第三十話「アルフォンスの行く末」
閉め切られているはずの礼拝堂には、十数名の人物が待っていた。
神父は彼等の間を進み、閉ざしてあった礼拝堂の鍵を開ける。
外を確認し、エミルを屋内に招いた。
「神父。その方は?」と、青年が声をかけてくる。
「アルフォンスの秘密を知る方です」と、神父は言い、傍らのエミルに声をかける。「お名前は?」
「繕い屋のエミルと言います。どうぞ、よろしく」
そう言って礼をすると、一団はざわめく事も無く押し黙った。
神父はその沈黙を察し、述べる。
「そうです。あなた達が、王室を狙う事件を起こす前に、頼りに行った『力ある者』の一人です」
まだ少年に見える人物が、神父に反発する。
「その人は、結局見抜けなかった」
神父は穏やかな面持ちのまま、静かに諭す。
「いいえ。彼は見抜きました。今こうして、この場を突き止められたのですから」
反発した少年は、口惜しそうに黙った。
神父は問う。
「エミル。貴方は、先ほど『アルフォンスの行く末を知っている』と言いましたね?」
「はい。確かに」
「彼等には、どのような行く末が示されていますか?」
「私は、あなた達が望んでいた、告白の場を用意します。そこで何を語るかは、あなた達に任せましょう。私の友人は、あなた達の名や、年齢、容姿、出身、それらを明かさずに、あなた達の語る言葉だけを、世に知らせる事が出来ます」
ようやく、集団の中で、静かに囁き合う声が聞こえた。
彼等が、提示された条件をゆっくりと吟味できるように、エミルは沈黙する。
やがて、一人の男性が、起立した。黒いコートを着て、帽子を被っている、老齢の男性だった。
「アルフォンスの長として、貴方の提案を受け入れましょう。しかし、私の名前と、年齢、出身、それらはきっぱりと打ち明けます。そうでなくては、告白の信憑性に欠ける」
「ですが、それでは……」
言いかけたエミルを片手で遮り、男性は言葉を続ける。
「良いのです。もし私が断頭台に運ばれる事になっても、後任は居ますから。さぁ、エミル。私を、貴方の御友人の下に、招いて下さい」
エミルは静かに目を瞬き、「覚悟を、お持ちなのですね?」と問い質した。
「ええ」と、男性は笑顔で応じ、神父と目を合わせた。
神父は、ゆっくりと頷く。
「後の事は、ご心配なく」
男性は帽子を取って敬礼すると、「皆を頼みました」と、別れの挨拶を済ませた。
後日、アルフォンスの長の言葉は、フリードリヒが監修を務める伝聞紙に載り、一際世を騒がせる事になった。




