第1話 汚い世界の汚い街
「対した仕事もしてねーくせにまた暦通り休みか。
は〜〜、いい身分だなオイ。」
今日の仕事終わりに言われたセリフを帰宅途中の電車の中で思い出した。
それでも、機嫌が悪くないのは明日から2連休だからかあるいは昼食後に飲んだ薬が効いてるせいなのか。
多分、後者だろうなと何となく思う。
なぜ機嫌が悪くないと思っているのかと言うと、今日はくだらないSNSのコメント欄を見ているのではなく家元の落語をイヤフォンを使って聴いているからだ。
そのうちに駅に着いた。
床に置いておいてあったリュックサックを背負い電車から降りる。降りた目の前にはボートレースの看板がいつも通り掲示されていた。
「場外馬券場がある駅にボートレースの看板って、なんか悪意あるよな。」
誰にも求められていない意見を、誰にも聞こえない小さな声でボソリと言った。
まーどーでもいいやと思い頭をぼりぼりと掻きながら改札口へと向かう、改札を出ると盆をひっくり返したような大雨が降っていた。
辺りは雨雲に覆われて暗くなっている。しかし、街のあちらこちらにある飲食店やパチンコ屋、所々にある風俗店、ストリップ劇場などから光が漏れているので真っ暗というわけではない。
「汚い街だな」
また誰にも求められていない意見をボソリと言う。
以前パチンコ屋からもらってきた小さな傘をさして自宅の方に向かう。帰り道の途中には何箇所かゴミ捨て場があり、カラスが荒らしたのかゴミが散乱している。
《汚い街…いや、汚い世界だ》
しかし皮肉なもので、ここから10分もかからない所には日本有数の観光地になっている街がある。
290m以上ある超高層ビル、それがあっち側の街のシンボルになっている。270mあたりには展望台があるらしい。そのほかにも遊園地、映画館、美術館、古い倉庫を整備して造った商業施設などそれらの観光名所を年間8000万人以上の人が観光しに来ているらしい。
でも、それでも僕はあっち側の街ではなくこっち側の街の方が落ち着く。
暗闇の中輝くネオンの看板、どこの国の人が経営してるかよくわからない飲み屋、親不孝者どもが行き交う風俗通り、文面にすると最低だと感じるけど僕にはとても心地が良い。
駅から歩いて6分ほどで自宅に着いた。
築40年近いボロアパート1Kで家賃は4万円もちろん風呂とトイレは一緒である。駅から近いし、坂もないから別に不満はないがもうちょっと家賃が安かなったらとても助かる。
「寒いな」
またボソリと呟いてアパートの外部階段を上がっていく。上がった先にはいつも通り部屋が4つ並んでいて手前から2番目部屋が僕の部屋だ。
でも、いつもはそこにはないものがそこにあたった。
黒?ゴミ?いや違う。
そこには黒いリクルートスーツを着た女の子が座っていた。
捨て猫のようにずぶ濡れになって座っていた。
だれ??
意味がわからなかった、なんだこれ?
でもその子は僕の部屋の前で座っている。
訳がわからないが、なんとなく………いや、とりあえず女の子に…彼女に声をかける事にした。
「あの、そこ僕の部屋なんですけど何かご用意ですか?」
声をかけたら彼女はビクリと体をこわばらせた、顔を俯きその後こちらに顔を向けた。その顔を見て僕は思った
《汚いこの世界で唯一美しいもの》
そのように僕は思った。
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