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2章-3

17話「第2章3話」



[前回のあらすじ]

前話ってどんな話だっけ?酒は飲んでも呑まれるな、とかそんな話だった気がする。


一行は宿舎で朝食をとっていた。

シーフは、小分けの透明な袋を開けて味付け海苔をお椀の白米に乗せ、味付け海苔を白米を巻き込みながら箸で掴む。

「軍の人はまだ食堂には来ないんだね。」

白魔術師が窓の外に目をやる。

「朝のラジオ体操があるんだって。それが終わってから食事らしいよ。」

シーフは焼き鮭を白米と共に頬張ると納豆を混ぜながら相づちを打つ。

「へぇ、そうなんだ。」

狩人はゆで卵の殻を剥くと、食卓に置かれた塩の小瓶に手を伸ばす。

忍者はその様子を見て尋ねる。

「卵には塩派閥か?」

狩人は少し驚く。

「目玉焼きには派閥があるけど、ゆで卵にもあるのか?」

ナイトがサラダにドレッシングをかけながら食卓くに置かれたソース類を確認する。

「一般ではどうか分からんが、今あるものの中で選ぶなら塩しかないだろう。」

黒魔術師が手元の小袋を持ち上げる。

「ケチャップもあるよ。さっきゆで卵用に貰ってきた。」

一同は声を揃える。

『ケチャップ!?』

黒魔術師はメンバーをキョロキョロと見渡す。

「あれっ?そんなに変なこと言った?」


一行は一通り食べ終えて緑茶を啜りながら外を眺めていた。

外では軍関係者が体操のために集まっていた。

白魔術師が集団の1ヵ所を指差す。

「あの2人、あそこにいるね。」

ナイトが相づちを打つ。

「本当だ。なんだかツラそうだな。二日酔いだろうな。」

賢者がやんわりと突っ込む。

「次の日の仕事に支障出てるじゃねーか。典型的な反面教師ムーブだな。」


ラジオ体操の曲が流れ始める中、白魔術師が疑問を投げ掛ける。

「中盤ぐらいにある、手足の運動のバージョン2みたいな奴ってどういう効果があるんだろう。」

狩人が少し考える。

「あれか。両手を肩にタッチしてから上にまっすぐ伸ばす…。」

「そう、それ。同時に足も左右にちょっと移動させるやつ。

なんかあれだけ難易度高いよね。」

獣人が答える。

「腕が上に上がらなくならないようにするため、つまり四十肩とか五十肩とか言われるやつを防止するためじゃないですかね。」

ナイトが外の体操する人々を眺める。

「腕が上がってない人も結構いるみたいだけど。

狙いがそれだとすると効果のほどは疑問だな。」

白魔術師がさらに新しく疑問を投げ掛ける。

「あとさ、最後の深呼吸ってペース速くない?

