スポーツ番組
詩織は、鳴った電話の音にドキッとしました。
「近藤だ。あいつがまた連絡をよこしたのだ」と。
しかし、かかってきた番号は別の男性のものでした。その彼も詩織と学校が一緒だったのですが、同じマスコミ業界で働いていて、現在もしょっちゅう会ってやりとりをする仲なのです。
電話に出て、用件を尋ねると、やはり仕事絡みのことで、ほっとしました。
ところが、しばらくして話を終えると、向こうがこのように口にしたのです。
「そういえば、きみ、サーフィンを始めたの?」
「え? サーフィン? ううん、始めてないけど、どうして?」
「いや、休みの日に近藤から、サーフィンをするから付き合ってくれって頼まれちゃって、そんな遊ぶ関係じゃないから、なんで俺? って思って訊いたら、『私がサーフィンする姿を撮影してくれ。仕事柄そういうの得意だろ』って言われてさ。まあ、たまになら近藤と関わるのも面白いから了解したら、あいつがサーフィンをかっこよくやる、プロモーションビデオみたいな映像を要求されたんだよ。で、目的を尋ねたら、『佐伯さんのため』とだけで、詳しくは教えてくれなかったんだけれど、どういうことなの?」
詩織は愕然としました。それは間違いなく番組用のものでしょう。
「あ、ありがとう。ちょっと、今、めまいがしたから、また今度説明するよ……」
「え? 大丈夫かい?」
「う、うん、なんとか。じゃあね……」
それからしばらくして、彼女のもとに近藤からまたDVDのディスクが送られてきました。添えられた手紙にはこう書かれてありました。
「スポーツ番組」
なんでおめえのかっこつけてサーフィンをやる姿がスポーツ番組なんだよ!
一応観てみると、本当にこれでもかというくらいにかっこつけたプロモーションビデオのような映像で、近藤が一人でずっとサーフィンをしていました。ただ、言わずもがなで、肝心のサーフィンはド下手なのです。
詩織は自宅で取れるだけ睡眠を取って、なんとか生き長らえたのでした。




