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「さてと、どーするかな?」
「どーするかな?じゃ無いわよ!!」
夜の校庭に葵の怒声が響き渡る
「デスよね〜」
そう言いながら俺は目の前の光景に頭を抱えた
其処には泥の山に埋まっている茜と葵の姿があった
「もごごごごご〜」
土塊に上半身が埋もれ、お尻を突き出した状態で茜が何か叫んでいる
「はぁ・・・翠」
俺はため息を一つつくと翠に声を掛た
「ん」
そう応えると翠はスタッフを掲げる
すると土塊がモコモコと動き出し、そのままグズグズと崩れ出す
「ぷフゥ〜、エライ目に遭ったよ」
崩れた土塊の中から茜が顔を出した
「ほんとにもぉ!」
葵も文句を言いながら土塊の中から立ち上がり服に付いた泥を叩き落としている
「う〜ん」
俺は唸った
今のは連携としては悪く無かった
悪くは無かったんだが・・・
何だろう?この違和感
具体的にどうと言われると困るんだが何かが違う
タイミングか?それとも・・・
「悩んでいても仕方ないか・・・」
考えるのは後だ、とにかく今は練習を重ねるしか無い
「ねぇ、へべれけ」
俺が次の指示を出そうとした時、不意に葵が声を掛けて来た
「ん?」
「私達、こんな事していて良いのかな?」
「?。如何言う意味だ?」
「なんて言うか・・・こう、上手く言えないんだけど、何かもっとやらなくちゃならない事がある様な気がするの」
「やらなくちゃならない事?なんだよソレ?」
「そ、それは・・・」
何かを言いかけて、葵は言い淀んだ
そしてそんな葵を見ていても、茜も翠も何も言わない
いや、多分言えないのだ
それは、恐らく此処にいる全員が同じ様な感覚を共有しているからー
「・・・とりあえず、今日は此の位にしとくか!」
気まずい雰囲気を振り払う様に俺は手を叩いた
「そう・・・だね。今日は皆んな疲れているみたいだし」
茜がそう言って少し疲れた様に笑う
「わ・・・私もそう思う!」
翠が珍しく強く賛同した
「まあ、ダラダラやっても効率が悪いし、休息も必要よね」
葵も少し歯切れが悪いが同意する
「そ、それじゃ今日の処は御開きという事で・・・」
俺は茜の肩に飛び移りながらそう言って、練習の終了を宣言した
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「あら?」
其々が帰宅しようと歩き出した時、急に葵が声を挙げて脚を止めた
「どうしたの?葵ちゃん」
そんな葵に茜が声を掛ける
「おかしいわね?結界が解除されないのよ」
「結界が?」
「それって如何言う事だ?」
俺達がそんな事を話していると、急に翠が何かを叫んだ
「ち、違うよ・・・これって・・・!」
そして、翠が何かを言いかけた瞬間ー
「ヴォオオオオオォォォォォォォォォォ!!!!!」
周囲に身体を震わせる程の絶叫が轟いた
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校庭の中央、何も無い筈の地面から"ソレ"はゆっくりと浸み出して来た
最初、球形の様に見えた"ソレ"は俺達が見ている間にも加速しながらまるで地面から湧き出す様に現れ、最終的には10m程もあろうかという巨大な"漆黒の卵"とでも表現するしか無いものへと変わると、そのまま上空へと上がり地上数mの所で停止した
「ちょっと、なんなのよ・・・アレ・・・」
葵は自ら"アレ"と呼んだモノから目を逸らす事なく呟いた
だが、葵の問いに答えられる者はその場に居ない
何故なら、その場にいた全員がソレをただ見詰める事しか出来なかったからだ
俺は焦っていた
"アレ"はヤバイ!その自覚は有る、だが身体が動かない
いや、動かせないのだ
寧ろ一言ではあるが口を訊けた葵が異常で有る様にさえ思える
俺は唯、蛇に睨まれた蛙の様に只々"アレ"を見詰めていた
もし、恐怖というモノに像が有るとしたら当にソレだった
最初にその圧倒的なプレッシャーを辛うじて往なせた事は奇跡に近かったのかもしれない
だが、其処までだった
最早指一本動かす事も出来ずに葵は、只々"ソレ"を見詰める事しか出来なかった
ぼんやりと視界がぼやけている
何故目の前の"ソレ"が歪んで見えるのか翠は不思議に思った
その時頬に何かを感じて、漸くその理由を理解する
"そうか、私、今、泣いているんだ・・・"
そんな事を考えながら、翠は只"ソレ"を続けていた
"何だろうこの感覚・・・?前にも何処かで・・・"
茜はその黝く巨大なモノを見詰めながら、頭の何処かでぼんやりとそんな事を考えていた
膝がガクガクと震え背中に冷たい物が流れるのを感じた
しかしその瞳は瞬きすら忘れ、目を逸らす事さえ出来ずにいる
頭の芯が痺れる様な恐怖
そんな中で、ソレをまるで他人事の様に冷静に見詰める自分
二つの相反する感覚の中、自分の中で何かが目覚めかけている
茜は何故かその様に確信していた
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深い深い闇の中
或いは目も眩む程の閃光の中
"ソレ"はゆっくりと蠢いていた
まるで何かを求める様に
まるで何かを待つ様に
永遠と思える刹那の中
或いは一瞬と思える永劫の中
"ソレ"はゆっくりと蠢いていた
まるで何かを求める様に
まるで何かを待つ様に
身を焦がす程の飢餓の中
或いは満ち足りた充足の中
"ソレ"はゆっくりと蠢いていた
まるで何かを求める様に
まるで何かを待つ様に
そして"ソレ"は目覚める
定められた約束の時に
そして"ソレ"は目覚める
定められた約束の場所で
そして"ソレ"は目覚める
定められた約束の者と出逢う為に
世界が割れた
絶叫が轟いた
運命が軋んだ
そして"ソレ"が姿を現したー




