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2章-4

18話「第2章4話」


[カルボナーラの作り方]

パスタ(乾麺)と卵とベーコンを買ってくる。コショウと粉チーズが無ければそれも。

今回は 生クリームとアスパラも入れるので無ければ買う。

まず、まな板を濡らす。

(中略)

乾燥した卵が排水溝のネットに溜まるので取り替えた方がベター。



軍の宿舎を出た一行は地下鉄のホームで電車を待っていた。

白魔術師がつぶやく。

「サッカーの試合も見たし、この街でやるべきことは終わったね。」

ナイトが続く。

「なかなかの塩試合だったな。野球の方にしておけばよかった。」

黒魔術師が続く。

「でも野球の球場は施設が劣悪で熱中症になりやすいから観戦には向かないっていうからやめたんだよね。」


シーフが獣人に尋ねる。

「次の王都には何か美味しい食べ物はあるの?」

獣人が即答する。

「納豆ですね。ミットの納豆は有名ですよ!」

シーフは納得いかない様子で更に尋ねる。

「…他には?」

獣人は少し悩むが、すぐに思い出す。

「あと、アンコウですね。こちらは納豆と違って、全国で簡単に手に入るというわけではないですからね。」

シーフが食い付く。

「いいね。どこに行ったら食べられる?」

獣人が申し訳なさそうに答える。

「その、今はシーズンじゃないので…無理です。」

シーフは納得いかない様子で更に尋ねる。

「…他には?」

獣人は狩人に助けを求める。

「補足をお願いします!」

「アンコウは深海の海底で暮らす魚だ。深海と言ってもせいぜい水深100m位だけどな。」

賢者が突っ込む。

「何を補足してるんだよ!」

ナイトが疑問に思い尋ねる。

「そう言えば、アンコウ水族館では見たこと無いな。やっぱり深海魚だから飼育が難しいのか?」

狩人が答える。

「いや、それほどでもないよ。

実際に飼育している所もそれなりにある。でも、砂に潜って目を出してるだけだから面白みが無いんだよ。集客面から考えればリストラの上位候補者になるだろう。

もしかしたら、見たこと無いんじゃなくて、見たけど印象に残ってないだけかもな。」


シーフは改めて獣人に尋ねる。

「それで、美味しいお店はあるの?」

獣人が答える。

「無いですね。ミットがある地方、イバラキ地方には何も無いです。

納豆以外にロクな物が無いので。」

監視員が補足する。

「たしか、駅前中華のチェーンなら…。」

賢者が突っ込む。

「駅前中華はもういいだろ!3日連続じゃねーか!」

ナイトが反応する。

「中国の人はもっと連続で中華料理だぜ。」

狩人が応じる。

「でも我々は中国人じゃないしなぁ。人民服着て自転車乗り回す人たちと一緒にされちゃ困る。」

賢者が突っ込む。

「20世紀のイメージ持ち込むのやめろ!」


黒魔術師が駅のホームの柱の影をチラチラ見ながらつぶやく。

「さっきから、というか最初から気になってたんだけど、あの柱の陰からこちらをうかがっている、銭○警部の格好した4人組は何なの?」

監視員が鼻で笑う。

「あんな目立つ格好でバレないと思ってるんですかね。」

「サングラスに付け髭とかセンスを疑いますよね。」

狩人がつぶやく。

「数日前のお前達に聞かせてやりたい。」


「というわけで、王都に到着しまし…た、と。」

忍者に対して賢者が突っ込む。

「無事到着したけど道中何も面白いことなかったから省略した体で進めます、みたいな感じ出すのやめろ!」


遠浅の浜を人工的に掘って作った港にはたくさんの船が停泊している。

だが、港は閑散としていて船が出入りしている様子は無い。

人間はほとんどおらず数人の漁師が所々で朝の漁の片付けをしているのみで、漁師が作業している脇ではネコがおこぼれにあずかろうと行儀よく待機している。

そんな様子を上空からウミネコたちが機会を伺うかのように旋回している。

海は寂しい曲を奏でるかのように穏やかに波を…。

「もう景色の描写はいいだろ!

ていうか、なんで港ばっかりなんだよ!

