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いざ、領土戦

「と、いうことで領土戦に出ようと思うの」

 

「いや、なにがということでなんだ?」

 

 料理を振る舞った翌々日の朝方、楓の部屋ではテーブルにバシッとチラシを押し付けた楓の姿がありました。集まった直後のこれなので、凛の言葉はもっともでしょう。

 

「それは1度、やめたのでは?」

 

「昨日1日考えて結論を出したわ。優勝は目指すけど、別に必須じゃない。同期の中での実力を知っておきたいから、勝ち進めるところまでお試しということになるわね」

 

 楽しそうに語っていますが、きっと優勝するつもりでしょう。昨日1日は同じ部屋にいましたが、そんな話はせずにトランプなどで遊んでいただけなので真意は知りませんが。

 

「一昨日、参加は締め切っていたはず」

 

「不戦敗は可能だからね。諦めきれてなかったってことかな」

 

 私が枠を確保していたことは知らせてもいいとは言っていたのですが、まあ楓が領土主になるのですからこちらのほうが良いですか。

 

「一応、確認しておくわね。1分間、目を瞑っておくから、参加したくなければ部屋を出ていってちょうだい」

 

 その言葉が終わるやいなや、こつこつこつ、と。平然と無駄に足音大きくドアに向かい始めたユウですが、数歩、進んだところで足を止めました。いえ、止めざるえませんでした。

 そのまま1分が経過し、楓が瞼を開きます。

 

「うん、全員が残ってくれていて嬉しいよ」

 

 皆の視線は途中までユウと私に視線が向いていましたが、既に楓のもとへ戻っています。

 

「じゃあ簡単にルールを説明するわね。参加人数は最高20人で事前に登録が必要。1試合に参加できるのは5人までで、参加者に制限はない。何連続で参加してもいいし、1回も参加しなくてもいい。あとは……トーナメント式だから負けたら終わりね」

 

 まあ、それだけ知っておけば十分という説明ですね。詳細など楓が把握していればいいのです。

 

「武器の持ち込みなどに制限はないのか?」

 

「転送魔法陣の範囲内に収まったうえで接触している必要はあるけど、それ以外は自由よ」

 

 下見はしてきましたが、魔法陣はそれなりに大きなものでした。種族による体格差は気にしなくてもよさそうなほどに。

 

「初心者だからこそのルール、というわけか」

 

 数日でどこまでの武具や物資を用意できるか、というのも力の1つ。武力だけが力の全てではないというか、管理するものとして何かしらの力を要求するものと考えるべきでしょうか。

 

「それでも第2陣に知り合いがいれば、存分に用意できるのでは?」

 

「それは考えなくてもいいわ。第1・2陣の人達はそういったことをしない。絶対とはいえないけど、きっとしない」

 

 出し抜くならまだしも、そんな"無駄"はしないと協定でも結んでいるでしょう。ただし第3陣が用意するのなら別でしょうけど。

 

「知り合いでもいるのですか?」

 

「知り合いもいるけど、この街に来てから調べたのよ。おおよそ安心しても大丈夫な程度には手出しはしないと思っているわ」

 

 楓の言葉に翠は「そうですが……」と頷きつつも、納得まではいっていない様子です。私としてはとても良い考え方だと思いますし、楓も嬉しいことでしょう。凛は2人にほぼ丸投げだと思いますからね。

 

「翠、楓が知りたいと言ったのは"同期の"実力です。想定した範囲内であるかどうか、それを超えていた場合はどう対処するかといったものでしょうか。そこに上位との繋がりは含まれるでしょうが、仮に上位が勝ちを狙ってきた場合に私達だけでどうにかできると思いますか?」

 

「それは……たしかに、どうにもできない……」

 

 楓の意見は対策をするだけ無駄、ということでしょう。譲渡に関与するのは難しく、受け渡されたものが強力であれば対処は難しい。なので上位を警戒するよりも、その力で同位に勝つ道を考えておくべきだと。

 なんというか、翠は焦っている気がします。それでも楓は間違いを指摘しません。

 そもそも3陣相手に対策を考えないで勝てる、という前提を。

 

「なに、目の前の相手に全力でぶつかればいい。そこまで深く考えることはない」

 

