第二十四話「金色の林檎 中編」
マリーナとエミルは、生前のドローテの屋敷に足を運んだ。
噴水の鍵穴に鍵を差し込む。水が引いて仕掛けが動き、地下への階段が現れた。
二人は、階段を降りる。
ライトで照らすと、大量の金貨と金塊には、変化はない様だ。
「異常は無いわね」と、マリーナが言う。「本当に、そのベネディクタと言う人は、此処に来ようとしているの?」
「それは不明です」と、エミルは答えた。「ここに来れば、何かヒントがあると思ったのですが」
一頻り地下室を見回すと、マリーナが発見した。
「何かしら。足跡?」
エミルは地面に屈みこむ。
「大きさからして、だいぶ恰幅の良い男性ですね」
その時、階段を振り返ったマリーナがハッと息を飲んだ。
ガコンと、仕掛けの起動する音がして、地下室へ続いていた階段の扉が閉ざされた。
「何なの?」と、マリーナは囁いた。
「閉じ込められた事は確かです」と、エミルは、完全に扉が閉ざされているのを確認した。「酸素が無くならないうちに、外に出ないと」
「別の場所から出られそう?」
「出口を探しに行きましょう」
二人は長い廊下のようになっている地下室を、奥の方へ進んだ。
ライトを頼りに進んで行くと、途中で身の丈ほどの像を幾つか見つけた。
獅子と、虎と、猫と、蛇の像がある。
どの像も陶器で出来ており、瞳が空洞に成っている。
猫の像の瞳の片方には丸い金の塊が詰められており、その片目が無い。
「林檎」マリーナが呟く。「この猫の瞳、林檎の形だわ」
「林檎……」と、エミルも復唱し、猫の像の側に近づくと、像の肩をポンポンと叩いた。
再燃された記憶は、猫の像の両眼が揃っているシーンだった。誰かがその片目を取り外す。
それと同時に、地下室の扉が閉まった。
金色の林檎は投げ出され、何処かに転がって行った。
今まで踏み込んでいなかった場所まで、地下室を奥に進むと、金塊の陰に、誰かいる。
「誰だ?」と、エミルが声をかけると、その影はびくっと身を跳ねさせた。
ライトがその人物を照らす。
黒衣を着た太った修道士だった。
その傍らに、袋に入った大粒の丸い宝石が、六つある。
「ベルグ院長」と、呆気にとられたようにマリーナが呼んだ。「こんな所で、何を?」
修道院の院長は、「私は」と言って、声を詰まらせた。「私は、頼まれただけなんだ」
「何をです?」と、エミルは問い詰める。
「献金が欲しければ、像の瞳に成っている、宝石を持って来いと」
どうやら、この人物が防犯用の仕掛けを起動させたらしい。




