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鼻歌

夜自室で零はふと小さい頃紗月とよく口ずさんでいたメロディを思い出そうとした。


 二人で下校しながら意味も分からず歌っていたどこかのアニメの曲だったと思う。


 メロディの断片は確かに頭のどこかにある気がした。


 なのにいざ声に出そうとすると音が繋がらない。


 ――おかしいな。


 次の日教室で零は紗月に聞いてみた。


「なあ昔よく二人で歌ってた歌あったよな。何だっけあれ。」


 紗月は少し首をかしげた。


「……そうだったっけ。」


「覚えてないのか。」


「うんごめん。」


 紗月は申し訳なさそうに笑った。


 零はそれ以上追及できなかった。ただ小さな苛立ちにも似たもどかしさが胸に残った。


 自分の記憶も紗月の記憶も同じようにその部分だけが欠けていることにまだ気づいていなかった。


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