05-b1
「はよーっす」
「おはよう」
「おはよう、琴音ちゃん、京子ちゃん」
朝の教室、茜が教科書をランドセルから机に移し替えていると、琴音と京子が話しかけて来た
「なあなあ、茜はもう転校生と話したか?」
「転校生?」
「この前、1組に転校生が入ってきただろう?その子のことだ」
琴音の言葉足らずなところを京子がフォローする
茜は、相変わらず良いコンビだなと思いなが言葉を返す
「1組の子かぁ、 実は1組って前学年で友達だった子いないんだよね。それにクラスが離れてるから、体育とかでも合同でやる事ないし・・・ 。気にならない訳じゃないんだけど、まだ話したことはないかな」
「だ、そうだ」
「それじゃ、今から会いに行こうぜ!」
「随分いきなりだなぁ、どうしたの?急に」
少し困った顔しながら、茜は視線で京子に助けを求めた
「実は、1組にはクラス分けの時別れてしまったが、前学年で連んでた奴がいるんだ。そいつから聞いた話だと、どうやらその転校生、帰国子女らしいんだよ。で、その話をこいつにしたら、こうなったって訳さ」
「あはははは、なるほどね」
「なあなあ、茜も見て見たいだろう?帰国女子。だから一緒に見に行こうぜ?」
そんな話をしていると、横から声をかけられる
「おはよう、茜ちゃん」
「あ、おはよう翠ちゃん」
「何の話しをしているの?」
「そうだ!翠も一緒に行こうぜ!」
「えっ?何の話?」
「うん、それがね・・・」
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「ねぇ、やめようよぉ」
「大丈夫だ、問題ない」
「おい、それはフラグだぞ」
「はぁ、何でこんな事になっちゃったんだろう?」
茜はため息をついて、今朝からの事を思い返した
あの後、茜達は転校生に対してどのようなアプローチをとるかを話し合った
初めは、とりあえず1組の教室を覗きに行って、機会があったら話し掛けると言う普通のものだったのだが、その後、何故か話が二転三転し、気がつけば放課後に転校生を尾行する事になっていた
「はぁ、本当に何でこんな事になっちゃったんだろう?」
盛り上がる琴音達を横目で見ながら、茜はもう一度ため息をついた
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「目標が動いた!」
琴音が嬉々として物陰から飛び出す
「 あ、バカ!それじゃ見つかるだろう!」
なんだかんだ言いながら、京子も結構楽しそうだ
「茜ちゃん・・・」
「えーっと・・・ 大丈夫だよ翠ちゃん、私達もいこうか」
不安がる翠の手を引いて、茜も2人の後を追った
かれこれ三十分ほど、転校生の尾行は続いていた
転校生は家に帰るでもなく、街中をまるで散歩でもするかのように歩き回っていた
「ねぇ茜ちゃん、もしかして私達が尾行している事、気づかれてるんじゃないかな?」
翠が不安そうに茜に尋ねた
「あはははは、えーっと・・・」
「バカなことを言っちゃいけないぜ翠ちゃん、 俺たちの尾行は完璧さ!」
茜が返答に困っていると、横から琴音が親指を立てて自慢げに言う
「ばれてるのは良いとして、だったらなんで私達を撒こうとしないんだろうな?」
琴音の頭を叩きながら京子が疑問を口にした
「うーん、そこなんだよね。何でだろう?」
茜達がそんな事を話している間にも、転校生は河川沿いの遊歩道を通り抜けて、お花見の時に子猫たちを見つけた空き地の方へと歩いていった
と、転校生が急に立ち止まり、物陰に隠れた
「ばれたか?」
そう言って琴音が素早く電柱の陰に隠れる
「なにやってんだ?お前らも早く隠れろよ!」琴音は手をバタバタさせながら茜達を電柱の陰に引き入れようとする
しかし、茜達はそれを無視して転校生の様子を見守っていた
転校生は茜達から身を隠したわけではなかった
実際その姿は茜達から丸見えだった
それはまるで、空き地にいる何かから身を隠しているようだった
茜達がしばらく様子を見ていると
転校生はキョロキョロと辺りを見回しながら空き地の中へと入っていった
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目を爛々と輝かせて少女が近づいて来る
"アレは狩る者の目だ!"
その目を見た瞬間、俺はそう確信した
そして、その少女の視線の先には子猫達がいる
俺は、意を決して飛び出すと少女の前に立ちはだかり、逆毛を立てて威嚇する
しかし、その少女は俺を見ると、更に目を輝かせてにじり寄ってきた
「大丈夫、何もしないから」
そう言いながら少女は、手を差し出してくる
あの手に捕まったらやばい!
本能がそう訴え掛けるが、俺の後ろには子猫達がいる
少女になすすべもなく捕まる俺
「うふふふ、うふふふふふ」
歓喜に震えるような声を漏らし
少女は俺の身体を情け容赦無く撫で廻す
"子猫達、早く逃げろ!この俺が犠牲になっている間に早く!"
そんなことを考えながら体中を撫でまわされていると、不意に茜の声が聞こえた
「へべくん・・・こんな所で何やってるの?」
その声は、魂を揺さぶる様な低い声だった




