国王からの依頼
2本目良し、3本目も書くぞ書くぞ書くぞ!
――パクッ――
「本当に要らないの?…今朝から軽い食事しか摂ってない様だけど?」
「――護衛が主の食事に手を付けるなど、前代未聞でしょう」
「私が食べさせて上げようか♪」
「――恐縮ですが、御遠慮致します」
へカティア王女の私室で、彼女は遅めの朝食を口にする…相変わらず俺への言動は王侯貴族のソレとは違い、破天荒の極みだが。
「――ん、そう言えばお父様が貴方にお話があると聞きましたわ」
「…国王陛下が?」
食事を終え、食器を給仕に下げさせると…ふと彼女はそう言い俺へ伝言を告げる…その言葉に俺は首を傾げ、彼女へ聞き返すと…彼女は頷き、俺へ言う。
「はい…何やら〝仕事〟を頼みたいとか…」
「……成る程」
〝仕事〟と聞き、俺の手に力が籠る…態々俺へ〝仕事〟を依頼すると言う事は、つまり〝そう言う事〟なのだろう。
「…では、王女殿下の護衛は如何致しましょう」
俺がそう言い、彼女へ護衛の委任を尋ねると…彼女は不思議そうに俺へ顔を向けると――。
「?……断りましたわよ?」
そう言う…その言葉に俺が思わず疑問を彼女へ投げ掛ける。
「…は?……断った?」
「はい♪…だって貴方は〝私の騎士〟でしょう?…主はお父様ではなく〝私〟なのですから、私が貴方の仕事を選びます♪」
そんな俺の言葉に、彼女はそう言い…食後の紅茶を口にし微笑む。
「…そうですか」
「――だから、コレは命令です…私の事はハニーと「その命令は聞けません」…チッ!」
へカティア王女の言葉に、俺は心中で溜め息を吐くが…少なくとも、平穏な時間に居られることに小さく安堵した――。
――ゴンッ――
「頼むへカティアッ、どうしてもフロディが必要んだよ!」
「駄目です」
「この通り!」
「駄目です♪」
「後で何でもお願いを聞くから!」
「じゃあフロディとの婚約を「それは駄目だ」…」
のも束の間に…玉座の間に呼び出されて来てみれば、其処には威厳も糞もない…実の娘に土下座で頼み込む国王陛下の姿が有った。
「…へカティア様、此処は爺やの顔を立てて、お話を聞いては下さいませんか?」
「むぅ…爺や……仕方無いですね、お話だけは聞いてあげます」
「何で…何でバイツの頼みは聞くのに、国王でパパの俺の頼みは聞かないんだ…(ゴフッ)」
茶番と呼ぶには混迷を極めたこの状況に…渦中の根幹に居る俺は、ただ目を閉じ耳を閉じ…この状況から現実逃避する…すると、落ち着いたのだろう、国王陛下は自身の口から溢れる血を拭い…玉座に座り、へカティア様と俺を見る。
「――実はだな、近々ミルの誕生パーティーが有るだろう…」
そう言う国王陛下の姿は如何にも威厳ありげな様子で…先程までの情けなさは見る影もなく…へカティア様へと言う。
「あぁ、そう言えばそうですね…ミルのプレゼントを用意しなくちゃ」
「俺もだ――じゃなくて、そう言う訳だから、第2と第5を派遣して王都周辺の危険な魔物や山賊の鎮圧をしていたんだがな…王都南方の森の中に〝竜種〟が棲み着いた…第5騎士団の何名かが重傷を負っている」
そして、国王陛下が紡いだ…〝一大事〟に俺とへカティアは国王へ視線を集める……〝竜種〟だと?…。
〝竜〟…それは魔物の中でも群を抜いて危険な魔物の種だ…巨大で、重厚な鱗に覆われ…空を飛び、火を吐き…その牙と爪は容易く金属の鎧を噛み砕き、切り刻む……冒険者ギルドの指標では〝A上位〜Sランク〟に分類される魔物だ。
「……何故ソレを早く言わないのです」
「――言いたかったが、伝言では何処かから漏れる可能性が有った…何せ竜だからな、兵士の中には功績目当てで入った者も多い…そうでなくとも金目当てに分不相応な敵に挑む輩は五万と居る…だから会って直接頼みたかったのだ」
「……」
「頼むへカティア…フロディを貸してくれないか」
そう言うと、国王陛下はへカティアへ頭を下げる…ソレを尻目に俺は思考を巡らせる。
(竜種か…珍しいな…竜は基本的に人気のない荒野か山嶺に棲む生態だった筈だ…繁殖のシーズンも春でまだまだ先だ…人里の様な自然の魔力が比較的少ない場所を好んで棲む種では無い筈だ)