私たちが駅から降り立ったのは街のど真ん中で、港なんか全く見えないぞ!」


白魔術師が賢者に確認する。

「それで、いきなり目的地に直行するの?それとも下見?」

賢者がすぐに答える。

「急ぎじゃないし、当然、下調べからやるよ。

それで、ターゲットが捕らえられているのはどこだい?」

監視員が答える。

「恐らく、王城の中でしょう。

城内に国専用の港があって、軍艦も政府専用船もそこに停泊しています。」

忍者が尋ねる。

「城内の地図はあるか?」

監視員が答える。

「地図はありませんが、以前中に入ったことがあるので、覚えている範囲で申し上げましょう。」

「食堂は地下で、手洗いは地下1階から3階の各階の南北にそれぞれ1つずつあります。」

狩人がつぶやく。

「水回りは南北で2系統か。」

賢者がすかさず突っ込む。

「どうでもいいんだよ、そんなこと!」


監視員が説明を続ける。

「連れていかれた人たちが捕らえられているのは王城の牢か、国立病院の立ち入り禁止区域でしょう。」

「国立病院に立ち入り禁止区域があるのは国家機密なので口外は無用でお願いします。」

賢者が応じる。

「お、おう。

機密事項をペラペラとどうもありがとう。

で、その病院の立ち入り禁止って何をしている場所なんだい?」

獣人がおもむろに割って入ってくる。

「それは私からお答えしましょう。

機密とは言え、国民のほぼ全員が把握していることですので。」

賢者がすかさず突っ込む。

「この国の機密に対する認識ってどうなってるんだよ。」


獣人が話を始める。

「我が国は植物だけは昔から豊富で、薬草の研究が非常に発達しています。

それわを原資に医療は高度に発展し、今では、いや、今でも世界一の医療大国となっています。

他国からも難しい病を抱えた方々が治癒の可能性を求めて続々といらっしゃいます。

事実、現在の医学でどうにかなるものは、国立病院ですべて賄えます。必要な物は何もかも常時取り揃えられています。

たとえ治療に必要な物が稀少な薬品であっても、型の合う臓器であったとしても。あそこの立ち入り禁止区域には、それを維持するための、材料に相当するものが多様に揃っています。

 その多様性を維持するため、水の大陸の人身売買船、通称黒船から買い付け、または余剰分を売り出している、と聞きます。

今回の件も恐らく黒船を使った取引となるでしょう。」

監視員が付け加える。

「皆さんがどう感じるかは承知の上。

我々も小学生の時に学校で教わった時に、どうしてそんな酷いことをするのだ、と怒ったものです。」

賢者が突っ込む。

「学校で教えてるのか。いよいよをもって機密じゃねーな。」


監視員が続ける。

「ですが、患者の声を聞いて別の考え方も理解しました。社会科見学で国立病院を見に行った時に聞いた難病の子を抱えた両親の言葉が忘れられません。」

「私たちはどんな汚名を被ってもいいからこの子を助けてくれ。世界で一番大切な存在なんだ。その為に何人の命を犠牲にしようと私たちが背負う。だからこの子に未来を、と。

私たちは何も言えませんでした。」

「現状で悪いことをしているのは分かっています。ですが、それをやめることは藁にもすがる想いでやって来た患者の希望、命を絶つことになる。

どちらにもいい顔は出来ない。どちらも不正解の選択肢。

それを分かった上で我々の国、いえ、我々はこの道を決断しているのです。

どうか、そこはご理解いただきたい。」

獣人が付け加える。

「ちなみに社会科見学では立ち入り禁止区域にも入らせてもらいましたよ。」

賢者が突っ込む。

「全然機密じゃねーな。もはやカッコいいから機密っていう単語を使ってるだけだろ。」


白魔術師がもう一度確認する。

「それで、どうするの?」

忍者が答える。

「情報収集ならバラけて動いた方がいいだろう。ただ、単独での行動に自信がない人は誰かと組んでくれ。

それと、本丸に近い場所を探る時は誰であれ単独行動は禁止だ。

というわけで、今日丸1日を自由行動ってのでどうかな。」

獣人がすぐに応じる。

「少し離れた所に、サメをたくさん飼育しているオーライ水族館という所がありますが、寄らなくても大丈夫ですか?」

忍者が少し考える。

「それは外すわけにはいかないか。

 となると、自由行動は2日間かな。

 2日目の17時にここに集合、夜に会議で翌日に決行、というのでどうだろう。」

賢者がうなずく。

「それでいいんじゃないか。」

忍者はメンバーがそれぞれうなずくのを確認すると告げる。

「それじゃあ、…散!!」

賢者が突っ込む。

「勝手に新しい号令を作るな!」


シーフと黒魔術師の2人は街の北西のこじんまりとした洞窟の入口に程近い草むらで洞窟の様子をうかがっていた。

「テスは本当に私にくっついて洞窟の魔物退治の仕事でよかったのかい?

