第十四話「ライムライト・ステージ 上編」
羽飾りの豪華な舞台衣装を直していた時、エミルはそれを偶然見つけた。
衣装のほつれた布地の間に仕舞われた、一枚のメモ用紙だ。
丁寧に四つに折り畳まれている。
何が書いてあるのか、少し興味が湧いたが、衣装を直すほうが先だと、作業の手を進めた。
その仕事を持ち込んだのは、酒場でショーを見せる仕事をしている、ドラァグ・クイーンだった。
「先日、私のお友達が亡くなってね。年の離れたクイーンだったんだけど、若い頃は相当売れっ子だったみたいなの。これは、その人が使っていた衣装。大分あちこち傷んでるから、綺麗にしてあげて」
非常にお淑やかなイントネーションで話す、「大輪の花」と言うより、「小さな野の花」と言う風な人物だった。
声が弱弱しく、今にも消え入りそうだったから、そう思ったのかもしれない。
依頼書には、マリーナ・フリューアと女性名が書かれていた。
繕いが終わってから、エミルは先のメモと衣装を作業台に置き、服の肩を叩いた。
まず、変化はメモ用紙の方に現れた。折り目が正され、文字が一つ一つ消えて行き、幾つかの単語だけが残る。
それから再び単語の周りに文字が現れ、四つに折り畳まれた。
衣装の脇腹にあたる一ヶ所の糸がほどけて行き、腹部の、布を二重にしてある部分に、メモ用紙を隠した。それから、糸が何かで縫われるように元に戻る。
「術」は其処で切れた。
元の持主が、わざわざ服の糸を解いて隠すほどのメモと言う事は、随分と重要な内容なのだろう。
エミルは、衣装の脇腹の糸を解くと、再びメモを取り出した。
商品を受け取りに来るマリーナに、事情を話す事にした。
翌日。メモを見せられたマリーナは、「確かに、ドローテの字だわ」と述べた。
「でも、あの人は詩を書くような人じゃなかったと思うの。何かのお守りにしてたんだとしたら、もしかしておまじないの言葉なのかもしれない」
「そうですか……」と、エミルは考え込む。
昨日見た、衣服の記憶を思い出した。
「七番目の山羊の子は。時計に隠れて助かった」
マリーナは目を瞬かせる。エミルは説明した。
「その文字の羅列の一部に成っている単語を組み合わせると、そう言う言葉が記されているんです」
「どう言う意味なのかしら?」
「それは分かりません。ですが、ドローテさんが衣装に隠すほど『大切にしていた言葉』なのでしょう」
「そう……」と、歯切れ悪くマリーナは返す。それから、「実はね」と語り始めた。
ドローテが何故亡くなったのか。




