13-b1
紅く輝く紅蓮の焔
当に"ソレ"は焔その物だった
長く畝る様な体躯は恐らく十数mは有るだろうか?
その体躯は赤熱する鱗に覆われ、その隙間からは炎が揺らめいている
身体の途中から突き出した手足の大きさは、その指一本ですら茜達の身体を上回る
背中から立ち昇る業火は翅を像創り
大きく裂けた様な口元からは、呼吸(?)の度に炎が覗く
そして、頭部から噴き上げる炎は皇帝の冠を想わせた
赤龍・・・
いや、琰龍とでも呼ぶべき存在が、その地獄の業火を宿したかの様な瞳で俺達を見下ろしていたー
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「あああああぁぁぁぁぁぁあぁああぁああぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!」
葵が狂った様に絶叫する
「・・・・・」
翠は、その場にへたり込み只、惚けた様に"ソレ"を見詰めている
俺はー
俺は茜の肩口を強く・・・
強く握り締めながら・・・
震えていた・・・
ーと、不意に身体が揺れた
小さく暖かい手が、俺の身体を包み込む
それが茜の手であると気付く迄に少し掛かった
だが、その僅かな間に茜は俺を優しく地面に降ろすと、にっこりと一度だけ微笑んでー
燃え盛る業火
灼熱の琰龍へ向かって走り出した
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龍が吼え、その咆哮が衝撃波となって襲い掛かる!
しかし茜は止まらない
目前に迫る衝撃波に対し、その手に握ったロッドを横薙ぎに振り払うと、ロッドの先端から発生した光が衝撃波を相殺し、それ何処かその一部を食い破って琰龍へと迫る!
だが琰龍は腕を一振りしただけで、その光波を消し去ってしまう
その動きを予め予測していたかの様に、光波の背後に身を潜めていた茜が飛び出す!
そして不意を突かれた琰龍が反応するよりも速く、茜の一撃が放たれる
しかし、その一撃は琰龍の体表を覆う鱗に阻まれてしまった
打撃の反動を利用して後方に大きく跳び距離を取ろうとする茜
その茜に追撃を仕掛けようと琰龍が炎が漏れ出す口を大きく開いたその瞬間
茜のロッドから光の束が放たれ、琰龍の口内で凄まじい爆発が起こったー
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「な、何だ?あれ」
漸く身体を動かせる様になった俺は、その光景を見てポツリと呟いた
其処にはとても恐ろしい化物がいた
そして、そんな化物と互角に闘う茜の姿が有った
「どういう事?」
その言葉に振り向くと、どうやら葵も動ける様になったのか俺の横に来ている
「解らない・・・」
俺は視線を茜の方に戻し、呟いた
俺の知る限り茜はあんな闘い方はしなかった筈だ
少なくとも遠距離からの攻撃など見た事は無い
"意図的に隠していたのか・・・それともー"
そんな事を考えていたらひょいと、急に身体を持ち上げられた
「葵!?」
「何ボケっとしてんのよ!」
そう言うと葵は俺の事を肩口に載せる
"そうだ、今はそんな事を考えるよりも先にやる事が有る!"
辺りを見回すと、翠が惚けた様にへたり込んでいた
「先ずはー」
俺は頭の中でやるべき事を纏めると、葵に指示を出した
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「翠、頼んだぞ」
俺が翠の瞳を真っ直ぐに見詰めながらそう言うと、翠はコクリコクリと頷く
まだ顔が青ざめ、肩が少し震えているが今はどうしようもない
「それにしても・・・」
翠を落ち着かせた後、指示を終えて、琰龍へと歩み始めた葵の肩口で俺は、葵の横顔を一瞥した
さっきから感じていた違和感の正体に気付いたのだ
それは、葵が不自然な程冷静で有る事
葵達の年齢であるなら、この様な状況に置かれたら寧ろ翠の様に取り乱す方が自然だ
だが葵は、琰龍が現れた時も俺より早く冷静さを取り戻し対応していた
「これでもね・・・これでも、それなりには死線を潜って来たのよ?」
俺の視線に気付いたのか、葵が前を見詰めたままポツリと呟く
「10かそこらの子供が、死線?」
「そうね・・・」
葵は、俺の煽る様な軽口にそう一言だけ返す
その時の葵は妙に大人びて見えた
そう、それはまるでー
その時、近くで凄まじい爆発が起こった
葵はロッドを一振りすると、その爆風を切り裂く
「どうやらお喋りしている暇はなさそうだな!葵!」
俺の掛け声を合図に、葵は呪文を唱えると空高く舞い上がった
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周囲は琰龍の身体から吹き出す炎の放射で灼け爛れ、其処此処で琰龍と茜の戦いの流れ弾が地面にクレーターを穿っている
「ねぇ、気付いている?へべれけ」
「あゝ」
俺は葵の肩口に眼下を見下ろしながら答えた
下では今だに茜と琰龍が死闘を繰り広げている
だが問題はそこではない
問題なのは・・・
今、俺達が居る場所だ
「何処なんだ?ここは・・・」
眼下に広がる大地は地平線が見える程広く、唯何も無い荒野が広がっている
ついさっき迄俺達は小学校の校庭に居たはずだった
「翠、学校は見えるか?」
俺は下で待機している筈の翠に連絡を取る
そして、俺の質問に対する翠の答えは、ある意味予想通りで有り、ある意味予想外のモノだった
'学校?学校なら其処に・・・え?学校が消えて行く!?'
翠の驚く様な声が脳内に響く
'へべちゃん、どうしよう!学校が消えちゃうよ!'
「落ち着け、翠!とりあえず作戦通りに待機だ。判ったな?」
'う、うん・・・'
「大丈夫だから、俺を信じろ」
翠を落ち着かせる為にそう言っては見たものの、何か方策がある訳ではない
今のやり取りで判った事は、おそらく"俺達"が何処か別の場所に移動させられているという事だ
"だが、何の為に?此れではまるでー"
そう、此処はまるで俺達とあの化物を闘わせる為の闘技場の様ではないか?
そんな考えが俺の頭を過ぎったが、直ぐにその考えを頭の隅に追いやる
そうだ、今は他にやらなければなららない事がある
上空から見下ろすと、翠が手を振っていた
あれは予め打ち合わせていた合図だ
此処からでは目印となる学校は見えないが、さっき翠は"学校が消えちゃう"と言っていた
だとするなら"翠は学校を目印にしてちゃんと定位置に着いている"筈だ
「やるぞ、葵!ただー」
「翠を目印にすればいいんでしょ?」
「あゝ、その通りだ。それじゃぁ、ミッションスタートだ!」




