第十五話「ライムライト・ステージ 中編」
その人物は、生前のドローテが住んでいた屋敷を、荒らし回っていた。
書斎の棚の中身をぶちまけ、「隠し棚」は無いかと手探る。
一線の光が、悪行を容赦なく照らし出した。
「カサンドラ」と、マリーナが呼んだ。「あなただったの?」
棚の中身をぶちまけていた――正確には彼――は、手を止めて服の埃を払うと、「何のこと?」と言ってきた。
「ドローテの隠し財産を探して居たのでしょう?」
カサンドラは少し目をそらし、短く息をついた。
「それは認めるわ。けど、何処にも見当たらなくて、困ってたの」
「この屋敷は、ドローテの姪の所有になってるわ。勝手に入り込んだら、罪に問われるわよ」
「あんた達だって、勝手に入り込んでるじゃない」
ずかずかと近づいて来るカサンドラの顔に、エミルは光を当てる。
カサンドラは眩しさで怯んだ。
エミルは言う。
「私達は、屋敷の持主から侵入の許可を得ています。ドローテの遺言を調べるために」
「ライトを引っ込めなさい!」と、カサンドラは命令した。
「そのナイフを置いてくれるなら」と、エミルは条件を付ける。
カサンドラは、苦々しげに表情を歪めた。
「なんでよ?」
彼は言う。
「なんで、私が、引かなきゃならないの?」
カサンドラはストラップ付のヒールの足を蹴り上げた。
彼の足元に落ちていた厚い本が、ライトを目がけて飛んでくる。
本はエミルの手に当たり、ライトの光がぶれた。
ナイフの切っ先がエミルの喉を狙う。
「危ない!」と、マリーナの声が飛んだ。同時に、テーブルの上に在った大きな陶器の壺が、カサンドラに向かって投げつけられた。
壺は、カサンドラの側頭部を正確に叩いた。衝撃で、その首は真横に倒れる。そしてそのまま、彼は意識を失った。
「ありがとうございます」と、エミルはマリーナに礼を言う。
マリーナは少し恥ずかしそうに、「この事は、内緒にしてね」と、笑んだ。
カサンドラから武器を奪い、縛り上げた後、エミル達はライトを燈しながら廊下を歩いた。
「あったわ」と、マリーナが言う。「ほら、壁に」
そこには、山羊の頭部の剝製が、累々と飾られている。
出入り口から数えて七番目の剝製を調べてみると、額縁の裏にスイッチがあった。
「押してみる」と、マリーナ。
実際にスイッチを入れると、その隣にあった振り子時計が、ボーンと音を鳴らした。
ふわりと、振り子の扉が開かれる。
そこには小さな木箱が収まっていた。中には、鍵が一つと、メモが一枚。
謎解きはまだ続くらしい。




