従魔契約
次の休日。
佐藤は【従魔契約】を試すため、市役所の『地球産ダンジョン』第一層へと向かった。
目的のターゲットは、最弱の魔物——スライムだ。
「よし……あいつで試してみるか」
通路をぷにぷにと這っていた青いスライムの前に立ち、佐藤は初期スキルを発動させた。
「『従魔契約』……ッ!」
佐藤の手から淡い光が放たれ、スライムの体を優しく包み込む。最弱モンスターということもあり、何の抵抗もなく、あっさりと契約は成功した。
すると同時に、脳内に直接、小さな声が響いてきた。
《ぷる〜》
「お、声が聞こえる……! これが従魔の声か!」
感動した佐藤は、さっそく自分のパートナーとなったスライムのステータスウィンドウを開いてみた。
スライム(名前無し)/レベル1/スライム
HP: 20(基礎10+種族補正2.0倍)
MP: 20(基礎10+種族補正2.0倍)
身体能力: 1(基礎2+種族補正0.1倍)
免疫: 20(基礎10+種族補正2.0倍)
思考力: 1(基礎2+種族補正0.1倍)
スキルポイント: 0
所持スキル: 触手
「……なんだこの極端なステータスは!?」
佐藤は思わずツッコミを入れた。
確かに【2.0倍】という倍率補正自体は凄まじい。しかし、元々のスライムの基礎ステータスにおいて、【身体能力】と【思考力】が「2」しかないため、0.1倍補正がかかると下限値の「1」になってしまうのだ。
《ぷる〜》
足元で、すりすりと寄せてくるスライム。
【思考力: 1】ではまともな思考などできるはずもなく、発せる言葉は《ぷる〜》の一点張り。戦闘で役に立つどころか、会話によるコミュニケーションすら成立しない。
「さすが不遇職……一筋縄ではいかないな……」
佐藤は深く溜め息をつき、頭を抱えた。
「強力な従魔を得るためには、まず自力で強敵を倒し、それを従魔契約しなきゃいけないってことか……? なんだその本末転倒な修行は……」
ぷにぷにと足元で揺れるスライムを見つめながら、佐藤は「魔物使い」というジョブの険しい道のりに、一抹の嫌気が差し始めるのだった。




