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神話 My storyとHis story ~俺と彼、交錯する二つの時空(とき)~  作者: take4
~第二章~ ゼルフィス槍王国編

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第二十九話 創世神話と新たな禁忌

 一つ目の石板を読み終えたあと、俺は大きなため息を吐いた。

 俺たちの世界とこちらの世界、ことわりの違う二つの世界に意外な共通点を見出したからだ。

 それにしてもこの石板が封印されていた意味はなんだ?


「アルシェはこの話を知っていたか?」


『ううん、私たちに教えられていたのはこの一部だけ、しかも肝心な部分は省かれているわ。確かに女神イザミは誕生と死を司る女神として、今も神殿で祀られているいるけど、これを読むと女神に対する考え方が一変しちゃうもの』


 なるほど……。神話は神殿に都合よく改竄かいざんされているということか?

 なら続きには何が記されているんだ?


 俺は再び二つ目の石板に目を通し始めた。



*****************************

   創世神話②

*****************************

 神イナギと女神イザミ、二人の織り成した悲しい物語こそが、我々の住まう限りある命と祝福に満ちた摂理の世界と、これに対峙する呪われし背理の世界である魔境の始まりとなった。


 黄泉の国から逃げ出した神イザギは、自身が黄泉に移動するため作った門への対処として、聖域に近い西の門には穢れを祓う水神を置き、魔境を介して黄泉の国から送られてくる軍勢の抑えとした。

 次に聖域の周辺に十二の国を興すと、そこに人々を住まわせ、魔境外縁の護りに当てて女神イザミが派遣する黄泉の軍勢に対抗するよう命じた。


 そして……、この世界を守護するため、ことわりの異なる世界から救世主となる者を呼び寄せるための『召喚門』を創造し、既に『転移門』門があった二国を除く十の国に与えた。


 この世界を守るために神イザギが創造された『摂理の宝玉』は、世界に住まう人々の正の感情、神への祈りや感謝、幸福感を力として集め、それを『門』へと供給し異なる世界を繋ぐ力(転移の力)の源泉としていた。


 ただこれに対し女神イザミも黙っていなかった。

 彼女は神イナギが創造した『門』に呪いを掛けた。


 転移によってことわりの異なる世界から渡って来た者は、やがて女神イザミの尖兵となって世界を滅ぼす側に回るという呪いを……。

 更に魔境の境界近くにあった転移門を占拠し、魔境の中へと飲み込んだ。

 これに接続する聖域近くの転移門に穢れを送り込み、いつしか黄泉の国より軍勢を率いて攻め込むために……。


 黄泉の軍勢が摂理の支配する世界でも力を振るえるよう、女神イザミは『背理の宝玉』を創造した。

 これによって世界の摂理を捻じ曲げ、死者に偽りの命を吹き込むことや、命あるものを異形のモノへと変化させていった。

 『背理の宝玉』は人々の負の感情、恐怖や絶望によって力を得るが、この宝玉こそが女神イザミの遺した呪いであり、宝玉の力によって世界を滅ぼす存在として魔王が覚醒する源となった。

*****************************



「なるほどな……」


 先ず一つ目として、最後に俺を救ってくれた龍神はやはり想像した通りだと言うことだ!


 龍神は自身を分身体と言っていたが、龍神と深い関わりのある神様といえば瀬織津姫に他ならない。

 しかもその役目が、魔境から流れ込む穢れを、滝から流れる水の瀬に流して祓い清めるとなれば、そこも一致する。


 龍神自身が『我らに連なる者』とか『我らの加護を受けた』とか話していたし、もうこれは間違い無いだろう。

 だが、それ以上に見逃せない事実がある!


「アルシェ?」


『……』


 この二枚目の話については、アルシェは特に驚く様子もなく無言だった。

 もしかすると彼女は『摂理の宝玉』と『背理の宝玉』について、何か知っているのかも知れない。


「この二つの宝玉は、実際に存在するのか?」


『……、するわ』


「どこにそれはある?」


『ひとつは魔王の棲まう魔境の中にある神殿、魔王宮に。もう一つは聖域の中央神殿にあると言われているわ……』


「悪辣……、だな」


『うん……』


 俺が何故悪辣と言ったか。理由は簡単だ。

 異界から呼び寄せられた救世主は魔王を倒す使命を受け、最終的に魔王の棲み処である魔王宮に赴く。

 そうなれば『背理の宝玉』に触れてしまう可能性がある。


 この石板に書かれていることが事実であれば、魔王を斃した者はそこで()()()()()として目覚めることになる。

 言ってみればこれは、どうしようもないぐらいの負の連鎖だ。


 こんな馬鹿げたことのために、歴代の救世主は命を懸け戦って世界を救ったあと、今度は逆に救った世界によって殺されていったのか……。

 俺はこみ上げる怒りを抑えつつ三枚目の石板を読み始めた。



*****************************************

 槍王国迷宮に秘匿された禁忌事項

*****************************************

ひとつ、背理の宝玉に関する禁忌

・魔境で命あるものが異形となるのは、全てが『背理の宝玉』による影響である

・異界より渡った者が『背理の宝玉』より力を授かることで、特別な力を持った魔王へと覚醒する


ひとつ、転移の門に関する禁忌

・異界より魔王の尖兵を導く恐れのある転移門が、12か所存在することは固く秘匿せねばならない

・各王国に残された転移門は、既に神殿の手によって封印され存在は歴史の闇に葬られている

・現在封印された転移の門は10か所、唯一運用するために残したアメノ神殿の転移門は、常に神殿の厳重な監視下で管理運用せねばならない

・2番目の門は魔境に飲み込まれ、魔王の支配下にあるため制御ができないが、同時に摂理の宝玉から力を受けていないため、異界と繋がることはない

 

