追放者、就職
四本メェ…眠気のピークが来た、寝よう。
この作品の執筆欲が頗る高まっているので落ち着くまで投稿は続けようと思います…落ち着いたら週一で…二本同時毎日投稿は絶対やらん、地獄だし質も落ちる。
――私の旦那様♡――
頭の中で、その言葉が反復する…旦那、旦那と言ったのか…この女性は?…。
「……何か、勘違いをしていないか、貴女は」
「勘違いなものですか、その名、その白髪、その赤眼…全て、全て…私が〝見て〟、私が〝視た〟貴方で間違い無いわ♡」
そう言われても、それは辻褄が合わない…何せ俺は、この美しい娘とは初対面の筈だ…戦しか能のない男が、こんなにも美しい…高貴な…それも他国の王女と合う機会なぞ、あるはずが無い…まだ一目惚れと言われた方が納得が行く…いや、やはり名前と所属していた国を当てられた事の納得は行かないか。
「…ッ、その事は後に聞くとして…それよりも先ずは国王陛下の蘇生をしなければ、心臓の音が止まっている」
「あら、お父様ったらやっぱり死んだのね?…でも安心して、直ぐに戻ってくるわ」
俺の言葉に王女はそう言うと、国王の方を見やる…釣られて俺も見てみれば…いつの間にやら現れた白衣の集団、医者か…魔術師だろうか…が、現れて国王陛下に電撃を浴びせる。
「アビバババババッ!?!?!?――ゲホッ!?…イカン、あまりのショックに死んでた!」
「…生きてるのか、あの電撃を食らって……」
「お父様はノミの心臓の不死身ですから♡…昔はミルがお父様にお花を上げただけで死んだ事も有ったのよ♪」
そう言われても反応に困る、国王殿の心臓規格の小ささに驚けばいいのか、それとも電撃を食らって生きてる方か?…或いは、仮にも国王に容赦なく中位雷魔術を放った臣下達に驚くべきなのか?
「ゲフッ…それはそうとへカティア、俺は断じて認めんぞッ、此奴をお前の旦那にする等「お父様嫌い」あふんッ!?」
――バリバリバリッ――
「――ブフッ…い、幾らお前に嫌われようと…こ、こればかりは認められんぞ――でもお願いパパ嫌いにならないで俺死んじゃう…!」
「もう、そうよへカティア…あんまりパパをイジメないでちょうだい」
「はーい♪」
……本当に王族なのか、この方達は?……俺の知る王侯貴族達とはまるで正反対だが…。
「第一お前の話では、此奴はあの悪名高い〝リノベルト北方王国〟からの放浪者なのだろうッ…怪しい事この上ないッ、諜報員、或いは暗殺者やも知れん!」
「――失礼を承知ながら、私も国王陛下の意見に賛成で御座います、へカティア第一王女殿下…確かに彼は礼儀正しい御人ですが…〝リノベルト〟の出となれば、昨今の情勢を鑑みても懸念は拭えません(良いぞリズ!)」
と、そんな風に考えていると国王陛下とリズ騎士団殿がこの王女様…へカティア殿へとそう反論する…俺もソレには同意見だ。
「――あら、ならば彼がリノベルトの密偵で無い事を証明すれば…〝私の旦那様〟と認めてくれるのお父様?」
「うむ!――いやちょっと待て、ソレはまだ認めんが!――少なくとも信用に足る人物だと証明出来たのなら、我が国に住む事を認めよう!」
そんな俺達の思いに対して、へカティア殿は国王陛下へそう話を持ち掛ける…すると国王陛下はそう言い、へカティア殿の要求を承認する…すると、へカティア殿はニヤリと悪い笑みを浮かべて、俺の腕に抱き着き、投げ放つ。
「そう…だったら簡単ね♪――だって彼こそ、〝リノベルトの白龍〟その人なんだから♪」
或いは…この場この瞬間にあっては決して放り投げてはいけない、地雷を。
――ゾッ!――
その瞬間俺の身体を貫く様な殺気が発せられ…俺がそちらに視線をやる…其処には、リズ騎士団長殿が抜剣し、俺へ剣を振り被っていた…。
(ッ不味い…どうするべきだ…へカティア殿が居る手前、乱暴には出来ない、かと言って抗戦してはリノベルトの密偵と言う印象を強めるし、リズ殿に怪我を負わせかねない…受けるか――)
剣の一閃から、直撃までの一瞬で思考を巡らせる…幾つもの審議の結果、最も安全で、最も円満な解法を見つけ、実行に移そうとする…しかし、その時。
――ギュッ――
「ッ!?」
「――♪」
へカティア殿と目が合った…そして、その目はまるで…俺へ語り掛けるように揺れ…その〝意思〟を、言葉の無い〝声〟で俺へ告げる。
――〝やって♪〟――
ソレが意味する所はつまり、〝円満とは程遠い選択肢〟だった…当然、本来ソレを選ぶのは悪手だと、俺は分かっていた…分かっていたと言うのに…。
――ジッ――
何故か…その瞳の意思に逆らう事は出来なかった。
○●○●○●
(切った!)