……逸れか、何か別の要因か……ともあれ、詳しい話を聞かねば始まらない。
「…我が主」
「ッ…どうしたのフロディ?」
「国王陛下に伺いたい事が」
「……分かったわ、話してちょうだい」
へカティアの許可を貰い、俺は国王陛下に跪き…話を聞く。
「国王陛下…お話を伺いたく」
「――何だ、言ってみろ」
「竜が棲み着いたと言う森には、人が滅多に立ち入らないのでしょうか?」
「…いや、南方の森は定期的に伐採等で使われている…人の出入りは近隣の森に比べれば少ないが、滅多にと言う程人が行かない場所では無いな」
「…では、その竜は群れを成していた…或いは巣の形成をしていた…等は?」
「無いな…〝逸れ〟の個体だ」
「……その森には、魔力が満ちている…などは?」
「う〜ん……この辺りの森林はどこも魔力の巡りは大差ない筈だ」
「……成る程」
(〝地形的要因〟では無い…なら考えられるのは〝個体の性質〟か…〝外部的要因〟か)
竜は危険だが、飢えていなければある程度縄張りに侵入しても素通り出来る…。
(〝人喰い〟の個体か、それとも別の何かか…兎も角人が襲われたのは事実、無視は出来無いか)
「あの森は南方の交易路でもある…彼処を通る度に竜の脅威があるのでは、経済状況の悪化に繋がるだろう」
「……〝討伐〟…ですか」
「……」
国王の無言の肯定に…俺は考える…竜は強い、並大抵の相手では太刀打ち出来無い程に、俺以外ならば相手になるのはリズ殿――。
『グチャッ…!』
……気になる点が多い、それに、リズ殿は隊を預かる身で多忙だ…俺にはへカティア王女の護衛がある…だが。
「……我が主よ」
「………何かしら、〝私の騎士〟」
「…国王陛下からの依頼…〝竜の討伐〟…私が拝命しても宜しいでしょうか」
〝護衛対象〟からの承認が有れば…俺は動ける。
「……貴方は私の騎士でしょう」
「…」
へカティア王女の言葉に、俺は沈黙の肯定で答える。
「……貴方の強さを疑うつもりは有りません、ですが私は貴方に危険な戦場へ行って欲しく無いのです」
「……」
だがそれでも…俺の意思は変わらない。
「……それでも、行くつもりですか?」
「……はい」
リズ殿を竜退治へ行かせる位なら…俺が行った方が遥かにマシだ。
「………はぁぁ、分かりました、分かったわよ…もう」
「……ありがとう御座います」
俺の言葉に、へカティア王女が折れる…しかし。
「――では、条件を付けます」
へカティア王女はそう言うと、俺の前に立ち…俺へ言う。
「〝必ず私の元に帰ってくる事〟…そして、〝私をへカティアと呼ぶ事〟…ソレが条件です」
その言葉に、俺は迷う事なく承諾する。
「――承知致しました、〝へカティア〟」
『……!』
………
……………
…………………
――グルルルルッ――
其処は…人気の無い、森林の奥地…その最奥で…一匹の竜が唸り声を上げ…蹲っていた。
――『……!』――
そんな彼の元に、小さな白い光の玉が現れると…竜は唸りながら言葉を紡ぐ…。
「……〝精霊〟カ、何ヲシニ来タ……貴様ノ力デハ、我ヲ抑エル事ハ叶ワン…失セロ」
その声には、鋭い怒りが籠もっており…放たれた凄まじい魔力は…精霊を包み込む…そんな竜の言葉に対して、精霊は竜へ語り掛ける。
『……!』
「ッ…人間ノ騎士ガ?……アノ矮小ナ種ノ一匹ガ来タ所デ何ニナル……ダガ、ソウカ……〝人間〟ハ、我ヲ殺サント策ヲ弄シテ居ルノダナ?」
その言葉に竜はそう言い、クツクツと笑いながら、牙を剥いて言う。
「……ナラバ、賭ケルカ…我ヲ…〝殺セル者〟デアル事ヲ」
その瞳には、真っ赤に染まった〝狂気〟と…ドス黒い〝憎悪〟が籠り…ほんの少しの〝期待〟が…微かに、理性を無くした竜の瞳に宿っていた。
後書き補足!
魔物ランクはG〜Sまで有るぞ!
Gは最弱(スライムや角兎等など)、Sが最高(竜、龍、魔族、悪魔)だ!
冒険者ランクも同じ指標で決定されるが、指標のランクを手に入れられる条件があり、〝同ランクの魔物を討伐出来るだけの実力〟、が求められるぞ。