「……それもそうですね。始まる前からないかもしれないことを気にしても、どうしようもありません。まずは1戦目を勝つことから始めなければ、ですね」

 

 凛の一言を聞いた翠は呆気に取られた表情を浮かべ、すぐに気軽そうな雰囲気へと転じました。

 まったくもって凛らしい、というべきでしょうか。稀に必要な一言を告げるのが凛ですから。

 

「楓、参加は私達だけ?」

 

「うん、ここにいる皆だけ。これ以上は増やさない」

 

 黙って経過を眺めていた葵の質問に、楓は頷き答えます。

 優勝賞品を考えてみれば増やす選択肢はない、ということでしょう。

 

「アリサさんは呼ばないのか?」

 

「え……どういうこと?」

 

 凛の真面目そうな問いかけに、楓は首を傾げます。アリサの存在は知っていても、どうして話にでてきたかわからないといった様子でしょうか。

 

「いや、アリサさんならば十分に強く、信頼もできる。断られる可能性が高いとしても、声をかける程度はすべきじゃないのか?」

 

 凛の追撃を聞き、楓はよけいに首を傾げます。翠と葵も何か考えている様子であり、例外は楽しそうに眺めているユウですか。いえ、私もでした。

 

「楓、私は"直前の街で"アリサと会っています」

 

「……え!? どうして!?」

 

「アリサが同時期に参加して始めた、ということでしょう」

 

 驚き顔から納得顔に移り変わった楓ですが、すぐに難しい表情を浮かべて顎に手を当て考えるポーズに。珍しく相当に悩んでいるようです。

 う~ん、う~んと悩む楓に誰も助言できず、ただただ時間が経過していきます。私は必要だろう情報を知っているのですが、知っていてはいけない情報なので伝えることはできません。たとえ楓であっても、です。

 だから

 

「ユウ」

 

「姉さん、アリサさんなら参加しないよ。既にどこかの領土の総代になってるみたい」

 

「なんだ、よかった」

 

 今までの様子が嘘だったかのように、ユウの言葉1つで楓は普段通りの様子に戻りました。知っているとは思ってましたが、黙っていた理由までは知りません。案外、悩んでいる楓が可愛かった、とかかもしれませんけど。

 

「アリサさんが参加することに不安があったのか?」

 

「ええ。アリサさんがこちらで出てくれるなんて、まずないもの」

 

「そうなのか。まあ、あちらにもあちらの都合があるだろうからな」

 

 黙っているサリアがそうなのかな~と顎に指を当てて考えていますが、"話を聞いた限り"そうなのです。

 

「不安が解決したところで、他に何か聞きたいことはある?」

 

「楓、死亡時の措置を」

 

「ああ、そうだったわね。専用の戦闘フィールド内で死んでしまっても待機場所で復活するから心配しないでいいけど、だからって命を無駄にはしないでね?」

 

 それは誰に向けられた言葉なのでしょうか。まあ凛でしょうね。

 

「他は何かあるかな?」

 

 皆は黙ったまま、つまり聞きたいことはないのでしょう。

 

「うんうん、それじゃあ初戦は明日の10時だから、寝坊しないでね。解散!」

 

 元気よく自由行動を告げた楓に凛、翠、葵の視線が突き刺さります。

 

「1戦目は直前に抽選、同時に戦闘開始だからさ、これといった対策は考えられないの。だから皆が自由に準備すればいいかなって思って」

 

 楓はえへっ、と可愛らしく言葉を締めました。

 

「それなら、まあ。私は武具の準備をしておきましょうか」

 

「私は魔物でも倒しに行くかな。葵もどうだ?」

 

「行く」

 

 次々と予定が決まり行動へ移っていく中、私は何をしようかな~と思っていれば、近寄ってきた楓に手を握られました。

 

「一緒に情報収集、行かない?」

 

「あ、ぼくも行くよ」

 

「よし、ごーごー」

 

 楓に手を引かれ、ユウが並び、3人で部屋を出ます。そうすれば残るはからの部屋だけ。足りない1人は見送ってくれませんし、追いかけてきてくれません。

 少し寂しいですが、楓とあの子を会わせるのです。すぐに、とはいかずともいずれは満ち足りるでしょう。ええ、必ず。


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