表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
6/8

第六話「薔薇のようなあなたの・上」

 真上から見ると、華麗な薔薇の花達が、美しさを競っているように見えた。

 舞踏会のドレスとなると「軽やかで裾の広がるシルエット」が好まれるようだ。

 二階のシャンデリア横から、宴の席を見下ろしたエミルは、注文の品であるカーテンの設置を終え、富豪の屋敷を去ろうとしていた。

「エミル。君も一杯いかがかね」と、健康的な富豪はワイングラスを差し出してくる。

「いえ。仕事がありますので」と、断った。

「少しはくつろいでも良いだろう?」と、エミルと年の近い青年が声をかけてくる。「狭い店に籠ってたら、人生が退屈になる」

 エミルはスッと息を吸うと、考えてから答えた。

「様々な商品に触れる事が、私の中での『人生』になっているんです」

 青年は表情を硬くし、「あくまで、職人の生き方を選ぶのか?」と、問い詰めてくる。

「騎士の称号は、兄が継ぎましたよ」と、差し障り無く返すと、エミルは宴を邪魔しないように、裏口へ向かった。

 その背を見送りながら、「分からず屋め」と、青年は小さく罵った。


 出て行こうとするエミルに、侍女が声をかけた。

「エミル様。これを」と言って、油紙の包みを渡してくる。「材料の残りで作ったんです。ベリーはお好きだったでしょ?」と、侍女は笑みを向けてくる。

 その材料を余らせるために、色々と「工夫」をしたのだろう。

「ありがとう、イルザ。髪飾りを新調したくなったら、教えて。そのリボンも、大分お古でしょ?」

 侍女は、髪を纏めている飾り紐に触れて、少し顔を赤らめた。


 宴が済んでから、富豪の息子アーデルベルトは、深酒に溺れていた。

 ワインの瓶をひったくって、「兄様。もう、おやめになって」と、妹が声をかけた。

 青年は眉間に皴を作りながら、椅子の肘掛けに寄りかかり、目を閉じる。

「あいつは、剣術に興味を無くしてから、腑抜けに成った」

「エミル様のこと?」

「あいつ以外、フォン・アルマを捨てた者など、居るものか。家も剣も捨てて、誇りすら失った」

 そう青年が笑うと、妹は「いいえ」と反発する。

「エミル様は誇りを失ったりしていません」

 青年は妹の反発に、苦い顔をする。

「布や糸と戯れて、闘う事を忘れた」

「いいえ」と、妹は譲らない。

「フローラ。お前、エミルに惚れてるのか?」

 妹は首を横に振る。

「私は、あの方が聡明な方だと知っているだけです」

 青年は黙り込んだ。アルコールの起こす酔いと頭痛が、同時に襲ってくる。

 それから、「明日、エミルの店に行く」と、告げた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