他の誰かに付いていって街のエンタメを満喫するという手もあったと思うけど。」

黒魔術師が答える。

「いくつか新しく使えるようになった魔法を試してみたくて。何も無い空間相手に撃つよりは実戦で使いたいかなって。

仕事の邪魔なら使わないでおくよ。

その場合は一流の仕事をじっくり見させてもらおうかな。」

シーフは洞窟の周囲を警戒しながら答える。

「新技を真っ先に見せてもらえるとは、光栄だね。今回は多分敵が多いから大いに活躍してくれることを期待しちゃうなあ。」

黒魔術師はシーフに尋ねる。

「それで、これは何をしているの?」

シーフは警戒を解くこと無く答える。

「洞窟への出入りをチェックしているんだよ。出入り、特に出る方は注意しないとね。

後で戻ってきて洞窟内で挟み撃ちになる可能性があるから。」

そう言ってしばらくすると、シーフは洞窟の方に向かって草むらの中を静かに移動し始める。


「次は洞窟の周りに魔物とかが潜んでいないか確かめようか。中で挟み撃ちされると困るからね。

今回の相手は悪魔だからね。多少の知恵を使っているかもしれない。」

黒魔術師が尋ねる。

「普通はこうやって念入りに調べるものなの?」

シーフが答える。

「本当は皆そうあって欲しい所だけど、いきなり突っ込む人の方が多いかな。

手練れが多くて多方面から敵が来ても耐えられるパーティや脱出魔法を使えるパーティなら気にしなくてもいいけど、そうじゃないことの方が普通だよ。

脱出魔法を使える人物なんて世界に一人しかいないしね。」

シーフはまっすぐに黒魔術師の方に向き直る。

「これから洞窟の中に入るよ。風のように素早く、林のように静かに、火のように…情熱的に?山のように…。まあ、いいや。

周囲に警戒しつつ足元をしっかりと見ながら空にも気を配りつつ洞窟に入ろうか。」

「うん。

最後の一番普通の注文が一番の無茶振りな気もするけど、頑張ってみるよ。」


シーフは洞窟に入るとすぐに松明を取り出して灯す。

「松明は片手が塞がるから嫌なんだよね。」

そう言うとアイテム収納からライト付きヘルメットを取り出す。

「じゃあ、これを付けようか。」

2人がヘルメットを装着し終えると、シーフは松明を消す。

黒魔術師はヘルメットのライトのオンオフを何度か切り替えて動作を確認する。

「どうでもいいけど、なんで最初松明をつけたの?」


シーフは二本の槍を横や上に向けて間合いを確認すると、ゆっくりと奥へと歩き始める。

黒魔術師は遅れて気づき慌てて小走りで追い付く。

シーフは前を見たまま黒魔術師に語りかける。

「今回の仕事は洞窟に巣くう悪魔の退治。

悪魔は自分より下級の悪魔を呼び出すから、これから最初に出くわす奴が一番下っ端になる。

そいつらの強さで大体、一番上の悪魔、ダンジョンマスターの強さが分かるよ。」

黒魔術師が尋ねる。

「ピラミッドの頂点から下方向に召喚されていくんでしょ?一番下は必ず、悪魔の中で最弱の種類になるんじゃないの?」

シーフが答える。

「ここが無限の広さならそうだろうけど、ここは広さが限られた洞窟。定員があるんだよ。

敵の首領の立場になってごらんよ。

味方の枠が限られているなら、できるだけ強い方がいいでしょ?」

シーフが付け加える。

「と言っても実際には、高位ほど召喚に手間がかかるから、最初は手頃に呼べるやや格下な奴らを召喚して安定したら高位を呼ぶ。だから、我々を出迎えてくれるのは、最初に呼んだ弱めの奴ら。倒されたら倒されたで上位召喚の枠が空くっていう連中なんだよ。

 対悪魔戦には基本的に途中撤退という選択肢は無い。

 間を空けると、倒した雑魚の分だけ替わりに上位が召喚される可能性が高いからね。」

黒魔術師が尋ねる。

「悪魔ってどういう階級分けがされてるの?」

シーフが答える。

「弱い方から、ピコデーモン、ナノデーモン、となって、マイクロ、ミリ、何も付かない普通のデーモンを挟んでキロ、メガ、ギガ、テラの順で強くなるよ。

大体はメガデーモンを主人として、数体のキロに多数のノーマル、稀に斥候でミリがいることもある、ってのが一般的かな。」


洞窟をある程度進んでいくと、シーフは立ち止まる。

「どうやら下っ端のお出ましのようだね。」

そう言うと、アイテム収納からランプを2つ取り出して灯りを灯す。

「普段は頭のライトだけで戦うことも多いんだけど、今回は万全を期そうか。

相手は数が多そうだから魔法の準備をしておいてね。」

黒魔術師が杖をぎゅっと握ると、シーフは前方の暗闇に向かってゆっくりと槍の穂先を向ける。

「羽をせわしなく動かす音がする。どうやら平均より大分低いレベルの悪魔が来るみたい。数は反響音が多すぎて分からないや。」

シーフが言い終わり少しすると、黒魔術師がつぶやく。

「私にも聞こえるようになってきたよ。

でもずいぶんとか細い音だね。まだ遠いのかな。」

シーフが大きめな声を出す。

「違う!すぐそこに来てる!」

そう言うと闇の中に向かって槍を数度振り下ろす。

数匹の悪魔が地面に落ち、一匹がランプの照らす圏内に転がりその姿をあらわにする。

「これは…。」

そうつぶやくと、シーフはため息を漏らす。

「テス、残りは魔法の練習に使っていいよ。

最下級の悪魔、ピコデーモンだね。逆に初めて見たよ。ほぼ無害だから気楽にやっちゃえ。」

黒魔術師は目の前に漂う10匹ほどの悪魔よ群れを見ながらうなずく。

「分かった。」

黒魔術師はそう言うと、手のひらを悪魔の群れに向け、詠唱することなく炎の魔法を発動する。

炎は放射状に広がり悪魔の群れを飲み込む。

悪魔たちは、短い断末魔を上げるとそのまま蒸発するかのように消える。

黒魔術師はシーフの方に振り返る。

「…いくらなんでも弱くない?」

シーフが軽くうなずく。

「最下級だからね…。」


シーフは悪魔を全て倒されたことを確認すると、ランプを回収する。

「悪魔はそれなりに知能があるからね。

あえて最下級を呼んで油断させに来ているのかも。油断しないようにね。」

シーフは歩き出すと黒魔術師に尋ねる。

「さっきのは炎の魔法だね。

覚えたてだから試し撃ちってことかい?」

黒魔術師が答える。

「いや、属性の特徴から考えて炎が最適だったから。

炎は威力が高いのはもちろん、最大の特徴は効果範囲だからね。

黒魔法は属性によって色々特徴が違うから。雷なんかは炎とは逆にピンポイントで攻撃するタイプだし。」

シーフは感心した様子で更に尋ねる。

「へぇ、そうなんだ。ちなみに氷はどんな特徴なんだい?」

黒魔術師は得意気に語り出す。

「氷はね、炎や雷より地味だけどね、いろんな造形ができるし、与えるダメージは意外と大きいんだよ。

氷と言われることが多いけど正しくは冷気だからね。

相手の体温を奪う効果があるよ。特に、冷気が血管に直接触れる状態だとかなりの殺傷能力があるから、もし氷属性のダメージを受けたらすぐに傷口から取り除かないと大変なことになるよ!」

