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へべれけ!  作者: へべれけ
第10話
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10-b1

「えーと、こんな感じかなぁ?」

翠が宙にルーンを書き出す

其れは一文だけの簡単な記術

俺達は翠の魔法の練習の為、いつも通り茜の部屋に集まっていた


翠はルーンの記術が終わると、次に掌に蒼く光る球体を創り出す

おそらく其れはルーンリーダー、賢者の瞳と呼ばれるモノだ

翠は其れをルーンの上を滑らせる様に移動させる

と、ぼふん!という軽い破裂音と共に部屋中に煙が満ちた


「ゲホ、ゲホッ」

煙に咳き込みながら、茜が窓を開けて換気をする

「ゴホッ、ゴホッ、いきなり部屋が爆発しなくて良かったわね」

「こ、怖い事言わないでよ・・・」

葵の軽口に茜が応える

顔は笑っているが口元が引きつっているぞ、茜


「ご、ごめんなさぁい・・・」

翠がシュンと肩をお落としてへたり込む


それにしても何だ?このダメッ子振りは?

属性か?魔法少女になると属性が付くのか?

俺がそんな事を考えていると葵が話始めた


「それにしても、こんな単純なルーンでこれだけの事が起きるなんて・・・。普通なら考えられ無いわ」

「そうなの?」

葵の言葉に茜が聞き返す


「ええ、本来なら魔力の集積自体では何も効力はない筈何だけど・・・」

「だったら何でこんな事になったんだろう?」

「多分・・・ルーンを読み取る際に手元が振れているのね。其れが詠唱を歪ませているのだと思うわ」

「手元が振れている?」

「軸が振れているって事か?」

二人の会話に俺が割って入る


「そうね、ルーンとリーダーをもっと厳密に操作する必要がありそうね」

俺の質問に葵は答えてくれたがその顔は優れない

多分、その解決策が思い付かないのかも知れない


「せめてルーンリーダーの方を固定出来れば良いのだけれど・・・」

「こんな感じかなぁ?」

翠の言葉に振り向くと光る球体が宙に浮いていた


━━━━━━━━


光る球体の前をルーンが横切る

ルーンは球体の前に来ると一瞬その輝きを増すが、そこを過ぎると直ぐに元の明るさへと戻ってしまう

まるでワードスキャナーそのものだ

翠は短い一文のルーンを四角い軌跡を描く様に動かして何度も読み込ませている

俺達は万が一を考えて場所を屋外に移していた

もちろん周囲には葵が結界を張っている


「それにしても、毎回良く振れずに出来るわね」

葵が感心した様に呟く


「相対座標を固定しているから、もっと早くなっても大丈夫だよぉ」

「「「!?」」」

翠の何気無い一言にその場に居た全員が振り向く


「な、何?」

皆に注目されて、翠は少し不安そうに尋ねる


「「「い、いや(いえ)。べ、別に・・・」」」

何と無く気不味い空気に皆の目が宙を泳いだ


"それにしても、相対座標・・・相対座標と来ましたか・・・"

俺は心の中で呟いた


━━━━━━━━


ルーンによる長めの一文が蒼い光を放つ球体の前を通る

そのルーンは魔力を集積する呪文を数回連続させているそうだ

さらにその最後の一文と最初の一文が文法的に繋がっており、四角い軌跡を描いてその一文を連続して読み込ませる事で魔力の集積を連続して行うのと同じ効果を得ているのだという


「確かにこれは凄いわね。素直に感心するわ」

高速で動き廻るルーンを見ながら葵が呟く


「葵ちゃんが凄いって!やったね、翠ちゃん!」

「えへへへへぇ」

茜と葵に褒められて、翠が照れ臭そうに頭を掻いた


「だけど、此れだけではダメね」

そんな翠に冷や水を浴びせる様に葵が呟く


「どうして?葵ちゃん」

葵にダメ出しされて、しゅんとしてしまった翠に変わって茜が翠に質問した


「魔法の発動には魔力が必要で、その規模が大きくなればなるだけ必要とする魔力も大きくなるわ。でも普通、個人の内包する魔力だけでそんなに大量に高密度の魔力を調達出来無い。だから呪文の構築に於いて魔力の集積は基本であり必須なのだけど・・・。魔力の集積と言うのはね、それ単体では魔法とは成り得ないの。何故ならそれは単に魔力を集めるだけのモノだから」

「つまり、魔法を使う為には魔法を使う為の呪文が別に必要って事?」

「と言うより、本来魔法は魔法を発動させる為の呪文がメインで魔力の集積は魔法を発動させる為に魔力を集める為の補助でしかないの。だから、幾ら魔力を集積してもそれだけでは意味がないのよ」

「「「・・・」」」

葵の身も蓋も無い解説が終わると気不味い沈黙が暫く続いた

予想はしていたがハッキリ言われるとそれはそれでキツイもんだよな

そんな中、ルーンだけが音も無く動き続けて居た


━━━━━━━━


「私、もっと試してみる!」

翠はそう言うと再び宙にルーンを綴始めた


先の一件以来、翠は様々な試行錯誤を繰り返しては魔力を暴発させている

基本的に魔法を発動させる為にはそれ専用の記術が必要なのだが、記術には其れなりの時間が必要で更にスペルリーダーによる読み込みが必要な為、口述による詠唱に対してキャスティングタイムが大きく今だ実用性に問題を抱えていた

それでも翠は諦める事無くキャスティングタイムの短縮の為に様々な事柄を試している

スペルリーダーの形状を替えたり、作文の配列を変えたりしている様だが上手く行っている様には見えない


結論から言えば、翠の努力は今の処実を結んではいなかった

だが翠は諦める事無く、唯黙々と練習を繰り返している

なんとかしてやりたいとは思うが、魔法を使え無い俺に一体何が出来るだろう?

ふと見上げると、空が赤く染まっていた

俺は夕焼けに茜に染まる空を見ながら、翠の為に自分に何が出来るだろう?と考えていた


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