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転生した脇役令嬢は、国一番の冷酷公爵をヤンデレにしてしまいました  作者: 桔梗


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2/10

脇役令嬢なので、物語には関わりたくありません!

ーー王宮の薔薇園。


夜会の喧騒から遠く離れたその場所で、私は一本の大樹の陰に身を隠していた。

その向こうで、白い石畳の上に、一人の男が倒れている。


夜空を写したような黒髪、ルビーのように赤い瞳。

そして、苦痛に歪んでなお恐ろしいほど整った横顔。

間違えようがない。

彼は、イヴァン・ハインリ。

ハインリヒ公爵家嫡男にして、王国が誇る聖騎士団団長である。

そしてーー、(原作最大級の地雷男……!)

私は両手で口を押さえた。

叫ばなかったことを褒めてほしい。


「……っ」


低いうめき声が響いた。

肩がぴくりと跳ねる。


イヴァンが胸元を押さえた。

顔色が悪い。

唇にもほとんど血の気がなかった。

ーー毒だ。


(あれ……そういえば……、毒って誰に盛られたんだったっけ?)


所々記憶が曖昧だがーー、私は知っている。

今夜、イヴァンは毒を盛られ、この薔薇園で意識を失う。

そこへ偶然通りかかったセシリアが彼を発見し、セシリアは聖女の力で毒を浄化し、イヴァンの命を救うのだ。

それが、二人の最初の出会いであり、イヴァンがセシリアへ執着する、すべての始まりだった。


私は周囲を見回した。

ーー誰もいない。

ここには、倒れている次期冷酷公爵ーー、そして脇役令嬢一名。

嫌な予感しかしない。


(……セシリアは!?)


いや、原作通りなら来るはずだ。

夜会で酒に酔った貴族に絡まれたセシリアが、逃げるように庭へ出て噴水の近くでイヴァンを発見するーーその場面を私は覚えていた。


なぜなら、その場面には挿絵まであったから。

ーー月明かり。

ーー白薔薇。

ーー倒れたイヴァン。

ーー彼に手を差し伸べる金髪の聖女。

とても綺麗な場面だった。


私がするべきことは簡単である。

何もしない、ただそれだけだ。

あと数分もすれば、本来ここへ来るべき人が来る。

私は脇役だ。

物語の歯車に指を突っ込んではいけない。


(帰ろうっと)


私はそっと一歩下がった。


ーーその時。


「……誰だ」


嫌な汗が背中を流れる。

いや、何も聞こえない。

私は何も聞かなかった。


(うん、早く帰ろう。帰らなきゃ!)


「そこにいるのは分かっている」


(……ですよね)


私は観念して木陰から顔を出した。


「……こんばんは」


我ながら間抜けな挨拶だった。

地面に倒れている人間へ向かって言う台詞ではない。

イヴァンの赤い瞳が、ゆっくりと私を見る。


その目を見た瞬間。

ぞくり、と背筋が冷えた。

綺麗だった。

そして怖かった。

原作の挿絵よりずっと鋭く、ずっと冷たい目だった。


アルヴィスが石畳へ片手をついている。

肩で息をしていた。

額から汗が落ちる。

さっきより明らかに悪化している。


(こんなに苦しそうだったっけ……)


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― 新着の感想 ―
気に入ったお話ゎε=ε=(ノ≧∇≦)ノ♪ 反復拝読♡♡♡
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