 故に、異界より渡った者は、いずれ女神イザミの呪いを受けて世界を滅ぼすため、その全てを抹殺せなばならない。

 故に、呪われた『背理の宝玉』は、その存在を決して明るみに出してはならない。

 故に、神殿によって封印された10か所の転移門のことは、決してその存在を明るみに出してはならない。

 故に、神殿は、唯一の転移門を所持する存在として、この世界に君臨し導かねばならない。

 故に、魔王の支配下にある2番目の転移門を、『摂理の宝玉』に接続させてはならない。そうなれば魔王は、常に異界から異形のモノを招集することになる。

*****************************************


「そういう事かよ!」


 完全ではないがこの世界の歪み、神殿が何をしようとしているかが分かった気がする。

 二つ目の石板に書かれていることを踏まえ、最終的に異界から渡って来た俺やオタは、神殿の敵として最終的には抹殺される。

 あの悪夢で見たように……。


 そしてもう一つ、確たる確証はないため、あくまでも推測だが、転移門は何も異界とこの世界を結んでいるだけではないかもしれない。


 これは魔境に飲み込まれた2番目の門に対する扱いでも分かる。

 この場所にある1番目の門と2番目は本来、神イナギが行き来するこの世界内の転移門だったはずだ。

 だが禁忌では、異界と繋ぐ門となることを警戒している。つまりそれは、『門』はどちらでも繋げることができることを意味している。


 もしこの転移の接続が魔境の門と槍王国間だけでないとしたら?

 そうなればこの迷宮に魔境の魔物が現れたことが、他に転移門が封印された場所で起きても不思議ではない。

 この仮定は非常に恐ろしいことになる。


「マズイな……」


『うん……』


「門はこことあの神殿に魔境、それ以外にまだ九か所あるんだろう? それが魔境と繋がっていたらどうなる? 魔王軍は一気に無防備の地に押し寄せるぞ。その先駆けとしてスタンピードを起こされたら、各国は打つ手がなくなる」


 それだけではない。

 これでは迂闊に魔王宮に赴くことさえ、身の破滅に繋がってしまう。

 ラルシュやオタはこの事実をきっと知らない。


『……、どうやら早めに『あの子』と合流した方が良いみたいね。でも此処は……、大丈夫かしら?』


「多分ね」


 白龍は消え去る直前、『忌まわしき接続は絶たれた』と言っていたしな。ならばこの門は当面の間は心配することもないだろう。

 念のため師匠にだけは、さらっと伝えておいた方が良いかもしれないけど。


 俺は三つの石板を背負っていたリュックにしまうと、一気に階段を駆け上がろうとした。

 だがその時、先ほどまで無かった『何か』が川の早瀬から俺を呼んでる、そんな気がして引き返さずにはいられなかった。


『シェンファ、どうしたの?』


 アルシェがいぶかしがるのも無理はない。

 俺は川に入ると、流れに足を取られないよう気をつけながら川底を探り始めたからだ。


「いや、ちょっと……」


 説明するのは難しいが、川の瀬から『連れて行って』と言う声が聞こえた気がしたからだ。

 だが、何かを『感じる』という感覚はあったが、それが『見える』ことはなかった。


 そして、唐突にそれは見つかった。

 俺の手が『何か』に触れた瞬間、それは大きく輝き始めたからだ。

 手のひらに乗る程度の無色透明の球体は、ひときわ白く明るく輝くと、その後はゆっくりと輝度を落とし、最後は透き通るような水色に変化した。


「持って行っても……、良いよな?」


『う、うん、多分……』


 何と無く神聖な何か、のような気がしたものの『連れて行って』と言われたこともあり、俺は丁重に球体をしまうと、第二十五層から降りて来た場所にあった階段へと足を掛けた。


 また世界がぐにゃりと曲がった気がして視界が半転したが、ふと気付くと篝火がふんだんに焚かれた明るい部屋、30m四方の小さなホールに立っていた。


「あれ? ここって……」

『うーん、どう見ても第一層よね』


 どうやら一気に戻ってしまったようだ。


 この日俺は、ここ数百年の間で出されたものと比べようもない、第二十五層攻略日数の新記録を出してしまうことになる。

最後までご覧いただきありがとうございます。

明日(8/13)は、【試練のあと……】をお届けします。

どうぞよろしくお願いします。

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