シーフが更に尋ねる。

「どういう相手に使うと有用なんだい?」

黒魔術師は少し考えてから答える。

「やっぱり動物系かな。ホメオスタシス…恒常性の維持が必要な相手に向いていると思う。アンデッドみたいな相手は別の属性の方が良さそう。」

シーフが二度三度うなずく。

「そうやって事前に何が適切な手札かを整理しておくのはいいね。リンかノルドの教え?」

黒魔術師が答える。

「いや、ルーネイトから。」

「へぇ、そうなんだ。ルーネイトはそういう知識いっぱい蓄えてそう。」


2人は洞窟の奥に進んでいく。

歩みを進める度に2人の足音が暗闇の中に染み込んでいく。

((話題が無くて間が持たない…!))

互いに思考を巡らす中、黒魔術師が先に話題を思いつく。

「サニアはどうしてシーフになろうと思ったの?なる前から茨の道だって分かってたんでしょ?」

シーフはホッとひと息つくと答える。

「簡単なことさ。なりたかったからだよ。

テスだって黒魔術師になりたくてなったんでしょ?それと同じだよ。

洞窟を探検して宝箱を開けてお宝をゲットする。シーフでしか出来ないことだよ。

最高だと思わないかい?いや、最高だと思ったらシーフになってるか。

でも、少しは分かるんじゃないかな。」

黒魔術師がうなずく。

「うん、その気持ち分かるよ。」

黒魔術師が言い終わると沈黙が支配する。

「…。」

「…。」

そのまま進んでいくと、シーフが声を上げる。

「宝箱あったよ!」

「やった!」

2人は宝箱にすがるように駆け寄っていく。


2人が駆け寄った先には宝箱が多数散らばっていた。

シーフは真剣な表情で黒魔術師に語りかける。

「分かっていると思うけど、宝箱がこれだけあるってことは危険な何かがあるってことだよ。下手に動かないで。」

周囲を探るシーフに黒魔術師が尋ねる。

「宝箱にトラップがあるとか…?」

シーフは探索の手を休めずに答える。

「いや、宝箱は全部安全だよ。シーフのスキルでそれは分かる。

なにか別の原因が…。」

シーフはそう言いかけると、黒魔術師を呼び寄せる。

「原因があったよ。見てごらん。」

黒魔術師がやって来るとシーフは壁の窪みにある淡い赤色に光る玉を指差す。

「召喚獣のオーブだね。触ると襲ってくるよ。」

黒魔術師が首をかしげる。

「召喚獣?」

シーフが説明をする。

「魔法は系統があってね。白、黒、時空は身近にいるから分かるだろうけど、もうひとつある。それが召喚魔法だよ。

召喚魔法は基本的に相手を倒して従わせることで取得する。

こういうオーブが典型例だね。

魔獣や動物も召喚獣にすることができるよ。

よく街でハト殴ってる人いるでしょ?あれがそうだよ。」

「いや、そんな光景見たことないけど…。」

「えっ、じゃあカラス殴ってる人は?」

「それも無いけど…この世界、そんな危ない人がいっぱいいるの?」

「愛を持って殴れば心が通じ合うとかなんとか…。」

「その理屈が通じるのド○クエだけだよ!」


シーフがオーブを見てつぶやく。

「イフリートか。だいぶ下級の召喚獣だね。」

黒魔術師が尋ねる。

「どうして分かるの?」

シーフがオーブの少し上を指差す。

「…書いてあるから。」

そこには白い紙が貼ってあり、マジックで『イフリート』と書かれていた。

「えっと、これは先人たちが書き残したってこと?」

シーフが首を横に振る。

「いや、オーブが発生すると自然と上に名札が出るんだよ。」

「(ええっ!?)」


シーフが黒魔術師に提案する。

「せっかくだから持って帰ろうか。」

黒魔術師は驚く。

「大丈夫なの?犠牲者いっぱい出ているみたいだけど。」

シーフが平然と答える。

「イフリート程度、どうということないよ。

もしかしたらこの大陸のイフリートがセントラルより強いって可能性も捨てきれないけど。

それはそれで今回の仕事を受けた意味があるってものだね。」

シーフは槍を構える。

「じゃあ、やるよ。テスは万が一に備えて出口の方に退避してて。」

白魔術師が出口方向に移動したのを確認すると、シーフは躊躇することなくオーブに触れる。

シーフが触れるとオーブは明るく光り砕け散る。

オーブの瓦解と同時に近くの地面に光輝く魔法陣が出現する。

魔法陣の中心に大きな物体がボヤーッと現れ、徐々に魔獣の形になっていく。

魔獣が完全に顕現すると同時に地面の魔法陣は消滅する。

魔獣はゆっくりと目を開ける。

「我が名はイフ…。」

シーフがセリフを完全に無視して石を次々と投げつける。

魔獣は思わず顔をしかめる。

「ちょっ、痛えな!自己紹介の時ぐらい…。」

シーフはなおも石を投げ続ける。

