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「やー、まさか私も一緒に泊まれだなんてスケベなこと言い出すとは思わなかったけど、案外美味しいねここ」
「美味しいです……」
翌朝、一日の疲れからかハルが全然起きないので朝食時間をオーバーしてしまい、ルームサービスを頼みそれを食べながらライカとハルがそんなことを話している。
「監視カメラもない状況で15歳と二人きりはまずいんだよ」
「まぁ二人だけだとちょっとパパ活に見えないこともないけど、逆に見慣れてるでしょ」
「そう思われんのも困るんだよ……」
俺の出した条件は、ライカも同じホテル、同じ部屋に泊まることだ。たぶん別の部屋にしたらライカのことだから黙って帰ると踏んだので、逃げられないようにしてやった。
意図を理解されず「3Pしたいの?」とか「最初は二人きりが良いです!」とかなんとか言われたが、朝になって説明すると多少は納得されたようである。
この説明を昨晩しなかったのは、もう掛け合いする気もなかったからだ。
疲れてるはずの二人はチェックインしてコンビニで買った夕食を食べると大浴場行って1時間以上戻ってこなかったので、俺は部屋のシャワーを浴びてとっとと寝てた。
クロワッサンにベーコンやチーズを挟んだサンドイッチを齧ると、ルームサービスなのに焼き立てのような温かさと芳醇なバターの香りが鼻に抜け、ちょっと感動した。
えっ、何ライカ普段こんなん食べてるの? 俺感動して涙出てきそうなんだけど。
「……高いだけはあるな」
「そう? ルームサービスで5000円なら別に高くないでしょ」
「朝食に5000円出せる文化圏に居ねえんだよこっちは……」
そんな話をしていると、ハルがおひつのご飯をよそう手を止め、館内案内の冊子を開いて自分が注文したものの値段を確認し、「6100えん……」と小さく呟く。
うん、ハルのは俺のより高いんだろうなとは思ってた。白身魚の焼き物をメインにした和朝食膳だ。ライカは慣れてるのか、ハンバーガーを片手にポテトを齧っている。
「キルオ君、ダンジョンに数億円使ったとは思えない庶民っぷりは変わんないね」
「億ですか!?」
「……そんな使ったか?」
「スキル拡張、いくらだったか覚えてる?」
「200万くらいだっけか」
「いくつ使った?」
「25。あー、拡張だけで5000万か……。そんなら余裕で億行くだろうな……」
「ご、ごせんまん……」
震えながら指を折り曲げてるハルに、笑うライカと溜息を吐く俺。
「あのなハル、一応言っておくと、稼ぎは全部ダンジョンでの稼ぎだ」
「そ、そんな稼げたんですか昔は」
「今よりはな。ただまぁ当時ダンジョンの外で欲しいものもなかったし貯金して死ぬのも何だったから貯まるたびに新しいスキルとか買ってたし、結果的に使ったかもしれないがそこまで使った記憶はない。スキル以外何も残ってないしな」
「いや現実の買い物一切しなかったキルオ君がおかしいんだよ……。先生は知らないけど、タント君ですら家族と一緒に引っ越したりしてたし、エミ君なんて超遊んでたじゃない」
「……そうだったか? あー、そういえば先生は里に仕送りしてるとか言ってたぞ」
「あ、そういえばそんな設定だったっけ。隠れ里の出身とか言ってたよね」
「そうそう」
伊賀の末裔を騙っていた先生だ。喋ることもそれありきだったので、聞き流すのが常となっていた。いや居なくなってから思ったがほんと変な人だな。教え子に何話してんだ?
「……つまり、切原さんだけ仙人みたいな生活してたってことですね」
「そうなるわね」
「そうなるのか……?」
いや確かにダンジョンの稼ぎを現実で使うことは全くなかったし、変化といえ水筒を持っていかず自販機で好きな飲み物を買うようになったくらいだ。
昼は学食があり、特盛メニューを頼んでも300円くらいだったので、収入によって食べるものが変わったりはしなかった。
でもだからといって仙人……仙人だったのか俺は……?
「そういえばライカ、エミとは連絡取れてるのか?」
ハルの母と仲良さそうにやり取りしてるライカのことだから、連絡がつかなくなったエミとも話しているのかと問うと、首を横に振られた。
「たぶんキルオ君と一緒よ。先生の一周忌が最後。携帯は解約してるみたいだし、卒アルの住所に年賀状送っても帰ってきたから、直接尋ねたことあるけど空き家だったわ」
「……飛んだか?」
「かもね? 遊びすぎて結構色んな人に恨まれてたみたいだし」
「…………凄い人が居たんですね」
3回目のおかわりをよそいながらハルが呟いた。
うん、ところでハル、思ったよりよく食べるね。家でもかなり大盛作ってたから予想してたけど、運動部でもない女子高生がスポーツやってる男子くらい食べてるのは流石に驚いた。
でもよく食べるのは良いことだと思うよ。それになんで太らないんだろうね。若いってすごい。
「……ところで、外泊許可は何日貰ってる?」
食事の前に来ていたメッセージを見て、俺は嫌な予感がしていた。
「「夏休み中、ずっと」」
「だよなぁ……」
太蔵兄さんから受け取ったメッセージはたいへん短く、『しばらく帰ってこさせるな』。
……まったく、お盛んなこって。




