フェイズ3「王宮からの呼び出し」
PC2およびPC3のオープニング導入となります。
「ハァ・・・・・」
目の前の状況に男はため息をつく、その顔は黒い布により覆われ表情を伺う事は出来ない。
だがその発した息と状況から、その男『シャドウ丸』は心底呆れてるのだと推測するのは簡単だった。
「ねぇ学校長~♪今度私達のクラスに訓練しに来て下さい~」
「学校長学校長~、私授業の単位が少し危なくってぇ~」
「フハハハハハ、全てドーンと俺に任せんしゃいて!!」
「「「キャーーー!さすが学校長~♪」」」
自身の武器を全身に出した少女達にあっさりと篭絡される黄色の球体。何を隠そうこの方が我が主『神速丸』様なのだ。
この剣と魔法の世界『アリアンロッド』では人と亜人、はたまた神や鬼の化身が共存し生活を営んでいる。目の前の誘惑を行っている少女達も頭から獣の耳を生やしている者や龍の鱗のような手をしている者もいる、かくいう私も黒い布に覆われた顔の他に付くべき胴体が存在せず手と足が頭から生えている二頭身体型だ。
だがこの世界では何ら不思議な事はない、それがこの世界なのだ。
「学校長~、そういえば私さっきすごい綺麗なバッグを見つけちゃってぇ~」
「あ、私もぉ~。あれがあれば標的を色香に落としやすくなりそうかもぉ~」
「ああいいよぉ、おじさんどんどん買っちゃうからねぇ」
目の前の少女達はこのイザード王国にある忍術指南学校の生徒であるが、もう忍術の勉強は不要ではないだろうかという本音は今回は保留にする。彼女達がたらし込んでいる神速丸様こそがその忍術学校を設立した学校長であるからである。
自分はこの国の重鎮として長年仕え重宝されていると言っているが、彼の活躍どころか何か仕事をしたという話は全く聞かず毎日毎日女学生と戯れているだけの神速丸様には誰も耳を貸そうとはしなかった。だがシャドウ丸だけはそれが真実であると信じている。
何故ならばそう思考する『エクスマキナ・シャドウ丸』という存在を作り出したのは、目の前にいるこの男なのである。その辺の酒場で見かけそうな堕落した男の様相をしている神速丸だが、シャドウ丸は表面上呆れ顔をしながらも主への崇拝を念を崩さず話しかけた。
「神速丸様、王宮より伝令が届いています」
「なんじゃい、今重要な話をしてる所なんだってばよ」
実際どうでもいい話をしていた事はシャドウ丸も知っているので抗議の声を流しつつ用件を伝える。
「急ぎ登城して頂きたいと陛下の勅命となります。何やら重要な話がある様子」
「それは大変じゃぁ、そういう事でシャドウ丸。様子を見て参れ、ワシはここで待ってるよ」
「そうは参りません。陛下は神速丸様をご指名なさっております」
「まじかー、行くしかないか。ついてこいシャドウ丸」
体全体を弾ませながら不機嫌を現す神速丸、彼から発する野太くカリスマ性を感じさせる声はいつ聞いても凛として清々しい気分にさせる。
当然のように同行を命じられるシャドウ丸は、自身でも気付かない程に頬を緩ませているのだった。
◇◆◇◆◇
「あー、面倒くせぇ」
背中に天使の様な翼を生やしてその球体は歩いていた。
その(自称)愛らしい風貌にはやや野太い声と、怠惰が板についているであろう本音の言葉を呟きつつ神速丸は渋々ながらシャドウ丸と共に宮殿へ向かっていた。
「一体何の用があってわざわざ行かないとあかんのじゃい」
「申し訳ありません、詳細については聞く事が出来ませんでした」
一人言のつもりで吐いた言葉を叱責と取ったのか、既に何回目ともしれぬやり取りを行う。シャドウ丸は少々融通の利かない所があった。
神速丸も言葉自体は偽りない本音ではあるが不快感はない、イザード王国は軍事強国であり治安もよく諍い事も滅多に起きない。故にこのような呼び出しは異例の事であり普段市井での生活を好き放題してる身としては多少貢献してやってもいいだろうと考えていた。
そんな事を考えながら進んでいくと王宮が見えた辺りで入れ違いに門から出てくる集団が見える。
『アスカロン聖騎士団』
イザード国を軍事強国たらしめる守護兵達でありいずれも一流冒険者と呼ばれる者達と並ぶ腕前を持つ。特にその先頭を歩いている騎士団長に至っては一人で一軍を相手取れるほどの圧倒的な力を持っていると言われていた。その強大すぎる力からか騎士団長は常にフルフェイスの兜を被り全身鎧に身を包んでいるため一切の情報が隠蔽されていた。少なくともシャドウ丸のような非人型でない事だけは確かだろうが――――
「おいおい、騎士団長ちゃんよ。どうなの最近?」
「・・・・・・・・・・・・・」
鎧の中の姿を見た事はないが彼との付き合いは短いものではない。
情報収集をかねて挨拶をしてみるがいつも通り返って来たのは沈黙のみである、これだから性別すらも不明だと言われるのだ。
「・・・・・・・・・フン」
無視はいつもの事なので少し下ネタ交じりの冗談を加え反応を見てみる。
後ろではシャドウ丸が困惑の表情を浮かべているが特段気にする事はない。神速丸と騎士団長の二人は、こんな一方的ともいえるコミュニケーションが許される仲なのだ。
相手もこれ以上付き合う気はないという意図だろう、鼻先で神速丸をあしらうと立ち去ってしまった。相変らず連れない男である。
騎士団長の後を追い他の聖騎士達が足早に過ぎていくのを横目で見送りながら、神速丸はシャドウ丸を連れ王宮の中へと進んでいくのであった――――