魔獣は息を吸い込むと体に力を込める。

魔獣が息を吸い込み終わると、魔獣の体は激しく燃え上がる。

「我が名はイフ…いい加減、石やめろ!痛えな!」

シーフは手を止める。

「石を焼き尽くせる程ではないか。なるほど。」

シーフは魔獣の方に少し歩み寄る。

「とりあえず少しダメージを与えておくか。」

そう言うとクナイのようなものを3本投げつける。

クナイのようなものは全て魔獣の脇腹に突き刺さり、魔獣はうめき声を上げる。

「ぐわぁああ!」

シーフがつぶやく。

「回避も並かそれ以下。耐久力も普通か。

片側の腹にだけ刺さると、片腹痛いよね。」

突っ込み役がいないのでシーフのボケは無情にも闇に吸い込まれる。

魔獣は体勢を立て直し右手に力を集め始める。

「貴様、ただで済むと思うなよ!」

そう言うと、イフリートの体を覆う炎が徐々に大きくなっていく。炎が最大まで燃え上がった所で魔獣は炎の塊を全力でシーフに投げつける。

シーフはそれを難なくかわし、つぶやく。

「攻撃力も一般的なイフリートか。」

そうつぶやくや否や、シーフは魔獣の背後に素早く回り込み、氷の槍を首に突き刺す。

「もう知りたいことは無い。」

シーフが槍を引き抜くと、魔獣は力なくその場で倒れ込み、徐々に小さくなっていく。

そして、掌に収まる程度まで小さくなると、その姿をオーブへと変える。

シーフはオーブを拾って黒魔術師のもとにゆっくりど歩み寄る。

「こうやって愛をもって戦うことで従わせるんだよ。」

「愛なんて微塵も感じなかったよ!?」


黒魔術師はオーブを不思議そうに観察する。

「倒した本人以外が触れても大丈夫なんだね。」

シーフが答える。

「一度誰かが倒してしまえば、そのオーブは二度と襲ってくることは無いよ。

駆け出しの召喚士はハトやカラスしか従えられずに戦闘力が無いから、なりたてでも使えるレベルの低いオーブは意外と需要があるんだよ。と言っても数千円位の値段しか付かないけど。

それはあげるから、店で売るなり、召喚士に売るなり貸すなり、好きなように処分していいよ。売買も早いうちに経験しておいた方がいい。」

黒魔術師はオーブをしまい込む。

「分かった。ありがとう。」

黒魔術師は最初にオーブが置かれていた窪みに視線をやる。

「こういう場所って数が限られてるんでしょ?オーブを数量が限られて奪い合いにはならないの?」

シーフが答える。

「たしかに発生場所は限られるけど、オーブ自体は時間をおいてリポップするから、取りやすい下級のものはそれほど貴重でもないんだよ。

オーブがあった場所の上の召喚獣の名前が書かれていた札を見てごらん。」

黒魔術師は小走りに窪みへと向かい札を確認する。

『イフリート 現在メンテナンス中です。』

黒魔術師がつぶやく。

「この札、どういう仕組みなの?」


2人は洞窟の奥へと進んでいく。

黒魔術師がつぶやく。

「あれから3回、同じ規模の襲撃があったけど、手応え無いね。」

シーフが同調する。

「そうだね。3回分の戦力を結集すればこっちにダメージを与える可能性もあっただろうに。弱い側が戦力を分散するってのは悪手だよ。

まさか私たちを油断させるためのワナなんてことは…。 」

するとすぐに魔物の気配が漂い始める。

シーフが槍を構え再びつぶやく。

「まさか油断させていきなり強敵が出るなんてことは…。」

黒魔術師はいつでも魔法を撃てるよう片手を前に突き出す。

「さすがに敵の数が大群になっているなんてことは…。」

数秒後、最弱レベルの悪魔の群れが姿を現す。

「「 無いんかい! 」」


2人は洞窟の最奥の手前までやって来ていた。

「テス、事前に確認した地図によると次の角を曲がれば一番奥は目の前だよ。

さすがに一段も二段も上の魔物が出てくるはず。

だから今の内に大事なことを済ませておこう。」

そう言うと、包みを取り出す。

「おにぎりとパン、どっちがいい?ちなみに私は両方。」

黒魔術師は困惑しながら答える。

「…じゃあ、パンで。」

シーフは黒魔術師にいくつかのパンを渡すと、おにぎりを頬張る。

「ボス戦の前には準備をしておくのは基本だよ。

空腹で倒れたら大変でしょ?」

黒魔術師がつぶやく。

「空腹で倒れる人なんて見たこと…あるけど、なんと言うか、その…。」

食事を取っていると、洞窟の奥から羽音が近づいてくる。

「ねえ、サニア。魔物が近づいてくる気がするんだけど…。」

「うん、そうだね。でも今食べてるから待って。」

「私に待って、て言われても…。」

しばらくすると闇の中から悪魔の群れが姿を現す。

黒魔術師は戦闘体勢をとる。

「来たよ!さっきより一回り大きい!

