06-b2
「engage・・・」
少女はつぶやくと、その指輪を左手の薬指に嵌めた
光が少女を包み込みその姿を変えていく
少女の着ていた服が光の粒子となって弾け飛び、青い光の帯が少女の身体を覆ってゆく
その形はまるで卵の様であり、その中で少女のシルエットが透けて見えている
やがてその卵の殻にヒビが入り弾けると、その中から青いドレスをまとった少女が現れた
「You be my sword, and subjugate my enemy.Raptor blade!」
少女は手にしたステッキを振りかざす
するとそのステッキの先端から光があふれ出し鳥の羽のような形になる
或いは、それは湾曲した青竜刀の様にも見えた
「You be my wing,and carry me.Falcon wing!」
それと同時に背中側の大きなサッシュが、まるで鳥の羽の様な形に変わる
少女はその刃を妖魔へと向けると、獲物を狩る猛禽の様な勢いで一気に間合いを詰めて切り掛かった
光の刃が一閃すると妖魔の一部を切り裂く
しかし、その傷はすぐに塞がれていく
それでも諦めずに、少女はその疾さを生かして妖魔の周囲を飛び回り斬撃を加え続ける
と、妖魔はその切り裂かれた部位から鞭のような触手を伸ばし、青いドレスの少女に襲いかかる
少女はその一撃をひらりと躱すと、光の刃でその触手を切り捨てた
妖魔の身体がゆっくりと宙に浮く
その切り裂かれた傷口から生えた触手の何本かが、地面へと伸びて妖魔の身体を持ち上げていた
少女は妖魔から距離を取るように空高くへと舞い上がる
少女が自分に向かってくる触手を、その光の刃で振り払う度に、バチバチと閃光が弾ける
光の刃を振りかざす青いドレスの少女は、まるで闇と一緒に踊っているように見えた
「ちくしょう!もう始めてやがる、茜!」
「うん!エンゲージ!」
光が茜を包み込み、赤いドレスへと変わる
「へべくん!」
茜の呼びかけに応えて、その身体をよじ登りフードの中に潜り込む
茜は俺がフードの中に潜り込んだのを確認すると、一気に空へと駆け上がった
━━━━━━━━
「まったく!キリが無い!」
毒づきながら、光の刃を振り回し触手を切り払う
「It's a wind!It'll be one thousand blades of blade,mince my enemy!」
そう言って青いドレスの少女が光の刃を振り払うと、光の刃が粉々に砕け散った
そして、その一つ一つが小さな刃と成って、妖魔の触手を切り飛ばし、その幾つかが本体に突き刺さる
だが、妖魔の胴体を両断するまでにはいかず、途中でその刃は消えてしまった
「だったら!It's a gale!It'll be my blade, cut and tear・・・」
何かを唱えようとした一瞬の隙を突いて、青いドレスの少女の足に触手の一本が絡み付く
「しま・・・」
次の瞬間、彼女の体はすさまじい力で地面へと放り出された
"マズイ!"
彼女の思考は、事態を把握し、状況を分析し、状況を打破しようと目まぐるしい程の速度で動いた
しかし、それに反して彼女の身体は、まるで鉛のように重く恐ろしくゆっくりとしか動かない
"あゝ、これが・・・"
彼女は何かを悟ったようにゆっくりと瞳を閉じ、次の瞬間自分に襲いかかるであろう凄まじい衝撃に備える為に体をこわばらせた
しかし、その時は来なかった
その代わりに彼女が感じたのは、何か柔らかいものに包まれるような感覚だった
少女がゆっくりと瞳を開けると、そこにあったのは少女の顔だった
その赤いドレスを着た少女は、彼女が目を開けたことに気づくと微笑みながら言った
「大丈夫?葵ちゃん」
━━━━━━━━
"来るぞ、茜!"
その言葉に反応して茜は大地を蹴る
次の瞬間、今までいた場所に妖魔の触手が突き刺さった
「ありがとう、へべくん」
茜がお礼を言う
「あなたたち、まるで言葉が通じるみたいね?」
光の刃を振り、妖魔の触手を薙ぎ払いながら、葵が2人(?)の様子を見て呟く
「普通に話せるよ?」
"茜!"
警告に反応し、妖魔の触手を避けながら茜が答える
「そんな筈無いわ!どうせ話しているつもりになっているだけでしょう?」
葵が妖魔の触手を薙ぎ払う
「そんな事無いよ! ちゃんとお話しているもんね?」
妖魔の触手を避けながら、茜が俺の方に視線を向ける
"いい加減にしろよお前ら!こんな状況でやっている場・・・"
あまりにも場違いな言い合いに腹を立て、思わず身を乗り出した瞬間、茜が触手を避けるために横へ跳んだ
体が宙に浮き、茜から離れる
そこへ、狙ったように妖魔の触手が襲い掛かる
突然の事に茜も一瞬反応が遅れている
"ヤバ・・・"
頭の中が真っ白になりかけたその時、何かが俺の体を鷲掴みにした
その瞬間俺の体に電流のようなものが走る
"あれ?この感覚って・・・"
既視感を覚えながらも周囲を確認すると、葵が左手で俺をつかみながら、光の刃で触手を斬り伏せていた
「あ、ありがとう」
そう呟いてふと見上げると、葵が目を見開いてこちらを見ている
「あなた・・・喋れるの?」
その葵の言葉に、俺はこれがただの偶然ではないことを確信した
━━━━━━━
「判ったな?」
俺は2人に最終確認する
2人は黙って頷いた
俺は茜達が触手の相手をしている間、横でずっと妖魔の観察をしていた
その結果、この妖魔の行動パターンを解析し攻略の糸口を掴むことができたのだ
しかし、もし未だに葵と会話できていなければ、これほど短時間の内に、この2人に的確な指示を出すことは出来なかった筈だ
それ程、言葉が通じる事の意味は大きかった
茜が宙を駆けて妖魔の注意を引き付ける
「It's a gale!It'll be my blade, cut and tear that's person!」
その一瞬の隙を突いて、葵の放った一撃が妖魔の体を支える数本の触手を切り裂く
体勢を崩し地面に倒れ込む妖魔
他の触手が身体を支えようと地面の方へ伸び様とするが、その間を与えずに茜が妖魔の体の下へと潜り込みロッドの一撃を叩き込む
「It's a wind!It'll be one thousand blades of blade,mince my enemy!」
反動で空中へと打ち上げられた妖魔に、葵の放った無数の風の刃が降り注ぐ
そして、すべての触手を失い無防備になった妖魔に2人の少女がとどめの一撃を解き放った