1小節内で吸って吐くって、過呼吸になりそう。」

忍者が同調する。

「あそこ回数半分でいいよな。」



体操が終わってしばらくすると、軍関係者が続々と食堂に入ってくる。

一行が片付けをしていると、監視員がやってくる。

「おはようございます。何を話してたんです?」

賢者が答える。

「…深呼吸の速度、かな?」

監視員が不思議そうな顔をする。

「…えっ?どういうことですか?」


一行は準備を整え宿舎の外に出ていた。

狩人が賢者に確認する。

「なあ、あの2人を待つ必要あるのか?」

賢者が答える。

「いいじゃないか。結果的には予定通りこの町に着けたし、宿も朝食も格安で確保できたし。」

狩人が疑問を呈する。

「そうだけどさ。

あんまり恩ばかり受けていると向こうから何か依頼された時に断れなくなるんじゃないか。」

ナイトも同調する。

「実際我々はこうして何の利益にもならないのにあいつらを待ってやっているわけだ。

無駄に気を使い続けるよりは、何か要求を聞いておいた方がいいんじゃないか。」

白魔術師か続く。

「そう言えば自ら監視役を志願したとか言ってたね。訳ありかな。」


しばらくすると、監視員2人が駆けてくる。

「…なんで皆さん待ってるんです?」

賢者はあらかじめ決めていた内容を問う。

「いや、世話になったからお礼をしようかと思ってね。

我々にできることはあるかい?」

監視員は席に座ると、真面目な顔で答える。

「実は、この国の人間には頼めないことがありまして。

 できれば皆様の実力のほどを確認してからお話ししようと思ったのですが…。」

「連れ去られた我々の仲間の救出です。」

狩人が尋ねる。

「穏やかな話じゃないな。

誰がどこに誰によって拐われたって?」

監視員が答える。

「拐われた…いや、騙されて着いていってしまったのは我々の幼馴染のカザグルマヤシチーです。」

賢者がすかさず突っ込む。

「競走馬みたいな名前やめろ!」

監視員が続ける。

「皆さんの大陸でも同じでしょうが、我々魔族は社会的な地位が低いのです。」

獣人以外が互いに顔を見合わせるが、監視員は気にせず話を続ける。

「我々の集落は王都ミットの近郊にあります。

つい先日、貧困に苦しむ我々の集落に政府の役人がやって来ました。

彼らは我々に提案をしました。

子供の身柄を売り渡さないか、と。」

「さらに彼らは付け加えました。

霧の大陸が魔族の移住者を探している、値は下がるが大人でも構わない、と。」

忍者が食いつく。

「値段設定は?」

白魔術師が苦言を呈する。

「そんなこと聞いていいの?」

忍者が反論する。

「批判を受けるのは仕方ない。だが、重要な所だ。」

監視員が答える。

「たしか、ひとり500万円とかそのぐらいだったはずです。」

忍者がつぶやく。

「…やっぱりそうだよな。」

監視員は話を戻す。

「南の3国が人間を求めるなんてそうそう無いこと。怪しさしか無い話です。」

ナイトがつぶやく。

「南の3国か。この国から見ればそういう分類になるんだな。」

監視員が続ける。

「人身売買の目的は臓器、命の保証の無い労働、そして実験と相場が決まっています。

いずれにせよ言葉通りの移住ではありません。ロクな未来は待ち受けていないことが明白です。」

「私たちの幼馴染は、移住希望者として連れていかれました。

しかし、それは自身の意思ではありませんでした。」

「妻や子供たちに売られたのです。」

「理由は想像がつきます。

恐らく度重なる不倫でしょう。

それが奥様や子供、隠し子、愛人の恨みをかったのだと思います。」

「根は悪い奴ではないんです。

たしかに昔は万引きや強盗、暴力事件を重ねていましたが、今ではせいぜい麻薬の密売や詐欺しかしていないいい奴なんです。」

賢者が耐えきれず突っ込む。

「なんだそのクズ!