食べてる場合じゃないよ!」

シーフは槍を手に取ると、悪魔の方を見もせずに二度三度と槍を振る。

「邪魔。」

槍は悪魔たちを切り刻み、あっという間に半分ほどを撃墜する。

黒魔術師はしばし呆気にとられていたが、ふと我に返り目の前の悪魔に氷魔法を放ち撃退する。

「これどうす…。」

周りを見ると、他の悪魔すでに全てが倒されていた。

シーフは平然とおにぎりを食べ進めている。

「ボス戦は何が起こるか分からないから、万全の体勢で臨む。基本中の基本だよ。」

「今の状況、本当に基本通りなの!?」


食事を終えるとシーフは近くに転がっている悪魔を観察する。

「下から2番目と3番目の、ナノ級とマイクロ級だね。

ダンジョンの主はミリ級、一般にはミニデーモンと言われる奴だね。

普通は斥候の最低レベルがミニデーモンなんだけどね…。」


2人は奥に進み、最奥の部屋の入口が見える所で立ち止まる。

「まず私が部屋の中を確認して、見える範囲にいる敵にクナイを数本投げる。

そうしたらテスはランプを灯して欲しい。

私はここまで撤退して敵をここで各個撃破していく。部屋の中で戦っても囲まれるだけだからおびき寄せて少数を相手にする作戦だよ。

敵が出てこないようなら手順を繰り返す。

敵が部屋から出てきたらテスは後方の注意に徹してもらうけど、私が必要だと判断したら正面の方の戦いに参戦してもらうからそのつもりでいてね。」

黒魔術師が頷くとシーフは部屋の入口の近くに静かに駆け寄る。

シーフは息を吸い込むと素早く部屋の入口に立ち、中にいる悪魔に向かってクナイを投げつける。

投げた全てが敵にささったのを確認すると、シーフは素早く後退する。

黒魔術師がランプを付け終えて顔を上げると、シーフが首をひねる。

「魔物の気配が全部消えた…。

どうやら今のでボスを倒したっぽい。」

「(ええっ…?)」


2人が部屋の中に入って確認すると、身長40cmの小悪魔が倒れていた。

シーフが周囲を見渡す。

「クナイはこいつに1本、それとあそことあそこに1本ずつ。

こいつがボスで、残りは消滅したと見て間違いなさそうだね。

ボスはミニデーモンかぁ。」

黒魔術師が尋ねる。

「サイズ見ただけで種類が分かるの?」

シーフが意外そうな様子で答える。

「私みたいなソロの場合は特にだけど、魔物の生態や各種の基礎知識は覚えておかないと現場で困るからね。

勉強したければアローワークに置いてある本を借りるといいよ。魔物関係以外にもワーカーの仕事に役立つ基礎知識もいっばい書いてあるから。」

黒魔術師が更に尋ねる。

「どんなことが書いてあるの?」

シーフが少し考えてから答える。

「例えば…

『濡れた路面を車で高速走行するときにブレーキやハンドルが利かなくなる現象をなんと言うか?』

 とかね。

 ちなみに答えは『ハイドロプレーニング現象』だよ。」

黒魔術師が突っ込む。

「…それ、本当に仕事に役立つ?」


シーフはボスの片方のツノをつかむ。

「この前、ワイバーンを本当に倒したかで少しもめたからね。

セントラルではみんな信用があって口頭だけでもアローワークの人はそのまま信じてくれるから忘れてたけど、ここでは我々は新人と同じ。討伐の証を持っていかなきゃ。」

そう言うとシーフは魔物の胴体を足で押さえながらツノを引っ張る。

ツノは多量の肉塊と共に体から分離し、描写するのも憚れるグロテスクな物体が作り出される。

2人ともその光景に顔をしかめる。

「「うわぁ…。」」


2人はアローワークの受付に戻っていた。

シーフが切り出す。

「洞窟の悪魔退治終わったよ。」

受付が2人をジロジロと見る。

「失礼ですが、討伐の証明となるものはありますか?」

シーフは待っていたといわんばかりに、とても書き表せない物体を取り出しテーブルに置く。

「はい、これ。あげるから好きなようにしてくれて構わない。」

受付は明らかにドン引いた様子で応じる。

「うわぁ…。

かしこまりました。鑑定に回しますのでちょっとお待ちください。」

受付が物体に触れるための心の準備をしていると、シーフが思い付く。

「あ、そうだ。

洞窟の中でイフリートのオーブを手に入れたんだけど、買い取りとかやってます?」

受付はシーフが取り出したオーブを見ると、驚いた様子で慌てて奥へ下がっていく。

「今、上の者を呼んで参ります!」

シーフが不思議そうに受付の後ろ姿を見つめる。

「どうしたんだろう?

驚きたいのはこっちだよ。

さっきも店に見せたら1万円で買う、とか言ってきたし。こんな程度のアイテムに騒ぎすぎだよね。」

黒魔術師が同意する。

「本当だよね、あのカタコトの店主。

普通はああいうキャラは騙そうとするって相場が決まってるのに。」

そんなことを話していると、怪しい者が慌てた様子で駆け込んでくる。

「お客サン、さっきのまだ売ってナイか?

さっきは安く言い過ぎたネ。15,000円出すヨ。」

すると受付の奥から大柄な男が歩きながら現れて言い放つ。

「おうおう、相手が素人だと思って買い叩こうってか。

うちは25,000円出すぞ!」

怪しい商人が応戦する。

「役所が民間の取引に介入するのは卑怯ネ!

私を殺す気ナノか?

