スライムって無限の可能性を秘めてるよね?
「せっかく契約したんだ。何かしらの使い道はあるはずだ……」
市役所地下のダンジョン第一層。佐藤は足元でぷるぷると揺れる青い物体——従魔スライムを見つめながら呟いた。
Web小説やライトノベルの世界において、スライムというモンスターは「最弱」でありながら「成長すれば最強」「相手の能力を奪うチート存在」として描かれることが多い。
(そうだ、ラノベのスライムは万能なんだ! 酸を吐いたり、巨大化したり……何より『あの能力』があるはずだ!)
期待に胸を膨らませた佐藤は、従魔のステータス画面とスキル一覧を操作した。従魔契約を結んだ魔物は、主人である探索者がステータス確認やスキルポイント割り振りを管理できるのだ。
「えーっと、スライムの初期スキルは……【触手】か。よし、スライム! 『触手』使ってみろ!」
佐藤が指示を出すと、スライムの表面がぐにゃりと歪み、人の手ほどの太さの透明な触手が1本、ニュッと伸びてきた。
そして——。
ペシン……ペシン……
触手は地面を、力無くゆるーく叩いた。
「……使えねぇ」
佐藤は思わず額を押さえた。
【身体能力: 1】という絶望的なステータスのせいで、叩く威力は赤ん坊の手加減以下。それどころか移動時も触手を足代わりに引っ掛け、ズリ……ズリ……と牛歩のごとき遅さで這うしかない。あまりにもクソ遅い。
あまりのポンコツぶりに頭を痛めつつも、佐藤は従魔画面に表示される生態データに目を通した。
【生態解説:スライム】
スライムの本質は中心部に存在する【核】である。周囲のゼラチン質は高濃度魔力によって形成された「外骨格(魔力体)」に過ぎない。
生物というより「魔力そのものに意思が宿った存在」であり、種族特性として【MP】の倍率が極めて高く、【身体能力】の倍率は極端に低い。
「なるほど……身も蓋もない言い方をすれば『魔力の塊』か。だから物理攻撃が決定的に向いてないわけだ」
色々と検証を重ねた結果、佐藤は切ない結論に達した。
「うん、直近の戦闘には一切役に立たないな!」
だが、見捨てるわけにはいかない。
主人が敵を撃破した際、従魔にも「経験値の分配」が行われてレベルアップする仕様になっている。
「よし、スライム。お前、俺の体に張り付け」
《ぷる?》
佐藤の指示に従い、スライムはぐにゃりと伸びて佐藤の作業服(※新調した『皮の胸当て』の上)へペタリと張り付いた。
胸元に青いゼリー状のブローチがついたような、何ともシュールな格好である。
「よし、第2層へ行くぞ!パワーレベリングだ!」