ソレは、一瞬先にある未来の光景だった…まだ辿り着かない未来への、確かな確信…その確信こそ、最も致命的な油断だと、誰彼は言うだろう…しかし。
――ヒュンッ!――
私は…自身の剣の腕がこの国に於いて片手で数える程の腕前だと自負している…そしてそれはきっと間違いの無い事実だと思っている。
幼少から騎士を志し、剣の腕を磨き…幸運にも剣才に恵まれた私を…神童と師父は言った…そして、騎士となってからは多くの命を果たし、戦に臨み、少なく無い勝利を手にしてきた。
経験は十二分に積み、それでも尚飽く事無く剣の腕を磨き続けていたのだ…そう、だから――。
――…――
この一撃は、〝リノベルトの白龍〟にも届き得ると…そう考えていた。
その、結果は――散々たるモノであった。
――バキンッ!――
振り抜いたと同時に…剣が砕け散り…私を見据える眼光と目が合った…。
――ギラッ!――
その目を一目見た瞬間溢れ出したのは…際限の無い〝死の恐怖〟幾度と死線を越えた己が、幾度と経験積んだと思い上がっていた自身を咎めるように、溢れ出す〝死のイメージ〟…その数は数えるに百を優に越え、そのあまりの実力の差に…私は膝を突き…言葉を絞り出す。
「こ…降参だ……殺さないでくれ…」
そう呟くと、私を包んでいた死の気配は消え…私の意識は深い微睡みに落ちていった。
●○●○●○
「……すまない」
「大丈夫よフロディ、リズはこの程度で折れる様な子じゃないわ…それに最近、あの子も刺激が無かったみたいだし、良い機会よ♪」
グラリと頭を地面へ激突させようとしていたリズ殿の身体を支え…静かに横に寝かせる…ついやり過ぎた…コレでは、密偵の証明以前の問題だ。
(このまま暗殺に来たリノベルトの兵と見られても可笑しくない…かくなる上は)
――ザッ――
「申し訳無い、国王陛下、王妃殿下…俺は…いや、私は確かに〝リノベルトの白龍〟と忌まわれた男だ…だが、誓って、リノベルトの兵では無い…証明の為にと望むなら、この両の腕、両の足を切落としてもらって構わない……イルズの国境にも立ち入らない……ただ、害するつもりは無かったと、それだけは理解して欲しい」
跪き、そう弁明する…望むならばこの手足を引き千切り、無害を証明してみせよう…それでも駄目ならば…その時は…。
「――いや…すげぇなオイ…マジか、リズが一瞬で降参したぞ…」
「アナタ?…驚き過ぎて素が出てますよ?」
俺の頭上で2つの声が響く…その声は、この状況にそぐわない程に、軽々しいものだった。
「――〝リノベルトの白龍〟か、半信半疑たったが、本当だったとは…」
「それに…本当にリノベルトの密偵じゃないみたいね?」
「だからそう言ってるでしょう、お父様、お母様」
王族の言葉を聞き、何とか誤解は解けたのかと少し安堵する…だが、最後まで油断してはならない…少なくともまだ彼等の警戒は解けていないハズ――。
「ふむ……良し決めた!――お前今日からウチの騎士になれ、そんでへカティアの護衛にしよう!」
「……今、何と?」
思わずそう聞き返すが、やはり聞き間違えや気の所為の類では無いらしい。
「だから護衛だよ、へカティアの…丁度、そろそろへカティアにも護衛を付けたくてな…コイツ、危ないから護衛の一人でも付けろと何時も言ってるんだが、その度に護衛や俺等の目を掻い潜って城を抜け出したり何なりしてなぁ…頭を捻ってたんだわ……だから、お前、ウチに入ってへカティアの護衛に就け…だがまだへカティアの旦那とは認めん、絶対認めんッ!!!」
「やった♪――パパ大好き♡」
「グハッ!?」
そうして、俺の意思を捨て置いた決定は時折国王の死を挟みつつあれよあれよと進んで行き…俺は、あっという間にイルズの騎士として、再就職に至ったのだった。
国王は死に、何度でも蘇るさ!…即死系不死身キャラって言えば何が居るかな…あんま思い浮かばんね。




