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温泉 2/4

※重要

前話で、1章でサリアが告げていた出身世界が間違っていたと記載しましたが、直していたところ1章の『竜人族の青年』および2章EXの『ウミナリ』の出身世界が間違っていたことが判明しましたorz

正しくは『デルタ世界』であり、現在は修正済みです。

もう何箇所か埋まっているかもしれませんが、とりあえず確認できた部分は修正したつもりです。

申し訳ありませんでした。

********************

 

 

 

「それじゃあイナバが来るまで待ってよっか」

 

 イナバが管理人部屋へ姿を消してすぐ、時雨さんがぼくの腕を掴んでそう言った。

 

「あれ、時雨さんはぼくと一緒にお風呂に入りたいの?」

 

 すべて理解しているからこそ、笑顔を浮かべてそう言ってみる。何か言おうとしたサリアさんの口を姉さんが塞いだのは見なかったことにしておこう。

 

「まあ、それは……ね。イナバのこと聞きたいし、なんたってイナバを召喚してくれた恩人みたいなものだし……」

 

 時雨さんは後半になるにつれて少しもごもごとそう言った。

 素直じゃないと見せかけて、ものすごく素直な時雨さんらしい言葉だと思う。もっともっと昔に姉さんや凜さんに出会えていれば……きっと違う道を歩めただろう。

 

「あなたがイナバを好きでいてくれて嬉しいな」

 

 奥底の本音からの言葉だったからかもしれない。ぼくのそれを見た時雨さんが頬を薄っすらと赤く染めた。

 きっと本人は気づいていないだろうし、皆は後ろ姿しか見えないはずだから知る機会はないのだろう。"覗いている人達"は黙っていると思うから。

 まあぼくは、みてくれは良いから勘違いしてくれるだろう。でも今の状態のそれって姉さんの容姿に惚れたのとあんまり変わらない気がするけど。

 

「イナバが言ってたタオルとかは中にあるのかな。まあ行ってみればわかるか」

 

 少し見渡して諦めた時雨さんが、ぼくの手を引いて『女』の垂れ幕へと足を進めようとしたところでサリアさんの口が開放される。

 この辺からは許せないのに、それまでの過程を楽しむのはどうなのだろうか。

 

「時雨ちゃん、ユウくんは男の子だよ?」

 

 その言葉に時雨さんの足が止まった。そして長い間、油を指していない機械のようにギギギっとゆっくりこちらを振り向く。

 

「……嘘、だよね?」

 

「確かめてみる?」

 

 無邪気にそう言ってみれば、時雨さんの顔が目に見えて赤くなった。姉さんに聞くという意味でそういったのだけど、きっと勘違いしているのだろう。

 哀しいことに彼女は耳年増なのだから。

 

「アバターをいじったとか?」

 

「どうだろうね」

 

 アバターと呼ばれるこの世界の身体を開始時にどこまでいじれるかは知らないけど、かけ離れた姿には調整できないと思う。その差は元の体に戻った時に悪影響となってしまうのだから。

 

「……ごめんね、間違えて。ちなみにモテるの?」

 

 時雨さんは悲しそうに謝ったあと、雰囲気を隠そうとするように聞いてきた。

 

「告白に近いことは1度しか経験していないよ。きっと凜さんが同性にもモテるはず」

 

「まあ、そりゃあね」

 

 納得した様子を見せた時雨さんだけど、それはきっと間違いなのだろう。

 傍にいればいずれ気づくだろうけど、凛さんはめったに告白されないはずだ。なにせ多くの人にとっては眩しすぎて隣にいられない存在。より近くにいた人ほど異常性に気づいてしまうから。

 触れればやけどではすまない。燃え尽きるか、遠ざけてしまうか。だから女好きの人にさえ手を引かせてしまう。直感的に理解させられてしまう。

 

「それで、一緒に入ってくれるの?」

 

「……きみって結構、意地悪なんだね」

 

 いたずら笑顔を浮かべて問いかければ、呆れた顔でそのままな言葉を返される。

 まあ時雨さんがぼくを女の子に見ていることは知っていたし、予想できていた。良くも悪くも表面を信じ過ぎているのだから。

 

「でもさ、ユウくんなら一緒に入ってもバレなさそうだよね」

 

「サリア……」

 

 笑顔なサリアさんの提案を翠さんがジト目で制する。

 いつの間にか皆はサリアさんを呼び捨てで呼んでいて、それが仲良くなったようで少し嬉しく思う。もしかしたら姉さんと葵さんだけは違う意味で呼び名を変えたのかもしれないけど、それが芽を出すのはもう少しあと。

 どちらにしても深奥には辿り着けていないのだから、彼女の口から語られるまで待つしかない。

 

「ふむ、私はかまわないが?」

 

「私は許さないけどね?」

 

 真剣な表情でそう言った凜さんを笑顔の姉さんが制する。

 きっとここまでがいつものやり取りなのだろう。それらを眺めていた葵さんはとても楽しそうにしているのがわかる。

 

「……もしかして楓ちゃんも、楓くんだったりしないよね?」

 

「確かめてみる?」

 

 まさかという様子で時雨さんが問いかければ、笑顔の姉さんが問い返す。まあぼくの姉さんなのだから自然な反応といってもいい。

 

「……ううん、楓ちゃんは女の子だ。なんというか……彼ほど恥ずかしがってない気がするよ」

 

「ほう、恥ずかしがっていたようには見えなかったが」

 

 首を横に振って否定した時雨さんの言葉に、凜さんが口元に手を当てて反応した。

 別に女の子としてバレずに過ごすこともできるけど、それをする意味はないから。それに姉さんが悲しむようなことは可能な限り避けたい。

 

「ぼくでも恥ずかしいことはあるよ。それじゃあまたあとで」

 

 その一言を残して軽く手を振って、『男』の垂れ幕へと足を進める。

 最近恥ずかしさを感じたのは……そう、パンツ事件だ。場を見ていた眼は誤魔化せた自信があるけど、イナバに見られないかとひやひやした。そのあとのスカートめくりはもう……。

 それ以前は……あの出来事より前かな。

 ……いつかきっと、イナバがたどり着いてくれる出来事なんだろう。きっかけは姉さんになるのかな。

 まあ後悔の結果に終わりそうだけど、少し期待しているようにも思えてしまう。自分の感情なのによくわからないよ。


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