↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
23/43

第二十三話「金色の林檎 上編」

 二階のリビングのテーブルの上に、見慣れないものがあった。

 小さく切られた羊皮紙のメモだ。

「まるで猫の子のような林檎。綺麗な丸い大きな林檎。真っ赤な色はしていない。

 金の林檎は子猫の瞳」と書かれている。

 何処かで見た覚えのある字だが、何処で見たのかまでは思い出せなかった。


 後日、以前繕い屋を訪れた事のある、ベネディクタと言う「賢い女性」が、再び現れた。

「今日は、これをお願いしたいの」と、ベネディクタは布を縫い合わせて作った、小物入れを差し出してきた。

「普段は、中に油紙を敷いて、キャンディー入れにしていたの」

 様子を見てみると、小袋の口を縛るための飾り紐の片側が外れ、何時も手が触れていたらしい小袋の口がほつれていた。

「今回は、刺繍をする必要は?」と聞いてみる。

「無いわ。ほつれを直して、紐を通してちょうだい」と、依頼主は言う。

「承知しました」と答え、書類にサインを求めた。


 ベネディクタのサインを見てから、エミルは「先日見た羊皮紙のメモの文字」を思い出した。

 羊皮紙を持ってきて書類の文字と押しなべて見ると、文字の癖や綴りの遊びがそっくりだ。

 この羊皮紙のメモの言葉は、一体何を示しているのだろう。


 エミルは、たまたま店に来たファルベに、抱えている疑問を打ち明けた。

「金の林檎」と、ファルベは復唱する。「伝説の中では、『金色の林檎』って、不和の象徴だけど」

「正確には、どんな伝説なの?」と、エミル。

「えーっと。神様の宴に呼ばれなかったエリスって言う女神が、『この中で最も美しい女神に』って言って、宴の中に金色の林檎を投げたのね。

 そしたら、美の女神のアプロディーテと、戦いの女神のアテーナと、ゼウスの妻のヘーラーが林檎を取り合ったの。

 その女神達の不和から、人間の世界で戦争が起こったんだって」

 それを聞いて、エミルは「そうなのか」と呟いたが、謎が解けた表情には成らなかった。


 その晩。眠っていたエミルの耳元で、囁き声が聞こえた。

「金の林檎を飾らねば。金の林檎を飾らねば。お前は鍵を持って居る。金の林檎を飾らねば」

 目を開けると、囁いていた者は闇の中に溶けるように消えた。


 エミルが持って居る「鍵」で思い当たるのは、ドローテの姪から預かっている、秘密の地下室への鍵だ。

 あの地下室には、部屋全体を埋めるほどの金貨や金塊が収められている。

 ベネディクタは、あの地下の「お宝」を狙っているのだろうか。

 悩んでいても、疑問は晴れなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。