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才能 3/4

「ああ、時雨は情報体の適正は高いですよ。ただ扱いが大雑把なので勧められないのです」

 

「ふっふっふ。ボクも自分の情報体適性が高いことは知ってるよ」

 

 時雨は私の言葉を補足するように、胸を張ってそう告げました。

 

「それで得た情報を送ってくれますか?」

 

「え……いいけど。よくわかったね」

 

 時雨の胸に隠されている銀色のアクセサリーを指差して言えば、時雨は不思議そうにしならがも頷いてくれました。

 そして数十秒後、送られてきた情報へと目を通します。

 

 総量 :5+

 出力 :2-

 適合性:10+

 

 その中でもとりあえず見ておくべきなのはここでしょう。

 総量はそのまま情報体を扱える総量。正確には違いますが、総魔力量のようなもの。

 出力は同時に扱える情報体の規模といよりかは、同時に扱えるエネルギー量。

 そして適合性は、どれだけ多くの情報体を欠損させずに扱えるか。情報エネルギーの性質とも呼べるもの。うえ2つがどれだけ高くとも、ここが低ければ戦略の幅は狭まります。

 あとは適合性の詳細と、正確な数値。そしてスリーサイズなどですか。

 

「くちくきゅ……出力が少し低いですが、全体的に見て悪くありません。特に適合性が高いことは強い武器となります。なにせ常に相手の弱点をつくことができるようなものですからね」

 

「2って少しじゃなくてかなり低いんじゃないの?」

 

 時雨が心配そうな目で問いかけてきました。

 

「優秀な整備士がいれば出力の問題はおおかた解決します。さすがに同じ情報体で正面衝突すれば確実に負けますが、そこは適合性の広さを活かして弱点をつけばいいのです。なにより魔法を併用した際の相乗効果が期待できますからね」

 

「そ、そうなの! ……あ、でも……ボクは魔法のほうが……」

 

 跳びはねそうなほど嬉しそうな表情を浮かべた時雨ですが、すぐに曇らせてしまいます。

 

「勝つことだけを目的とするなら時雨の出力でも十分です。それに正面切って戦うのではなく、補助という役割で考えれば最高位といえる適正ですよ、これは」

 

「え、そうなの?」

 

 曇ったり晴れたりと忙しい表情ですが、最終的には晴れていることでしょう。

 それほどにこの情報適合性は優秀なものですから。

 

「たとえ情報エネルギー総量と出力が10であっても、適合性が1ならば苦なく勝てます。たとえば適合する情報系統が『炎』だけであった場合、場を深海で満たせば情報体の扱えない相手になります。しかし『水』も適合するのならば容易に抜け出されます」

 

「……水の中では火がつかないってこと?」

 

「いえ、水中でも火はつきますよ。それができるのが『炎』の適合者ですから。ただ『炎』と強く反発する場を用意すれば必要なエネルギー量と出力、さらに技量までもが跳ね上がって実質的に使えないことになるだけです」

 

 熱と光を奪われる『深海』であれば、『炎』は意味をなしません。そして炎でないそれは炎の情報ではなくなり、適性が無いに等しい状況となれば、無理に扱うことになって適正が無い者が扱うのと同じことになる。

 でも『水』があれば『深海』に抵抗できますし、なにより『燃える水』から『炎』の情報を展開していけばいいのです。

 なので情報を確実に展開していけるという意味合いにおいて、適合性の高さは武器となる。相手には何もさせず、こちらだけ弱い力であっても扱える状況は、まさしく一方的な有利といっていいものです。

 

「どんな情報を見てるか知らないけど、相手も適合性が高かったらまずいんじゃないの?」

 

「まずいというか、それは単純に上位互換ですから。適合性が高いほうが勝ちやすいだけであって、他の項目が意味を成さないわけではありません。むしろ相手の適合性なんて知らないことがほとんどなので、うまく探らなければ一方的に負けるだけです」

 

「……どうやって?」

 

「魔物が相手ならば蓄積されている叡智を参考に。人が相手なら事前に情報を集めておくか、その場で探り出すかになりますね」

 

 未知の魔物というのが最も困るのですが……まあ、そうそう出会わないでしょう。

 それに言葉で教えたところでどうにかなるものではないでしょうから、きっと経験による判断が重要になってくるはずです。

 

「……もうちょっとさ、強いのでぼーんとか無いかな?」

 

「あなたの適性は繊細な技術により輝くタイプです。だから大雑把な扱いをしているあなたには向かない、と言いました」

 

「……はい、そうでした」

 

 しょぼくれる時雨を見ながら思います、どうしたものかと。

 

「落ち込まない、落ち込まない」

 

 時雨の進むべき先について頭を悩ませていれば、サリアがそう言いながら時雨の肩に手を置きました。

 

「たぶんだけど、時雨ちゃんが望む情報体もあると思うんだ。でも時雨ちゃんが強くなるためには、初めからそれを使っちゃいけない。そういうことだと思う」

 

 手が置かれた方向、サリアへ向いた時雨は感心したように聞き入っています。

 

「私は最初からちょっと大きめの魔法が使えちゃったから、調子に乗って失敗しちゃった。情報体がそうかは知らないけど、強い魔法ってそれだけ制御が難しいの。ただぶっ放すだけなら"誰でもできる"けど、それじゃあ周りに被害が出ちゃう。1人で戦うのなら別だけど、皆と戦うんなら急がないほうが良いよ」