…26,000円出すヨ。」

突然始まったオークションをただ見守る2人は怯える。

シーフがつぶやく。

「何この高値。今までこんな値段つくの見たこと無い…。」

シーフが続く。

「こわい…。あとでクレームつけられて逆恨みされたりしない?」


無事に売却を終えた2人は魔獣の鑑定結果を待っていた。

黒魔術師が待合スペースの端に置かれていた冊子をめくりながらつぶやく。

「検査ってPCRなんだね。ファンタジーの欠片もない。」

シーフが答える。

「肉片を見ただけで判定するのは難しいと思うよ。」

黒魔術師がつぶやく。

「いや、角の形状とかもっと別のそれらしい鑑定方法あるんじゃ…?」


シーフが意を決して告げる。

「今更だけど、今回の仕事を受けた目的を教えておこうと思う。」

黒魔術師が本を閉じるのを見ながらシーフは話す。

「今回の目的は、この大陸で産まれた魔物の強さを計ること。

テスは変だと思わなかった?ワイバーン程度が強敵認定されていたり、同じ黒魔術師、しかも経験が長いのに使える魔法のレベルが低かったり。

海底洞窟でミミック程度に兵隊が大量にやられていたこともかな。」

シーフが続ける。

「そこで私は思った。もしかして、この大陸はモンスターが弱くて、人間もそれに比例した程度の実力しか持っていないんじゃないか、と。

で、実際にどうだったかと言えば洞窟で見ての通りさ。

つまり、この国のワーカーも兵士も私たちにとっては恐れる必要は無いってことだよ。」

黒魔術師が相づちを打つ。

「なるほどね。じゃあ、ひと安心だ。」

シーフが落ち着いたトーンで付け加える。

「むしろ、覚悟をして欲しい。

この国の兵士が強ければ逃げの一択だけど、そうじゃなかった。

この国の軍と敵対することになった場合に、戦って強行突破という選択肢が残るってことさ。

 ノルドやエリアが作戦を立案する上で対人戦の選択肢が有力な選択になるってことは対人戦を行う回数が多くなるということ。

対人戦は工夫次第で結果がひっくり返り得るからね。さっきの洞窟の中みたいに慎重に取り組む必要があるよ。」

「うん、分かった。食事中の時間以外の感じだね。」

「そう。洞窟の中にいた間の全ての時間みたいな感じ。」


2人は用事を全て終えてアローワークの待合スペースでくつろいでいた。

「テスのこのあとの予定は?」

「ノルドに魔法の訓練をしてもらうことになってる。ここで待ち合わせ。」

「がんばり屋さんだねえ。私は水族館の中を偵察してくるよ。」

シーフはそう言うと立ち上がり出口の方へ歩き出す。

まん中ほどまで歩くと振り返り黒魔術師に声をかける。

「あんまり根を詰め過ぎないようにね。適度に休息を取るんだよ!」

黒魔術師は頷く。

「うん、分かった。」


シーフが去ってしばらく待つと、賢者がやってくる。

黒魔術師の所にやって来ると先ほどまでシーフが座っていた席に腰掛ける。

「ゴメン、遅くなった。水族…人気スポットの視察で思ったより時間を食ってね。」

「いや、大丈夫。こっちもついさっき終わったばかりだから。」

賢者が尋ねる。

「早速行くかい?それともちょっと休む?」

黒魔術師が答える。

「少し休みたいかな。30分くらい。」

賢者は頷く。

「分かった。もうちょっとしてから出掛けようか。」

黒魔術師はふと賢者に尋ねる。

「一個聞いていい?

濡れた路面を高速で走行した時ブレーキや…。」

賢者が食いぎみに答える。

「ハイドロプレーニング現象。」


白魔術師と狩人は町の中心部を歩いていた。

白魔術師がつぶやく。

「この大陸のものって分かるような白魔術師用の装備あるか探したけど全然無いね。」

狩人が応じる。

「そのローブってどれもほぼ一緒だろ?むしろ何が違うんだよ。」

白魔術師が答える。

「袖の赤いギザギザの周期の長さとか色合い、この模様の中にさりげなく地名がデザインされて紛れてたりとか色々あるでしょ。気づいてないの?」

狩人が応じる。

「そんな些細な違い分かるわけ無いだろ。

木刀に洞爺湖と書いてあるか摩周湖と書いてあるかぐらいの違いしか無い。

ベースの部分は一緒でちょっと表面を違いがあるように見せかけただけだろ?」

白魔術師がため息をつく。

「はぁ…まったく。何も分かっちゃいない。

だいたい、生地だって色々種類があって、風通しのいいものや保温性が高いもの、破れにくいものとかいっぱいあるんだから!」

そんなことを話していると、道端にいた占い師が声をかけてくる。

「そこの方たち、新時代占いはいかがかね?無料にしておくよ。」

狩人が思わず足を止める。

「無料?どうやって商売を成り立たせているんだ?」

占い師が答える。

「お代は、終わってから信用できると思えばふさわしいと思った額を支払っていただけば結構。

ぶっちゃけて言えばまだ修行中なのです。本当はこちらから協力料を支払わなければならないのかもしれませんが、そこを厚かましくも無料、場合によってはお代を頂こうというのです。