助ける気がしない、っていうかもっと重い罰を受けさせろ!」

監視員が頭を避ける。

「どうか、カザグルマヤシチーやハチベールたち、自分の意思ではなく連れていかれた人たちを助けて頂けないでしょうか。」

賢者がすかさず突っ込む。

「知らない奴がひとり増えたぞ!誰だよハチベールって!」

監視員が答える。

「早くに両親を亡くし皆で持ち回りで世話していた子です。

厄介者だと思う者がいてもおかしくありませんね。」

賢者が突っ込む。

「そっちはまともなのかよ。説得したいならそっちに重点をおいて説明しろよ…。」

ナイトが困った顔をする。

「仮にも形式上は正当に売買されたものを奪い返せ、ということか。この国に喧嘩を売るわけだ。ちょっとどころじゃなく手に余るな。」

忍者が静かに口を開く。

「…条件次第だ。」

賢者が難色を示す。

「何を言っているんだ。さすがに国を相手に喧嘩を売るのは無茶だぞ。」

忍者が答える。

「実力行使で奪う以外に選択肢はいくらでもあるだろ。

販売…敢えて販売と言おう。販売価格は500万円なのだろう?それ以上の金を出せば取り返せる可能性は十分あるはず。

 幸いにして我々は本当に霧の大陸の人間だ。うまいことその場での売買に持ち込むことはそう難しくないはず。

 不条理に売り飛ばされる人間を黙って見過ごすつもりはないからできる限りのことはしてもいい。

 みなが反対するなら諦めるが。」

忍者は皆がボケじゃないと認識した様子であることを確認すると続きを話す。

「我々が支払った分をそいつ、または代理となる人物が返してくれる見込があることが大前提だ。

我々も今それなりに手持ちの金はあるが、せいぜい片手で数えられる位しか買うことは出来ない。

当然、金が返ってくる見込みのある奴だけを厳選することになるだろう。

不倫の常習犯なんか問題外だ。

助けたいという人物の片方は確実に見捨てることになる。

まず、それでよいか確認したい。」

監視員は互いに見合わせるとうなずく。

「それで構いません。」

賢者が突っ込む。

「いいんかい!」

監視員が補足する。

「あいつの分は私たちが用意します。」

「2日あれば軍の裏金をパクって来れます。」

賢者が突っ込む。

「この国には悪人しかいないんかい!」

獣人が小声でつぶやく。

「これがこの国の標準だと思わないでください…。」


監視員が通帳を開き自分の預金の金額を確認する。

「裏金は冗談としても、なんとか1人分くらいは工面してみせます。」

「ただ、相手は公務員とはいえ犯罪組織まがいの連中。

実力のあるワーカーを雇いたいのですが、なにしろこれから大金を用意しなければならないもので、あまり資金が用意できません。

列車の情報と昨晩の宿と、15万円でなんとかなったりしないかなぁ、なんて…?」

賢者が答える。

「今うちは7人と役立たず1人の合わせて8人いる。8で割り切れない金額を提示するのはどうなんだろうね。」

獣人が素早く反応する。

「今、役立たずって言われた気が…。」

監視員がアローワークの入り口を指さす。

「たしかアローワークに高額な依頼がたくさん舞い込んでいたあったはず。我々もできうる限りお手伝いします。その働きの分で不足分としていただけないでしょうか。

さらわれた仲間は皆さんにとってはただのクズかもしれませんが、私たちにとっては幼いときから共に育ってきた唯一無二の親友なんです!

皆様にはたいした見返りは提供出来ません。お願いすることしか出来ません。

ですが、この身、この人生を全て差し上げる覚悟です。

なにとぞ、力をお貸しください!」

賢者が呆れた様子で応じる。

「ちょうどこの大陸での依頼の程度を確かめておきたいとは思っていたんだ。

この大陸の魔物の強さを把握しておきたいしね。

だけど、君たちの依頼を受けるかどうかは…。」

狩人が監視員の両肩に手を置く。

「…お前たちの心意気、伝わったッ!

必ず仲間を助けよう!いや、助けてみせる!」

白魔術師が呆れた様子でつぶやく。

「なんかやたら乗り気だなとは思ってたけど、やっぱりこうなるのね…。」


「というわけで、依頼を達成しまし、…。」

「いや、さすがにそこまで省略させねーよ?」

アローワークの職員は目の前で繰り広げられる忍者と賢者の茶番に屈することなく、通常通り業務をこなす。

「この支店で取り扱っている難易度が高い依頼はこの5つですね。

 メガマウスの生きた個体の捕獲

 リュウグウノツカイの生体の捕獲

 アオザメの生体の捕獲

 オオカミウオの生体10匹以上の捕獲

 オキナエビスガイの生体たくさん

」

賢者がすかさず突っ込む。

「どんだけ海の生き物に飢えてるんだよ!あと、知名度の低い深海の貝を混ぜるのやめろ!」

狩人が補足をする。

「アオザメは外洋性のサメで、もっとも速く泳ぐサメだと言われている。

典型的なネズミザメ科のサメの姿で、サメと言われて多くの人がイメージする形だと思っていい。

外洋性のサメの例に漏れず…。」

賢者が突っ込む。

「そんなとこフォローしなくていい!」

白魔術師が職員に尋ねる。

「魔物退治の依頼は無いの?