 

 サリアは諭すような声音で時雨に聞かせます。時雨も応えるように聞き入っています。

 まあ誇張表現なのでしょうけど、たしかに規模の大きな魔法は誰でも使えます。時雨の欲しがっている情報体も、ようはうまい職人が作ってくれるかどうかに過ぎません。

 ただ、よく理解している職人は身の丈を過ぎた力を与えるようなことはしないでしょう。相手を思いやる気持ち云々もですし、評判を落とすことになりかねません。

 感情、損得のどちらで考えても渡すべきではない、としかならないのです。

 

「そっか。でも、足手まといのままでいたくなくて……」

 

「う~ん……別にさ、足手まといでいいんじゃない。戦力として迎えたわけじゃないよね?」

 

 サリアはそう言いながら楓を振り返りました。

 

「まあ時雨ちゃんを誘ったのはイナバだけど、私としては戦力なんて考えてないわよ。それよりも性格的に受け入れられるかどうか。どれだけ強くても合わない相手は入れない」

 

 楓はちらりとこちらを見てきましたが、すぐ視線を時雨へ戻します。

 

「そもそも、戦力を考えるなら私達は誰も満たせてない。少し外に行ってみたことがあるんだけど、私の魔法なんて一切、通用しなかったわよ。事前に用意しておいた方法で逃げるのが精々だった」

 

 さすがに心配だったのでついていって見ていましたが、あれが楓の領土に攻め入ってくれば全滅の道しか無かったでしょう。私やイロハが参加しなければ。

 まあその状況ならば楓や凛が"どうにかしそう"ではありますが、常に出せる力という見方をすれば負けます。

 その魔物がたかだかランク6なのですから、それ以上がうようよいるこの世界では実力不足ともいえますか。

 

「始まってから3ヶ月なんだし、最初から強くある必要はない。誰でも未熟な期間はあるのだから、今はその段階にあるだけよ。ちなみにイナバや長門さん、それに護さんを見て力不足を感じたのなら測る物差しが違うだけだからね。あのへんは第2陣と同じ扱いをした方がいいと思うから」

 

 まあ2陣の中でも果てしない差があるようですけどね。

 

「そ、そうなの?」

 

 楓の言葉を聞き終えた時雨は、こちらを向いて問いかけてきました。

 自分は今の状況に見合った実力が備わっているのかどうか、と。

 

「今は街の近くにいる魔物を倒せれば十分ですよ。そこで経験と資産を積み重ね、新しい武器を得て、次の段階へ進む。RPGとはそういうものです」

 

「そうそう。RTAは十分な経験と知識を得てからするものだからね」

 

 私の言葉を補足するように笑顔でそう告げたサリアですが、もしかして日常的にリアルタイムアタックをしているのでしょうか。ああいうのはにぃが得意でしたから、もしかしたらゲーム仲間になれるかもしれませんね。まあ勝ち目は薄いでしょうけど。

 

「あーる、てぃー、えー?」

 

「あ、気にしなくていいよ。あれはオフでするものだから」

 

「おふ?」

 

「と、ところで時雨ちゃん。その情報体の適正はどうやって計ったの? 私も知りたいなって思うんだけど……教えてもらえるかな?」

 

 先程のお姉ちゃんモードから一転、サリアは両手を顔の前で合わせて『ダメかな?』とおねだりします。

 

「えっとね、露天で情報体適性を計れる情報体を買ったんだ。最後の1個だったみたいだから、もうないかも」

 

「そっか。それは残念」

 

 しょぼくれるサリアを見て、時雨は慌てて言葉を追加します。

 

「あ、でもでも。これはボク専用じゃないから、皆のアクセサリーに送って使えば計れるはず。……たぶん」

 

「え、そうなの?」

 

 再び花咲いたサリアの顔を見て、時雨は安堵の表情を浮かべました。

 なんというか、時雨はあまり関わりが無かったはずのサリアと最も仲が良い気がします。

 ログアウト後の世界では自分と関われない位置にいるからか、波長が合ったか……。まあサリア自身、親しみやすい雰囲気がありますからね。

 

「時雨。申し訳ないですが、もし他の誰かに送るのならまずは私に送ってもらえませんか?」

 

「それはいいけど……どうして?」

 

「念のためですが、バックドアや欠損などの確認をしておきます。まあ出処を考えると、それはまず無いはずなのですが……」

 

 なぜか接続数の項目が表示されていないことが気になったのですよね。

 

「ばっくどあ? 欠損?」

 

「この中で一番、知識があるのは私なので、危険がないか確認します」

 

「ああ、それは嬉しいな。イナバが見てくれるなら安心だもんね」

 

 時雨はそう言って笑顔を浮かべ、銀色のアクセサリーを胸から取り出してこちらに突き出しました。

 とてもとても純粋な笑顔と、一切の疑いない行動は危険を感じてしまうのですが……まあ理解できます。よくわかります。

 

 差し出された銀色のアクセサリーに、自分の情報アクセサリーを触れさせれば、すぐに件の情報体が送られてきました。

 念のため隔離場に入れ、幾重もの障壁を通しつつ解析を始めます。それと同時に足を進め、ゆったりとできるソファーへと腰をおろしました。


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