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レベル概念の世界にいったらランクを上げる事になった  作者: シグアルト
第一話「ランク・ドミネーション」
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12/18

フェイズ10「クソガキ」

ゲーム内では描写のみの戦闘です。

なのでかなりアレンジして書きました。

 トキアメは目の前の少年に対し、困惑していた。


 案内された村【アトランタル】において顔役が住むといわれる建物の入り口を塞ぐ少年。普通に考えれば建物を守るボディガードに思える。幼児といわれる時期からようやく脱したかのような容姿の少年だが、不老の魔法や姿を変える事も出来るアリアンロッド(このせかい)においては護衛が少年だとしても気にする程ではない。


 トキアメが困惑しているのは目の前で構える少年の纏う雰囲気である、ハッキリ言って隙だらけなのだ。

 無論自分の実力を隠しているのか、もしくは封印しており戦闘開始と共に解除するのか等不意をつかれないよう今までの経験から様々な角度で伺うも結論は変わらない。

 目の前にいるのは何の力も持たないただの子供である。だからこそ、その少年の持つ余裕が理解出来なかった。


 髪の毛がほとんど隠れる程の大き目の帽子を深く被っているものの少年の顔はハッキリと伺える。中性的で端整な顔立ちだがその浮かべる表情は慢心、油断、そして勝利への確信であった。

 トキアメもただの子供を苛める愉悦的な趣味は持たないので、軽く敵意を出せばその圧だけで逃げ出すだろうと思っていたが少年の態度は相も変らずである。

 どうしたものか無表情の裏でトキアメが思案していると



「どうしたのさ?オイラにびびって動けないのかよ」



 いかにもな挑発が飛んできた。

 トキアメは内心やれやれと思いつつも実力差のある相手に対しての挑発がどんな結果を生んでしまうか教えてあげるのが大人の優しさだろう、と結論づけた。

 そこに私怨が混ざっているのか否かについてはトキアメを含め誰もわからないだろう。



「お前の名は?」



 折檻(しょうぶ)の前に名前くらいは聞いてもいいだろうと思ったが――



「オイラの名前なんかどうだっていいだろ、「クソガキA」とでも呼べよ!」



 名乗る気はない様だ。まぁさして興味もなかったし呼ぶ事もないだろうと納得する。



「いいだろう、さっさと来い」



 これみよがしな構えのポーズを取り戦闘の意思を伝える。すると少年は笑みを浮かべ見るからにテンションを上げていった。

 さすがに少年に怪我を負わせるつもりはない。攻撃を受ければ余裕の理由もわかるだろうし、ただの慢心ならばそのまま鼻っ柱をへし折ればいいだろう、とトキアメは受けに回ることにした。



「じゃあ行くぜ!オイラが勝ったらこの町から出てけよな!!」



 一方的な約束を取り付けながら少年はトキアメに向け走り出す。

 お互いの距離は10m、同じ冒険者やモンスターとの戦いであれば一瞬で詰められる距離だが――





 ぽてぽてぽて・・・・


 それは 移動というには あまりにも遅すぎた

 ゆっくり とろく ひどく そして 筋力不足すぎた

 それは 正に 運動音痴だった――――


 そんな感想を抱きつつ待っていても尚、少年はトキアメのもとへ辿りついていない、調子に乗った少年に折檻でもしようかと考えていたトキアメは、そのあまりのひどさに嘆息するしかなかった。

 そしてようやくトキアメの足元に辿りつき腰に下げたナイフを取り出しトキアメの膝へと振り下ろす。

 致命傷を与えない為の配慮であろうが足を一歩引くだけでかわせるお粗末極まりない攻撃、そもそも目の前に来てから武器を取り出してどうするのか。叩き落したり弾いたりすると素人相手では危ない上、これではそんな事をする必要すらない。

 とりあえず一歩下がって避けた後、その手を取る。そうすれば少年も諦めるだろうと思ったのだが・・・





「?!」





 トキアメは動揺した。

 その少年の攻撃を避けようと思った瞬間、身(・)体(・)が(・)拘(・)束(・)さ(・)れ(・)た(・)。

 物理的に抑え付けられた訳ではない、何か見えない威圧感のようなものが体中に纏わりつき下半身が石のように動かなくなってしまったのだ。

 何か呪術を別の所からかけているのかもしれない、そう考え冷静な思考を取り戻したトキアメはひとまず少年の攻撃の対処を行う事にする。(この少年が呪術をかけている可能性は真っ先に排除した)

 少年に自分を攻撃させる事が何かのトリガーになっているのかもしれない為、唯一動く左手をナイフの目の前に出しクロスアーマーに付随されている籠手で防ごうとする。冒険者の繰り出す攻撃では籠手ごと手を貫かれてしまうが、この攻撃だったら別の要因などなければ余裕で防げるはずという考えであった。


 そう、【別の要因】がなければの話であるが・・・・・




 ドゴォォォォォォォン!!!



 トキアメの後ろで動向を見守っていたシャドウ丸達は状況が理解できず呆然としていた。

 素人同然の動きで振り下ろされたナイフがトキアメの籠手に当たった瞬間トキアメの姿は見えなくなった。

 その事実を彼等が理解する前に目の前を何かが通り過ぎ轟音が鳴り響いた。慌てて振り返ればそこにいるのは向かいの家屋の壁に激突したトキアメの姿である。

 何か特別なスキルや魔法を使った形跡は一切ない・・・離れた場所で全体を見る事が出来た彼等はその事実を知っているからこそ余計に目の前の結果に対して困惑していた。



「へっへーん、どうだい!無能階級(ランク0)が初期階級(ランク1)のオイラに勝てる訳ないだろ!!」



 そう言いながら自身の手首を、正確に言えば手首に浮かんでいる白いリングを見せびらかしている。今の不可思議な現象の原因はそこにあると考えるのは容易であった。



「無能階級(ランク0)?初期階級(ランク1)って何の事ですか?」



 皆が感じている疑問を代表してカレンが発する。内面は子供そのままの彼ならば話してくれるかもとの期待であったが・・・・



「・・・・・え?・・・・・・・・・・知らないの、マジで???」



 それまで余裕を崩さなかった少年の初めての狼狽であった。

 アストラル共和国内での常識なのかもしれないが、それなら少年が浮かべるのは嘲笑や侮蔑の類になると思っていたシャドウ丸やグノバも意外そうな顔を浮かべる。

 これではまるで、知らずにやっていた遊びが叱られるものだとわかった瞬間の子供のような・・・・



「客人に何やってんだいクソガキ!!」



 店の奥から大地が震えるかと思うほどの声が響き渡る。その言葉に狼狽していた少年は顔を青くして慌てふためく。



「で、でもさ。いきなりジョージの店に来る町の外の奴なんて首都の奴等に決まって・・・」

「わたしゃ今やこの町の顔役なんだよ!事情を知らない旅人も来るって言ったろう!!」



 反論は許さないという厳しい口調で少年の言葉を遮る、既に少年は涙目であった。



「この子が失礼したわね。村の子から話は聞いてるから入るといいわ。吹飛ばされた子の治療もしてあ・げ・る♥」



 そう告げながらジョージと呼ばれた人物が家から現れる。その姿に、事態が一段落したと安堵する一向は頬を引きつらせる。



 パーティ内で一番の背丈を持つグノバより二回りはあるだろうという筋骨隆々な体躯、それに似合わぬ非常に手入れされたのがわかる長い金髪、そしてひたすらに自己を主張しているけばけばしい化粧の数々。





 それは熟練の冒険者であろうと圧倒される、すさまじい威圧感を持ったオカマであった。

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