なるべく強いやつね。

デカくて叩きがいがあると、なおいいかな。」

シーフが続く。

「味もよければもっといい!」

賢者が素早く訂正を入れる。

「味についての条件は忘れてくれ。とにかく強い…いや、報酬が高い魔物の討伐を頼むよ。」

黒魔術師が突然声を上げる。

「できた…。

ずっと練習し続けてきた炎属性の魔法が初めて成功した…!」

賢者がすかさず突っ込む。

「なんでこのタイミングで修行してるんだよ!」

獣人がうなずく。

「TPOを考えないとダメだよ。」

賢者が突っ込む。

「お前は現時点でテスの下位互換なんだから、叱られるぐらいにもっと真面目に修行しろ!」

職員が困惑しながらも依頼を提示する。

「えっと、これですね。

 サキュバスの群れのせん滅

 ワイバーン退治

 霧の大陸の盗賊団を退去させる

」

シーフが真っ先に尋ねる。

「霧の大陸の盗賊って?」

職員が手元の書類を見ながら答える。

「少し前に、月夜の明星という盗賊団が霧の大陸から渡って来ましてね。

何らかの目的でこちらに渡ってきたようでミラーという幹部と数人の部下しかいないのですが、これが滅法強くて、有力なワーカーチームはもちろん、警察、果ては正規軍でさえ歯が立たないのです。

当初は討伐依頼だったのですが、難しそうなので、方法は何でもいいので国の外に出せば依頼達成と変更になっています。

報酬は、60万円で紹介料は無料です。

そして大事な点がもうひとつ。その過程で倒した魔物1体につき1,6500円をお支払します。」

忍者が首をひねる。

「過程で倒した魔物に報酬?しかも一匹につきそれなりの額…どういうことだ?」

忍者が自分で答える。

「ふふ。そんなことも分からないのか。

 つまり、盗賊団の方はオマケでむしろそっちの魔物討伐がメインってことさ。」

忍者が自分でリアクションする。

「な、なんだって!どうしてそんなことを!」

忍者が自分で答える。

「おそらくその魔物は表向きには好評できない魔物なのだろう。どこぞのデッカいスライムみたいに、何かの実験の失敗作とか。」

忍者が落ち着くと賢者が確認する。

「…気が済んだか?」

忍者はうなずく。


依頼の確認を終えた一行はアローワークから静かに出ていく。

職員はアローワークの扉が閉まるのを確認すると、やれやれと自分で自分の肩を叩く。

そして書類を片付けていると一行が慌てて戻ってくる。

「すっかり忘れてた…。魔物退治の依頼を探して来たんだった…。」

白魔術師が職員から半ば強引に書類を受け取りながめる。

「サキュバスにワイバーンねぇ…。サキュバスなんて初心者レベルだしワイバーンがなんとか中級レベルってところ。もっと戦いがいのある相手がよかったのだけど。」

職員が驚く。

「ワイバーンはかなり厳しい相手ですよ。

数年前、霧の大陸から飛来して以来、町や畑を荒らされ放題で困っているのです。」

忍者が問う。

「それで、相手は何匹なんだ?」

白魔術師が書類を確認する。

「1匹みたいだね…。

って、1匹だけ!?」

忍者は落ち着いた様子で白魔術師が持つ書類を受け取る。

「まさか一匹だけなんてことが…。」

忍者は書類に目を通すとわざとらしく驚いたリアクションをする。

「一匹だけ!?」

忍者は書類を賢者に渡す。

賢者は忍者を横目で見ながら書類を手に取る。

「私はそのノリツッコミやらないからな!」


賢者が職員に尋ねる。

「なんで単騎で飛来したワイバーンを何年も倒せずにいるんだ?

