07-b1
日が傾く
まだ暗くなるというほどではないが、空には宵の明星が輝いている
茜と葵、そして俺の3人(?)は人気の無い河原にいた
「It's a place, it's a sky, it's a wind.hide me,hide person,from the one of the thing which should be here.」
葵が指輪を掲げ呪文を唱えると、一瞬周囲の景色が揺らぐ
「今のは?」
「結界よ、これで多少派手に暴れても邪魔は入らないわ」
俺の問い掛けに葵は答えた
「・・・なぁ、本当にやる気なのか?」
「うん、これは必要な事なの」
「当然よ、今後の為にも何方が上かハッキリさせて置かないとね」
「えーとさぁ、俺も子供の喧嘩に口出しする気は無いけどさぁ、もっとこう・・・合理的に考えられないもんかねぇ?」
「「子供の喧嘩!?」」
「あ、いえ、申し訳ありませんでした。私の事は気にせず、どうぞご随意に」
2人は暫く殺気立った瞳で俺の方を睨んでいたが、お互い向き直ると同時に指輪を掲げる
「エンゲージ!」
「engage!」
そう叫ぶと、2人の少女は左手の薬指に指輪を嵌める
少女達の着ていた服が、光の粒子となって虚空に消える
それと入れ替わるように光の帯が現れ、少女達の身体を包んでゆく
緋と碧の光が乱舞する中、少女達の手に、脚に、光が集まり光のドレスへと、その像を変えてゆく
そして、少女達を包む光の粒子が掻き消えた後には、それぞれ緋と碧のドレスを纏った2人の少女が佇んでいた
━━━━━━━━
「It's a wind!It'll be one thousand blades of blade,mince my enemy!」
詠唱と共に光の刃を振り抜くと、その刃が粉々に砕け散る
砕けた刃の破片が光の奔流となって茜に襲いかかる
茜は足を止めるとロッドを構え、その光の奔流を振り払う
すると、光の欠片の一つ一つがまるで何かに弾かれたように飛び散り消えてゆく
そして、その光の粒子がまだ消え去らないうちに、茜は宙を駆け抜けて一気に葵へと肉薄した
「You be my sword, and subjugate myー」
詠唱の隙をついた茜の一撃を紙一重で葵が躱す
葵はそのまま大きく距離をとると、もう一度詠唱を再開して光の刃を出現させる
「やーぁ!」
追撃を仕掛ける茜の攻撃を葵は光の刃で受けるが、その一撃ごとに光の刃が幻影の様に揺らぐ
「くっ!」
葵は一旦後方に飛んで距離をとると呪文を唱えた
「It's a gale!It'll be my blade, cut and tear that's person!」
詠唱と共に光の刃が打ち出され茜を襲う
茜は辛うじてその一撃を受けきるが、後方へと弾かれ距離を開けられる
そして2人は何度目かの攻防を終え対峙していた
「ハァハァ」
「はぁはぁ」
「全く!なんであなたは呪文を詠唱しないのよ!?」
「詠唱?うーん、良く解らないや」
「貴方は・・・!貴方は魔法少女なのでしょう!?だったら呪文の1つも使ったらどうなの!?」
「そんな事言われても・・・」
「大体あなたのそれ、一体なんなのよ?」
「それ?」
「飛翔呪文も使わずに、なんで飛べるのかって聞いているのよ!?」
「これは別に飛んでる訳じゃなくて・・・」
「飛んでる訳じゃ無い?」
葵の顳顬に青筋が浮かぶ
「え、えーと・・・歩いてるっていうか、走ってるっていうか・・・」
「なる程・・・それじゃつまり、あなたは魔法を使わずに、空中を歩いたり走ったり出来るっていうのね?」
「うん、まぁ、そんな感じ・・・かな?」
「巫山戯無いで!魔法を使わない魔法少女なんて・・・非常識だわ!!」
「えぇ・・・」
"それは言い掛かりなんじゃないかなぁ?"
茜はそう言いかけたが、葵に酷く怒られそうな気がしたのでその言葉を飲み込んだ
━━━━━━━━
「こいつは酷ぇや・・・」
河原の土手の上で、2人の戦いを観ながら俺は一人ごちた
所詮は小学生、最初は子供同士の戯れ合いかと思っていたが・・・
あの2人、ガチで殺り合ってやってやがる
本来ならば俺が止めに入らなければいけない状況なんだろうが・・・
なぜだろう?
俺が何かすればするほど状況が悪化するような気がしてならない
それ以前に、唯の小動物になった俺が、あの超常バトルに介入できるかどうかという問題もあるのだが・・・
だが、このまま放っておく訳にもいかない
実際こんなくだらない事で2人が怪我でもする様な事があれば洒落では済まされない
俺は2人を止める手段は無いかと考えを巡らせる
その時、あの感覚が襲って来た
そう、妖魔の出現を報せる、あの不快な感覚だ
俺が空を見上げると、2人も此方を見ていた
俺達は頷き合うと妖魔の元へ向かった
━━━━━━━━
瞑い影が漆黒の翼を広げていた
その妖魔は歪な鳥の様な像をしていた
そして、ソレは上空から俺達を見下ろしていた
「そうだわ、アレにしましょう」
「?、何の話?」
突然の葵の発言に茜が尋ねる
「私達の決着は未だ着いて無かったでしょう?だから、アレにしましょう。アレを先に倒した方がへべれけをパートナーに出来る。どう?良い考えだと思わない?」
「いい加減にしろ!今はそんな事を言っている場合じゃ無いだろ!」
「・・・判ったわ」
「!、茜!?」
茜の言葉に驚く俺を無視して、葵は満足そうに笑うと呪文を詠唱して空へ舞い上がる
「茜・・・」
「へべくんは黙ってて、これは・・・これは女の戦いなの」
そう呟くと茜は葵を追って空へ駆け出した




