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「あぁ、死ぬかと思った・・・」
そう言って、俺はゆっくりと体を起こした
迄少し頭がクラクラする
「大丈夫?へべくん」
頭の上の方で声がしたので見上げると茜が心配そうにコッチを見ていた
どうやら俺は茜の膝の上で寝ていたらしい
茜の小さな手が俺を優しく撫で付ける
「葵と翠は?」
「二人共帰ったよ。葵ちゃんはへべくんが気が付く迄残るって言ってたけど、遅くなるから帰って貰ったの」
「そうか・・・」
そう一言だけ返すと、俺は再び茜の膝の上で丸くなった
静かに時が流れる
ここの処色々バタついていたから、こんな穏やかな時間は久しぶりだ
俺は、茜が撫でるに任せて再び微睡みの中に落ちて行った
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翌日、俺達は再び茜の部屋に集まっていた
「で?」
そう言って葵が俺の襟首を摘んで持ち上げると、顔を近づけて来た
「で?ってなんだよ。ってか、顔が近えよ」
俺は不機嫌そうに言うと、葵を睨み返す
「調子は如何だって聞いてんのよ!」
葵が言い返して来る、怒っているのか顔が少し紅い
"心配するのか怒るのかどっちかにしろよ"
一瞬そうツッコミそうになるが、すんでの処で抑える
大人だしな
「ま、まぁ。問題が無いなら良いのよ・・・」
葵は少し拗ねた様な顔をすると、俺をベットの上に降ろした
「葵ちゃんも、へべちゃんの事が心配だったんだよ。今日も学校で・・・」
「ちょ、何言ってんのよ!」
「んぐんぐんぐ・・・」
「あはははは・・・」
翠が何か言いかけたが直ぐに葵に口を塞がれてしまう
笑ってないで助けてやれよ、茜
そんな他愛も無い会話が暫く続いた後、茜が唐突に呟いた
「この前の妖魔・・・強かったよね」
その一言で皆が黙り込む
「で、でも翠も漸く戦いに参加出来る様になったし、今迄だって何とかなって来たんだからこれからも何とかなるわよ」
葵が珍しくフォローに廻が、一向に場の雰囲気は明るくならない
その事は多分、此処に居る全員が感じている事だった
単に妖魔の各個体の能力が強くなっているというだけではない
戦略的と言うか、まるで此方の能力に対応する様な行動を取っている様に思える事さえある
それはまるで、妖魔が知性を持ち始めた様にも思えるものだった
気まずい沈黙の中、俺は有る提案を口にした
「特訓をしよう」
「「「・・・?」」」
俺が言った一言に三人が一斉に俺を見た
「特訓・・・?」
茜が首を傾げながら呟く
「何を言っているのよ、特訓なら今迄だってやって来たでしょ?」
キツい口調で葵が後に続き
「わ、私!もっと頑張ります・・・」
何かを勘違いした翠が妙なテンションで答えた
「はぁ〜」
詰め寄って来る三人を見て一つ溜息を吐いた俺は、後脚で立ち上がるとこう続けた
「俺が言っているのは"個別"の特訓じゃ無い。
"連携"つまり、コンビネーションの特訓って事だ」
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「コンビネーション、ね・・・」
結界を展開しながら葵が呟く
その日の夜、早速小学校の校庭に集合する事にした俺達は昼間の打ち合わせ通りにフォーメーションを作って見た
茜が先頭に立ち、葵がそれに続く
翠は俺と一緒に後方支援だ
「え、えーと・・・。く、クリエイトゴーレム!」
翠が呪文を唱えると前方の地面が盛り上がり人の象へと変わって行く
そして、その高さが3m程にまでに成ると土塊がゆっくりと動き出した
「さてと・・・始めるとするか」
ゴーレムが動き出したのを確認すると俺は翠の肩の上から合図を出す
すると茜が一気に駆け出し、それを追う様に葵が後に続く
二人はゴーレムを挟み込む様に移動すると攻撃を開始した
葵がゴーレムの注意を惹き、茜が隙を観て攻撃を行う
連携と呼ぶには余りにも拙いが、今は少しずつでもやって行くしか無い
「この前みたいなのは、唯の偶然だよなぁ・・・」