アクセスが難しい場所に棲んでいるのか?」

職員が答える。

「生息地はここから西の林の中です。特に危険な場所ではありませんが、その前が開けているため、コッソリと近づいて奇襲をかけることができないので、正面から戦うしか無いのです。

ワーカーの方々が幾度となく挑戦していますが、ワイバーンによる上空からの攻撃に耐えきれず一撃も与えることができないまま逃げ帰る。ずっとそれの繰り返しです。」

シーフがナイトに小声で確認する。

「(普通のワイバーン退治と条件一緒じゃない?)」

「(それな。私もそれ思った。)」

忍者は納得いかない様子だったがもうひとつの依頼の方に目を移す。

「こっちは?サキュバス退治だっけ。これも数体を倒すだけだったりするのか?」

職員が説明を始める。

「百数十年前のある日、海から招かれざる厄介な客人が何の前触れもなくやって来ました。

ウェーノの町の漁師が前の日の嵐が明けた早朝に船を確認するために海岸を訪れると、そこには大型の船舶が座礁していました。

漁師が恐る恐る中をあらためると、そこには女性が大量にぐったりとしていました。

漁師は慌てて一番近くの女性を抱き抱え無事か尋ねました。

この漁師が最初の被害者でした。

解放されたサキュバスは漁師を毒牙にかけると仲間たちを次々と解放していきました。

軍による討伐隊も全て返り討ちにあい、なす術なく数日で大陸の南半分はひどい有り様になりました。

次第に子供、魔族になりますが、子供が産まれるとともに欲が薄れる個体が多く、それらは国の中に溶け込んでいきましたが、未だに衰えず暴れまわっている個体も少なからずいるのが実状です。

本件はそれらの未だ現役の個体の討伐となります。」

白魔術師が難色を示す。

「サキュバスかぁ。人権団体がうるさいからねぇ。」

獣人が不思議に思い尋ねる。

「人権?霧の大陸では魔物にも人権が発生するのですか?」

狩人が解説を始める。

「元々うちの大陸ではサキュバスは人間社会に紛れてひっそりと生活をしていた。

だが国家による人口の調査把握が進むと次第にどこに住む誰が正式な国民じゃない人物、つまり、誰が社会に潜むサキュバスなのかが知れ渡っていった。

多くの人々がサキュバスたちに対して税金を納めていないことなどに対して不満の声を上げ始めた。」

獣人が少し驚く。

「そんな軽い反応なんですか?他の国なら確実に討伐という話になるかと…。」

狩人が解説を続ける。

「どこにも悪いことを考える人間はいるもので、サキュバスが人権を持たないのをいいことに拉致監禁する連中が続々と現れた。」

獣人が不思議そうに尋ねる。

「手練れのワーカーや軍人がそういう行為に及んだ、ということですか?」

狩人が不思議そうにしながら答える。

「…?

いや、ごく普通の一般人だよ?

相手はサキュバスだ。成人なら女性でも余裕で好き放題できる位の戦闘力しかない。」

狩人が解説を続ける。

「サキュバス達に対する扱いは酷いものだった。

とても子供には見せられないし、端から見ていてかなり不快な物だったらしい。

事態を重く見た政府は緊急でサキュバスたちの救出および保護に乗り出した。

保護されたサキュバスたちから聞き出した実態は想像を遥かに越える内容だった。

その凄惨な内容を知りたいなら、霧の大陸の書店で『帰してください、ご主人様に叱られますから。』という本を探して欲しい。値段は大体1,250円で簡単に手に入るがR18指定されている点には気をつけてくれ。」