この厚かましさに免じて占わせては頂けませんか?」

白魔術師がため息をつく。

「捕まった時点で負けだよ。付き合うしかないね。」


占い師は道端に置いていた小さいテーブルの上にあるパソコンの電源を入れ、2人をテーブルのそばに置いてある丸椅子に座るよう促す。

パソコンのOSが立ち上がったのを確認すると、顔を上げる。

占い師は2人の格好を見てなにやら小声でつぶやきながらなにやらパソコンに打ち込んでいく。

「ローブ…白…フード付き…。確率93%か。」

占い師は再び顔を上げ2人に尋ねる。

「お2人は白魔術師と狩人では?」

2人はやや困惑しつつ答える。

「うん。まあね…。恰好を見るだけで分かるような気もするけど。」

「お、おう…。その通り狩人だよ。」

占い師は続けて問いかける。

「失礼ですが、お名前を聞いても?」

2人はやや困惑しつつ答える。

「リンです。」

「ルーネイトです。」

占い師はまたぶつぶつ言いながらパソコンになにやら打ち込んでいく。

その様子を見ながら白魔術師は小声で狩人にささやく。

「(なんか私の知ってる占いと違う…。)」

「(新時代占いって言ってたし、そういうものなんだろ?…多分。)」

占い師が顔を上げる。

「お2人はこの国の方ではありませんね?」

狩人が困惑しつつ答える。

「そうだよ。どこの情報源に不正アクセスしたのか知らないけど正解だ。」

占い師は更に尋ねる。

「先日ワイバーン退治の仕事に参加しておられますね?」

狩人が困惑しつつ答える。

「そうだよ。あそこのアローワーク、情報漏洩してやがるな。」

占い師が尋ねる。

「目的地はこの街ですか?それとももっと先ですか?」

白魔術師が答える。

「この街はまだ途中だよ。」

占い師はパソコンを見ずにそのまま告げる。

「お2人は近い内に多数の魔族と出会うでしょう。」

2人は内心ドキッとしたが平静を装う。

狩人は動揺を見せることなく尋ねる。

「ちなみに、どうしてなのか聞いてもいいかな?」

占い師が答える。

「あくまでウワサなんですがね。北部のどこかで魔族を募集しているという話がありまして。

どこか外国が魔族に絞って人員を集めているとか。

詳しくは分かりませんが、既に多くの魔族が国外に行き、それに続けとばかりに次々と魔族が北に向かっているそうです。

まだこの辺りではそうした動きは無いようですが、政府は魔族に別の需要があって流出する前に急いでかき集めているなんてウワサも耳にします。霧の大陸もつい先日まで何らかの目的で魔族を買い漁っていたとも聞きます。」

占い師は2人に告げる。

「占いは以上となります。いかがだったでしょうか。」

狩人は立ち上がると、5000円札を机に置く。

「この先の旅で役立つ情報が聞けた。ありがとう。」

白魔術師がつぶやく。

「占い要素無かったけどね…。」


自由行動の最終日の夜、一行はホテルのラウンジに集まっていた。

賢者がメンバーに告げる。

「さて、明日が本番となる訳だが、作戦を建てる前に集めた情報を共有しよう。」

賢者が続ける。

「まず私から。

アローワークの受付の人から雑談で聞いたのだけど、この国の北端の魔都マエバシという所で、水の大陸から来た船団が魔族の人々を集めているらしい。

なんとも怪しい話だが、その話を信じてかなりの数の魔族が既に北に向かって移動しているのは確かなんだそうだ。」

白魔術師が尋ねる。

「その情報を得るのにいくら払ったの?」

賢者はなぜそんなことを聞くのか不思議に思いつつ答える。

「金なんか払って無いけど…。

ルーネイト、渋い顔をしてどうした?」

狩人が顔をそらす。

「何でもない!それより話を続けてくれよ。」

賢者の後を忍者が受ける。

「私もその話を水族館で聞いた。」

賢者が手短に突っ込む。

「なんでそんな所で国際情勢の情報を得てるんだよ。」

忍者が続ける。

「グリーンガーデンの政府は恐らく魔族が流出しきる前に、霧の大陸に売る者を確保するために慌てて今回の人集め、人狩りを行なったのだろう。

 もっとも、霧の大陸では…霧の大陸の人間じゃない者がいるここでは理由は話せないが、それほどたくさんの人数は必要としていないはず。霧の大陸に売り払う以外にも目的があるのかもしれんな。」


獣人が意を決して話し出す。

「恐らく新しい種族を産み出す実験に利用するのでしょう。

みなさんも私を見て思う所はあるでしょう?」

ナイトが答える。

「働いている年数の割に実力が低い。」

賢者が答える。

「テスに能力を抜かれているのに焦ることもなく努力もしない。」

黒魔術師が答える。

「魔法に対する知識が私よりも浅く、何を聞いても答えられないしむしろ私が教えることもある。」

獣人は困惑する。

「みなさん辛辣だなぁ。

でも言いたいのはそういうことじゃなくて見た目の事です。」

白魔術師が答える。

「体をよく洗えてない。全身、微妙に汚い。」

忍者が答える。

「体型がだらしない。普段怠けている証拠。」

狩人が答える。

「気を張るべき状況でも顔がだらけててちょっと腹が立つ。」

シーフが答える。

「魔物に対して知識が無いのか、魔物がいる所で迂闊な動きをしてこっちがヒヤヒヤしているのに平然と歩き回る。」

獣人は申し訳なさそな様子でややトーンダウンしつつもそれでも告げる。

「そういうことでもなくて、私の種族についてです。

どうやって生まれたか気になりませんか?」

忍者が割って入る。

「もう尺が無いから続きは次回にしてくれ。」

獣人が不満を漏らす。

「私、ディスられたままで終わりですか?冒頭のカルボナーラのくだりからアンコウ、中華料理のくだりが無ければいけたんじゃないですかね。」

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