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へべれけ!  作者: へべれけ
題5話
27/72

05-b2

「私の名前は葵」

少女は俺を撫でながら言った


「えっと・・・私は茜」

「俺は琴音だ!」

「私は京子」

「み、翠です」

答えて茜達も名乗る


「それで、何故私を追いかけ回していたか説明してもらえるんでしょうね?」

そう葵と名乗った少女は言った


すると、それに応える様に京子が一歩前に出る

「あゝ、それはな・・・





・・・と、言う訳だ」

京子が今までの出来事をかいつまんで説明し終えると


「はぁ、全く呆れるわね」

そう言って葵はため息をついた


「返す言葉もない」

京子が肩をすくめる


「でも、葵っちはなんでこんな空き地まで来たんだ?」

「葵っち?まぁいいわ、私がここに来たのは、私の後をついてくるあなた達を問いただそうと思ったからよ。ここなら偶然出会ったなんて言い訳はできないわ。本当は、途中で巻いてしまっても良かったんだけれど、後日に又、追いかけ廻されたら嫌でしょう?」

琴音の問いに葵が答える


「だったら、この空き地に入る前に、いきなり物陰に隠れたのは何でだ?」

「そ・・・それは、この空き地に入ろうとしたら、このかわいい生き物と小さな子猫達がじゃれあっていたから・・・思わずxxxxxx」

最後の方は声が小さくなってよく聞き取れない


「あゝうん、気持ちはなんとなくわかるよ。それでなんだけど、そろそろへべくんを返してもらえないかな?」

「へべくん?そう言えば、さっきもそんなことを言っていたわね。へべくんってこの子の事?」

葵は抱きかかえている俺を見た


「うん、本当はへべれけっていう名前なんだけど、私はへべくんって呼んでるんだ」

「俺はへべっちって呼んでるぜ!」

「私はへべれけ君」

「わ、私はへべちゃん・・・」


「そうか、君はへべれけという名前なんだね」

葵は、向き合うように俺を抱え上げると微笑みながらそう言った


そして、そのまま茜に手渡した


━━━━━━━━


「で、へべくんはあそこで何をしていたのかな?」

あの後、翠達と別れてからの帰り道、茜はもう何度目かになる質問を俺にした


「だーかーらー、子猫の餌やりだって何度も言ってるだろ!」

俺も何度目かの同じ答えを繰り返す


「でもへべくん、葵ちゃんに抱っこされている時も全然抵抗していなかったよね?寧ろ、頭を撫でられて喜んでるみたいだったよ?」

「だーーかーーらーー」

「本当は、葵ちゃんに抱っこされて嬉しかったんじゃないの?ねぇ、へべくん、怒らないからさ、本当の事言っちゃいなよ」

"目が笑ってねぇーーー、茜が壊れたーーー、誰か何とかしてぇーーーーー"


そんな時、心がざわつくような、あのピリピリとした感覚が俺たちを襲った


俺と茜は顔を見合わせると、その感覚が強くなる方向へと走り出した


━━━━━━━━


「エンゲージ!」

茜の身体が光に包まれ、真紅のドレスを纏った姿へと変わる


「さぁ!お仕置きの・・・」

茜がセリフを言い終わるよりも早く、妖魔の一撃が放たれる


茜が紙一重でその攻撃をかわすと、"パン!"という破裂音と共に、今まで茜が立っていた場所にクレーターが出来た

その後も妖魔は、圧倒的な速さで攻撃を繰り出して来る


「速過ぎる!」

思わず茜が泣き言を漏らす


実際、この妖魔と茜の相性は最悪だった

茜の能力は、いわば 火力重視の近接特化型と呼べる様な物だった


それに対してこの妖魔は、速度重視の一撃離脱という戦い方をしていた

妖魔が攻撃をする際には、茜の攻撃範囲に入るのだが、茜が攻撃しようとする時には既に、妖魔はその範囲から離脱している

幸い、この妖魔の攻撃力はそれほど高くない様だったが、それでもじりじりとダメージが蓄積されて行く


"不味い!この状況は不味い!"

茜は既に防戦一方になってしまっている

俺は周囲の状況を観察し必死になって対応策を考える


「きゃあ!」

しかし、その考えがまとまる前に妖魔の一撃が茜の体勢を崩した


無防備になった茜に妖魔の一撃が迫る!

その時、一陣の風が妖魔をはじき飛ばした


俺と茜の頭上を飛び越えて舞い降りる影

そこに俺と茜が見たのは、青いドレスを纏った少女の後ろ姿だった


━━━━━━━━


少女は、軽く大地を蹴ると一気に加速した


その少女と妖魔との戦いはあまりにも疾く、俺の目では追いきれなかった

周囲で突風が吹く度に、地面が抉れ破裂音が響く


俺達は、周囲で展開されているであろうその戦いを見ることさえ叶わず、終わるのを唯じっと待つ事しか出来なかった

そして、それは不意に起った

急に風が凪、俺達から少し離れた場所に、少女の後姿が現れた


少女の前には妖魔が倒れていた

そして妖魔は光の粒子となって、その光は少女の左手に集まって行く


少女の左手に集まった光が消えると、妖魔に吸収されていた人をその場に残し、青いドレスを纏った少女は、こちらを振り返る事も無く来た時と同じようにどこかへと立ち去っていった


俺達は、その後ろ姿をただ呆然と見送ることしかできなかった

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