フェイズ5「事件発生」
ここまででPC1・PC2・PC3の導入は終了です。
シャドウ丸と神速丸が登城した数日後、二人は再び王宮へと向かっていた。
あの日から二人は足しげく王宮へと通い現国王イザード王と謁見を繰り返していた。
隣国アストラル共和国の音信不通――――。
それは建国以降一度も起こりえなかった事態だった。あの国は攻め入る事も攻められる事も困難で政治的に見れば『無価値な国』だった。
そんな国が突如連絡を絶った。万一何かしらの干渉によるものだとすれば、間違いなくその牙は我がイザード国へも向く事になる。緊張が高まるのも当然であった。
「・・まだ騎士団からの連絡はないのでしょうか」
「・・・・・・ウム」
シャドウ丸が重々しく口を開く。
調査に向かった者が誰一人戻らない、そんな現状を打破する為イザード王は王国最強戦力であるアスカロン聖騎士団の派遣を行ったのだ。登城の際、入れ違いになった彼らを見送ったシャドウ丸は、数日経過するも何一つ連絡を寄越さない現状に不安を覚えていた。
いくら山越えが必要な道程だとしても聖騎士団の錬度であれば半日も経たず共和国内へと至れる筈。数日もかからずに帰還できると考えていた。それが未だ連絡ひとつ送ってこない――――。イザード王も同じ考えに至っているのかその表情は重かった。
「失礼致します、陛下!件の異世界人をお連れ致しました」
静寂に包まれた宮殿に兵士の声が響く、恐らく状況を察して努めて大きくアピールしてみせたのだろう。イザード王の気が少しでも紛れるようにと
「ウム、そうか。下がってよい」
「ハッ」
その兵士が連れてきたのは十代半ばと思われる少女、特徴的な紫色の髪と整った容姿をしているがそこにさして興味はなかった。それよりも『何故こんな少女がこの場へ?』という疑問が立つ。
彼女の佇まいは冒険者のそれではない、兵役を経験している訳でもない。そこまで考えた際、先程の兵士の言葉を思い出した。
異世界人――――――――
「先日は手荒な歓迎をしたな、こちらも警戒をせねばならぬ身の上だ。許せよ」
「い、いいえ。大丈夫です」
「とはいえお主は王宮への不法侵入及び我がアスカロン聖騎士団への暴行行為を働いた狼藉者だ。体面もあるゆえ無罪放免という訳にもいかぬ」
「え・・・えっと・・・・・」
このような場には慣れていないのであろう、小さく縮こまっている少女に対して常に会話の主導権を握るイザード王。そんな会話を聞きながらこの世界には異世界より力を与えられ召還される『アーシアン』と呼ばれる者達がいる事を思い出す。
なるほど、とシャドウ丸はイザード王の考えを読み納得する。
アスカロン聖騎士団がこのまま所在不明では非常にまずい、もしもアストラル共和国がイザード国と軍事的に手を組んでいると他国に追求されれば我が国は逆風に立たされる事になる。
何しろ我が国最強の戦力が意味もなくアストラルに駐留し、他国の調査団も帰って来ていないのだ。これでは戦争準備への口封じと思われかねない。
そこで先日イザード国が先頭となり一般冒険者から調査団を募集した、しかし集まったのはたったの二名。いや、この短期間で二人も来ただけ御の字と言える。
だが優秀な手駒は一人でも増やしたい。そう思っていた所に世間知らずのアーシアンの少女がやってきた。利用しない手はないだろう。
「わかりました、その国の調査。私も参加します。」
と考えている内に『久野カレン』と名乗る少女は調査参加を口にした。
この数日で感じた事だがイザード王は口が上手い、何故か自分が調査に参加しなければ状況が進展する事はないのだと確信めいた考えを起こさせる。
それ故に私も調査の参加を表明し、本来は離れるべきではない神速丸様も我が身を案じ共に行くと言って頂けた。
この手練に対抗出来るのは、きっと我が主だけなのだろう――――と先程より床で寝転がりながら漫画をめくっている神速丸を見つめていた。




