが多すぎるわ。まず、侵略型ダンジョンにバット一本で入ってゴブリンを討伐したの……? 一人で?」


「はい……。日頃のストレスが溜まっていて、つい……」

「『つい』で済む話じゃないでしょう!? 命知らずにも程があるわ!……でも、自首するつもりなのね?」


「もちろんです。自分の軽率な行動で万が一のことがあったら取り返しがつきません。今から課長と工場長に報告し、行政に自首します」


佐藤の真摯な眼差しを見て、白石は呆れたように、しかしどこか見直したような溜め息を漏らした。


「……本当にバカがつくほど真面目なんだから。分かったわ。私も一緒に行ってあげる。理不尽課長に途中でうやむやにされないよう、立ち会ってあげるわ」

「えっ……白石係長が?」

「米飯課とレトルト課は共同体よ。それに、あなたのその真面目さを無駄死にさせたくないもの」


...めちゃくちゃありがたい。何だこの人。女神か。








「はあぁぁぁああっ!? お前、何言ってるんだ佐藤ぉぉおおっ!?」



執務室の奥、理不尽課長の絶叫が響き渡った。青ざめる課長を連れ、佐藤と白石はそのまま工場長室へと直行した。

工場長室で、佐藤は再び深々と頭を下げ、事実をありのままに報告した。


「……なるほど。事態の重大さを鑑み、すぐに県のダンジョン管理課と警察へ連絡しよう」


工場長は厳粛な面持ちで電話を取り、行政へと繋いだ。佐藤は胃が千切れそうな思いで、その横顔を見つめていた。どのような処罰でも受ける覚悟はできていた。

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