狩人は説明を続ける。

「大量に保護してみたものの、政府はその後にどう扱うかで苦悩させられた。

なにしろ相手は純粋なモンスターだ。」

黒魔術師が尋ねる。

「モンスター…魔物、と普通の動物ってどう違うの?」

狩人が答える。

「魔物は親子の連鎖ではなく自然発生する生き物だ。定義的には生き物じゃない、という人もいるけどね。

魔力的なもの…正体までは分かっていないが、何か嫌な感じの物から自然発生する。

様々な種類の魔物が産まれているが、同じ強さならどれも同じ強さだ。

魔力的なものを具現化したタイプ、実体を持つ物質として現界するタイプに分かれる。

倒すとその場で消えるスライムみたいなタイプと死体が残るオーガみたいな奴の差だな。

例外はあるが、実体の無いタイプは発生したらそれ以上増えないのに対して、実体を持つタイプは通常の動物と同じように繁殖して更に増える能力を持つ奴もいる。

サキュバスは実体を持つタイプだ。しかも人語を解し、人間との間での繁殖が可能という超特殊モンスターだ。」

「人間との間の子供は魔族と呼ばれる。

魔族を親とする子供は例外なく、相手が何であれ魔族になる。恐らく染色体以外での遺伝なのだろう。

寿命のないサキュバスと違い魔族の寿命は普通の人間と同じだ。

 人間との肉体的な差異はそれほど無いが、人間よりも魔法系が得意で身体能力は低い、という傾向がある。

魔族なんて呼び名だが何のことはない、普通の人間だよ。

…どうやらうちの大陸以外だと扱いはそうではないようだがね。」

狩人は話を戻す。

「話は戻るが、当時の政府は大量に保護したサキュバスをどうするかで頭を悩ませた。

政府は手をつけやすい、セントラル…霧の大陸で暮らしたいという者たちから対処した。

それまでも普通に暮らしていたのだから、ただ家に帰すだけだ。

法律で普通の人間とだいたい同じ権利と義務を与えて正式に国民としてカウントした。

年金とか定年をどうするか、とか色々問題はあったが、それ以外の者たちと比べればすんなりと解決した。」

「問題はそれ以外の者たちだ。心の傷などで元の生活には戻りたくないという者たちだ。

どこかに保護区を作って住まわせるか、よその国に行ってもらうかで議論になった。

だが、モンスターとしてはか弱い存在であることがネックになった。 」

「山奥のどこかに住まわせるにしても自分たちの力だけで森の魔物や動物を退けるのは難しい程度の能力しか持っていない。

他国に移住の打診をしようにも、他国に対して、モンスターを受け入れてくれないか、なんてことはとても言い出せない。」

「長時間の議論の末、苦肉の策として、本人たちの意思でどこかに密入国してもらうというなかなか際どい策が採用された。

巨大な船を何隻か与え、航海術を教えて好きな所へと旅立たせた。

あとの経緯は誰も知る由も無い。もう百数十年前の話。結末は闇の中さ。」

獣人は狩人の解説が終わると即座に反応する。

「もしかして数十年前、世界各地で同時多発的に魔族が急増したのって、皆さんのせいですか?」

白魔術師が怪訝な顔を浮かべる。

「いや、私たちそんなに長生きじゃないし。その件には携わってないよ。」

獣人がやや困惑しながら応じる。

「いやまあ、そりゃそうですけど…。

状況証拠からして明らかに霧の大陸からバラまかれてるじゃないですか!」

賢者が迷惑そうに答える。

「たまたまじゃないか?本人たちに聞かないと分からないだろ。」

監視員がつぶやく。

「うちの婆さんは霧の大陸から来たって言ってたなあ。その事を尋ねる度に、あそこにはもう二度と戻りたくないって言ってるけど。」

獣人が詰め寄る。

「ほら、やっぱりそうじゃないですか!

