フェイズ7「霧の攻防」
ミドルの戦闘シーンです。
調査に乗り出した一向は山を越え無事アストラル共和国領の境へとやってきた。
山道は険しく異世界人であるカレンが途中根をあげてしまったがトキアメが彼女を背負い、彼女もまた他者を癒す術を持っていたため全員戦力をさして削る事無く進む事が出来た。
そして山を越えた一行の目の前に現れたものは――――――――霧、であった。
それも自然現象として発生したものでない事は一目で看破できた。
あまりにも境界がハッキリとしているのである、アストラル共和国方面を中心に円で取り囲むように霧が発生し白い巨大な球体が目の前にそびえ立っている様に思えた。
明らかに異常だ、一向はそれまでより一掃警戒を強める。
「・・・・行くしかない、な」
「そのようですね」
「これも神の試練なれば!!」
トキアメの言葉にシャドウ丸も肯定する。グノバの言葉は皆既にスルーする技術を身につけていた。
恐る恐る慎重に霧の中へと手を入れる――――――特に抵抗はない。
そのまま体を沈めていくが通常の霧と特に違いはなかった。
ならば問題は霧の内部にあるのだろう、と考え一行は奥へと進んでいく。
◇◆◇◆◇
霧の中に入り一刻ほど経過するが霧が視界を塞ぎ足元の草原以外何も見つからない。
彼等は目的地への指針だけは失わないよう方角を逐一確認し、地図を頼りにゆっくりとだが着実に首都ベクターへと歩みを進めていた。
シャドウ丸は視界の変化も起こらない現在の状況に、そろそろ主人たる神速丸が不満を口にするのではないかと思案しかけたその時―――― 僅かに空気がざわついた。
シャドウ丸の他にトキアメも変化に気付いたのであろう、鋭い眉を細めいつでも臨戦態勢に移せるよう手に持つ斧に僅かな力がこめられているのがわかる。
すると突如、目の前の白いもやの中から二つの人影が突っ込んでくる。
牽制による攻撃なので難なくかわし距離を取る事が出来たがその一撃は単なる山賊のそれではない。恐らくまともに喰らってしまえば一発で瀕死、二発もらった時点で死は免れないだろう。
受けた攻撃を分析しつつシャドウ丸が顔を上げたのと同じく、相手の手首辺りをしげしげと眺めていた襲撃者達は歓喜の声を上げていた。
先程の鋭い攻撃はそこらの賊ではない、一体何処に組する勢力のものか――――――
「ヒャーーッハッハッハァ、身包みおいてけやぁ!」
「よっしゃイケる!こいつらならイケるぜぇ!!!」
賊ではなかった。チンピラだった
その手には大きな斧を持ち殺傷力はなさそうな棘の付いた衣服を着用している。そして目を保護する為のサングラス、この霧の中では視界が狭まるだけにしか思えない。
しかし何より異様なのは、その小物さを象徴するようなモヒカンである。この様な者達が先程のような鋭い攻撃を仕掛けたと言うのか、シャドウ丸は現実と想定の敵のギャップに少し混乱する。
「なんじゃいこの雑魚っぽい見た目の奴は?そろそろ眠いんじゃがー」
「フム、見た通り雑魚そのものですな。先程我々の手首を凝視していたのが気になりますが」
「油断してはいけませんよ・・・・見た目の通りの性能な筈ないんですから」
無言で観察するトキアメを除く皆が口々に言葉を出す。
転生者とされるカレンは少々過剰な警戒を、グノバは現在を見据えつつ彼等の行動に疑問を、神速丸は相手を舐めきった油断とも取れる感想を述べていた。
「(クッ、なるほど――――姑息な手を使う)」
シャドウ丸は敵の狙いを読みきった。
相手は見るからの雑魚だ、だがその錬度が油断ならぬ相手である事は既にシャドウ丸は見切っている。
つまり相手はその姿でこちらの油断を誘っているのだ。現にグノバは敵の戦力よりも彼等の不可解な行動に思考を巡らせている。
確かにその点は考察する必要があるが片手間で挑んではこの襲撃者達に対しては甚大な被害が出てしまう。今は戦闘そのものに集中するべきなのだ。
だが口で警戒を促すだけでその油断を払拭させる事は難しい、特にシャドウ丸の主である神速丸はその手の事を口にすると「フリ」だと勘違いする危険性もある。
「(せめて神速丸さえ真面目に戦って頂ければ――――そうか!)」
その時、シャドウ丸に衝撃が走った。
神速丸は雑魚相手に油断する事は多々あるが、手練れを相手に手を抜く等という愚は犯さない。
ならば何故この状況下において真面目に戦わないのか、まさか眠いから適当に流しているだけという事などはありえない。
つまり、これは神速丸の自分に対するメッセージなのだ。
恐らくそのメッセージとは・・・・
「オイオイ、来ないのか?もう戦闘は始まってんぞ?」
「ならこっちから――――何だテメェは?!」
「我が主の命だ・・・貴様など私一人で十分」
シャドウ丸は一瞬で敵の懐に潜り込んだ、その動きには鈍重な襲撃者では対応できない。
そして次の瞬間、凄まじい光がシャドウ丸から発し彼のいる場所を包み込む。
『バーストブレイク』
長き時をかけ溜め込んだ魔力を圧縮し周囲を灰燼と化すスキル、一度の冒険で一回使用できれば御の字といもいえる奥義を、シャドウ丸は今ここで解放したのであった―――