「え?」
俺の呟きを翠が聞き返す
「いや、なんでも無い」
俺は翠にそう答えると、ゴーレムと戦っている二人の方に意識を向けた
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「とりあえずはこんな処か」
ゴーレムが音を立てて崩れ落ちる
其れを眺めながら俺は独りごちた
茜と葵の連携に於いては特に問題は無さそうだ
後はひたすら練習を重ねて練度を上げていくしか無い
問題があるとすれば翠なのだが、翠はゴーレムの操作が有るので連携の練習に参加出来無い
「さてと、どうするかな・・・」
そう呟いては見たものの、出来る事は限られている
「今やる事は、"出来る事を熟して行く"位か。そうと決まれば・・・」
俺は翠の耳元に近ずくと、次の指示を下す
「それじゃあ次はー」
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「はぁはぁ・・・」
「も、もうだめぇ〜」
茜と葵がグラウンドの上でヘタっている
「お疲れ〜」
俺は2人に近ずくと出来るだけ気さくにそう声を掛けた
ちなみに翠は魔力の使い過ぎでグラウンドの端の方で同じ様にヘタリ込んでいる
始めにゴーレムを倒させてからおよそ一時間程、俺は3人に全く同じ事を繰り返させた
翠にはゴーレムの錬成と操作
茜と葵にはコンビネーションの練習
先ずは淡々と同じ事を繰り返し頭よりも先に身体に覚えさせる
一見地味で退屈に見える事だが、いざって時にはこういった基礎的な事が路を分ける事が多い
まあ、俺自身こういった地道な作業は苦手なのだが、何故か今はこの様な事柄がとても重要な気がしている
あの時、あの絶対絶命とも言える状況で妖魔を倒した時
三人は俺の指示で行動しているとその時は思っていた
実際、茜も葵も翠も今だに三人はそう思っているのだろう
だが暫くして俺はその考えに疑問を持つ様になった
確かに俺は、あの時出来る最善の方法を選択したと思っているし、其の考えは今でも変わっていない
だが、指示を出す事と其れを実行する事は全くの別物なのだ
況してや茜達はその身体能力こそ魔法なんていう謎パワーで出鱈目に強化されているが、その中身はまだ10歳程の子供でしかない
幾ら指示を受けたとは言え、そんな子供にあれだけの事が咄嗟に出来るのだろうか?
実際、あの時の三人の動きはまるでお互いが何を為すべきかを理解している様だったー
それ以来何故かその事が俺の頭から離れないでいる
今回の特訓もそんな想いから出たものだったのだが・・・
「・・・べくん、へべくん?」
「ちょっとへべれけ!人の話を聞いてんの!?」
葵の怒鳴り声でハッと我に返った
いつの間にか自分の考えに更けっていたらしい
「え?あ、いや、ごめん。ちょっと考え事してた」
「まったく、しっかりしてよね!」
「あはははは。みんな疲れてるみたいだし、今日は此れくらいにして帰ろう?」
よいしょっと身体を起こしながら茜が提案する
明るく振舞っているが、その声には何故か焦りの様なものが感じられた
何だろう?この違和感
「まあ初日だしな。今日の処はこれ位で勘弁してやるか!」
「何いってんのよ、この小動物は?」
そう言って葵が俺の事を摘み上げる
「あ、テメ、この。明日からはもっとビシビシ行くからな!?」
「ほほう。この状況でそんな事を言いますか?」
「ちょ、おま」
「あはははは。じゃあ私、翠ちゃん呼んで来るね」
「え?ちょ、茜さん!?」
「さーて、どうして欲しい?」
「ちょっと待て。とりあえず落ち着け。話し合おう」
「問答無用!」
「あーっ!」
色々と考えなければならない事は多いが、とりあえず今はそんな他愛の無いやり取りの中に不安を押し込める
現実逃避なのは自覚しているが、俺には何故かこの事は一夕一朝でどうにかなる様な事では無いと言う確信があった
ふと、視線を投げると茜と葵が笑いながら此方に近ずいて来る
迫る葵の手を躱しながら俺は、こんな時間がずっと続けばいいのにと漠然と考えていた




