教育番組
詩織はその日も近藤と顔を合わせました。
「バ……」
バラエティーを望む彼女がそう言いかけると、近藤の顔が般若のようになりました。
近藤はバラエティー番組を下に見てなどいません。ただ、はっきりとではないものの、詩織が考えていることを察し、「近藤=おかしな人間=バラエティー番組」という構図がお気に召さないのでした。
その近藤の気持ちを詩織のほうも察知し、もっと用心深く事を進めるべきだったと後悔しましたが、とにかくこれ以上は機嫌を損ねず、バラエティーをやる気になるようにと、近藤が今回用意してきた動画を笑顔で観始めました。
それは、近藤が、可愛らしい着ぐるみのアシスタントを相手に、工作をするといった内容でした。どうやら教育番組のようです。
しかし、近藤の作るものはどれも見すぼらしく、工作がド下手なのでした。
とはいえ、生放送ではなく、編集できるのですから、もっとやりようはあるはずです。
「……これはどういうこと?」
近藤を気持ちよくさせる気でいた詩織でしたけれども、思わずそう口にしてしまいました。
「フッ。可愛いだろう、私」
え? なに。教育番組とかこつけて、自分の可愛らしさを見せようとしたってことなの?
もはや詩織に発する言葉など何一つありませんでした。
とにかくこの時間をやり過ごすことに決めましたが、なんと動画は三時間も続いたのです。
一度に三時間もやる教育番組があるかよ! テレビ知ってんだろうが!
しかもVTRの近藤は、工作がどうしようもないのにとどまらず、はにかんだり、駄々をこねたり、「いけねっ」と舌を出したりと、可愛い振る舞いを惜しげもなく披露し、それを観る今の近藤も、微笑ましいなあと思っている様子で、やたらと清々しい表情なのです。
詩織ははらわたが煮えくり返りましたけれども、どうにか理性を保って、その、生きてきた何十年かの人生で最高に無駄な時間を味わったのでした。




