05-a2
「へべくん?」
その声に振り返るとそこには茜がいた
「茜?どうして此処に?」
「うーん、なんかピリピリしたんで来てみたんだけど・・・」
茜は辺りを見回すと言葉を続けた
「コレってまるで・・・」
そう言って茜はもう一度辺りを見回す
その時倒れている人がピクリと動いた
「とりあえず場所を変えよう」
「そうだね」
そして俺たちはその場を後にした
「・・・」
「・・・」
気まずい沈黙が続く
「これってやっぱり・・・」
茜がつぶやいた
「多分・・・」
俺は答える
この可能性を考えていないわけではなかった
俺が茜と出逢って以降、今までに何度か妖魔と戦ったが、茜の戦い方は近づいて殴る事ばかりで、いわゆる遠距離攻撃の類いはした事が無かった
又、この前の話からも茜がその系統の攻撃手段を持っていないのは明白だ
しかし、俺がこの身体になった原因、あの夜の出来事が誰かと妖魔との戦いに俺が巻き込まれたのだとすれば、状況から考えてその誰かは遠距離系統の攻撃手段を持っていた事になる
つまり、茜以外にも妖魔と戦っている誰かがいると言う事だ
その後、俺達は一言も話す事無く家に帰った
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翌日から俺は、調査を開始した
俺は、茜に頼んでママさんからタブレットを借りてもらい、ここ数ヶ月のこの地域周辺で起こった事を調べた
そして、妖魔との戦闘があったと思われる事案を抜き出し、その場所を実際に廻ってみた
その過程で気が付いたのだが、俺にもあ茜が言うピリピリとした感覚というのが判る様になって来た
はじめの頃は全く意識しなかったのだが、妖魔との戦いがあったと思われる場所に来ると、何か違和感の様なものを感じるようになったのだ
しかも、その感覚は日に日に強くなっているように思える
なぜこんな感覚が付いてきたのはかわからない
もしかすると、茜と話せるようになった事と何か関係があるのかもしれないが、少なくとも今回の調査でこの能力は大変役に立った
そしてこの調査の結果俺は、この地域周辺の地図に妖魔が現れたと思われる場所をマッピングし終え、妖魔出現マップとでも言うものを完成させた
その日の夜
「茜、コレを見てくれ」
俺は茜にタブレットを見せた
「何?これ」
茜はタブレットを覗き込みながら答える
タブレットのモニターには、この地域の周辺地図 が写し出され、その地図には赤と青の丸印がいくつか書き込まれていた
「これは、ここ1、2ヶ月の間に妖魔が現れたと思われる場所の地図だ。青は俺があかねと一緒に戦った妖魔が現れた場所、そして赤は、俺達が知らないところで妖魔が現れたと思われる場所だ」
「・・・これ、へべくんが作ったの?」
茜が驚いたような表情で俺を見つめる
「他に誰がいるんだ?そんな事より、俺と出会う前に妖魔と戦っていた場所を覚えていたら、ここに追加で記入してくれないか?」
俺がそういうと茜は
「う、うん、わかった」
と言って茜はタブレットの上に丸を書き込んでいく
茜が書き込んだ丸のいくつかは、赤い丸と重なっていたが、それでも最終的にいくつかの赤丸が地図の上に残された
「これではっきりしたな・・・俺たち以外にも妖魔と戦っている奴がいる」
俺はタブレットのモニターに映る地図を見つめながらそうつぶやいた
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次の日から俺の散歩の目的に、地域周辺の地図を頭に入れる事に加えて、まだ見ぬ誰かを見つけるという項目が加わった。が・・・
「とは言ったものの・・・」
正直、俺は途方に暮れていた
あの後、茜といっしょにタブレットを使って妖魔の出現パターンを検証してみた
しかし、場所に関しては特にこれといったパターンは存在しない様だった
出現時期に関しても、大体1週間と言う大枠はあるものの、ばらつきが多くそれほど正確というわけでもなかった
更には、例の"誰か"に関して言えば、全く手がかりすら見当たらない
「さてと、どうするかな?」
俺は木の枝の上にうずくまりながら考えた
木の下では、この家の飼い犬であるベスが吠えている
俺は、ポーチの中からビスケットを取り出すと下に放り投げた
ベスはビスケットを追って駆け出す
その光景を見ながら、俺は立ち上がる
「とりあえず差し入れに行くか」
俺は空き地に向けて歩き出した
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草むらに着くと子猫達が飛びかかって来た
最近は俺の事を完全に獲物と認識している様だ
しかも子猫は成長が早く、身体の大きさは既に俺の半分ほどにもなっている
"狩られる・・・このままではいずれマジで狩られてまう"
最近ではそんな危機感にさいなまれて、こちらも本気で対抗している
この前、茜と一緒に此処に来た時、俺たちの本気バトルを見た茜は
「楽しそうだね」
と、微笑みながら言っていたが
私は本気なんですよ、茜さん?
そんな本気バトルを子猫達と繰り広げていると、不意に背筋に悪寒が走った
反射的にその場から飛び退き
子猫達を草むらの中に投げ飛ばすと、自分も物陰に身を隠しあたりを見回す
すると、少し離れた物陰から1人の少女が現れた
始め、少女は何かを探す様に辺りをキョロキョロしていたが、草むらの中から子猫達が這い出してくると、その瞳を爛々と輝かせながらこちらに近づいて来た