元凶は皆さんで間違いないですよ!」

白魔術師が怪訝な顔を浮かべる。

「いや、私たちそんなに長生きじゃないし。その件には携わってないよ。」

獣人がやや困惑しながら応じる。

「いやまあ、そうですけど…。

ああ、もう。面倒くさいな!」


「というわけで、ワイバーン退治にやって来まし…た、と。」

忍者の宣言に賢者が突っ込む。

「あの後結局報酬の金額が一番高いワイバーン退治をすることになって今ターゲットの巣に向かってこの草原を歩いているけど特に盛り上がりも無かったのでカットした体で進めます、みたいな感じ出すのやめろ!」

白魔術師が空を見上げる。

「いい天気だねえ。こんな時は大型のモンスターをぶっ叩きたくなるね!」

賢者が突っ込む。

「天気とその欲求が結び付くのは世界広しといえどもお前だけだよ。」


黒魔術師が獣人に尋ねる。

「なんでこの国の依頼は海の生物関係が多いの?」

獣人は少し考えてから答える。

「そうだなあ。多分だけど海と接している所が少ないからじゃないかな?

どこも断崖絶壁ばかりで、まともな海岸が南端と王都ともうひとつしか無いからね。

私も深海魚には興味あるかなぁ。発光している所とか見てみたいし。」

獣人が狩人の方に振り返る。

「…ということで合ってますか?」

賢者が突っ込む。

「誰に確認してるんだよ!」

狩人が補足する。

「深海魚には体の下面に発光器を持つものが多い。」

賢者がすかさず突っ込む。

「お前はどこを補足してるんだよ!」

狩人が続ける。

「体の下面の発光器の多くは自分の体を目立たなくさせる効果があると考えられている。」

黒魔術師が疑問をぶつける。

「光ったら目立つんじゃないの?」

狩人が答える。

「いわゆる、いい質問って奴だな。」

黒魔術師は悔しそうにつぶやく。

「くっ…うまくひっかかっちゃったか。」

狩人は空を見上げる。

「うーん、鳥は飛んでないか。」

賢者がしびれを切らす。

「早く説明しろよ!

よく分からないボケ方しやがって…。」

狩人がつぶやく。

「いや、今のはボケたつもりではなかったんだが…。」


「まずは海の中の常識から説明する必要があるかな。

何かの企画で外洋を泳ぐというケースを考えてごらんよ。

安全のために周りをスタッフが乗った船でガードした場合、それで十分だろうか。

もちろん、そんなことはない。海の中の危険な生物はほぼ、いや。ほぼなんてつける必要は無い。100%水面よりも下だ。

下を泳ぐ海のハンターたちには海水面でバシャバシャやる者がどう映るか。

まっ白な何もないスクリーンに影絵のごとく真っ黒な影が、魚的には異常をきたした動き、つまり弱った状態でもがいているように見えるだろう。すいめんにいる連中がそれほど時を待たずして海のハンターたちの餌になったもしても何の不思議も無い。

魚や海に住む哺乳類のことを思い浮かべてごらん。浅瀬に住む熱帯魚以外の普通の魚はだいたい腹側が白色になっているだろ。下から見た時に目立つのを軽減するのに役立つのだそうだ。」

「深海も理論は同じ。光の届かぬ深海、というのも人間の眼での話。深海の住人にとっては浅い階層での話と同じで、下から見上げられると上にいる存在は白いキャンバスの中で動く黒い物体だ。

だから、下から見づらくなるように、黒さを軽減した方が敵に見つかりにくくなって有利なんだよ。

とは言え、浅い所と違って光の絶対量が少ないから腹の色を白くすることによる効果が薄い。

代わりに用いられているのが光だ。

上を見上げた時の明るさと同じ位にやんわり光っておけば目立たなくなる。

だから深海魚には、身を守るのに有利な、腹部の微弱な発光を行う種が多くいるのだろうと言われている。」

ナイトがつぶやく。

「海の話しているからこれから海に行くと思うだろ?なんと今我々は山の方向に歩いてるんだぜ。

今役に立つ話は無いのかい?」

狩人が答える。

「いわゆる、いい質問って奴だな。」

ナイトは悔しそうにつぶやく。

「くっ…さすがはルーネイト。この先のシナリオも用意していたか。」

狩人が説明をする。

「上を見上げた時の影の理論は地上では全く役に立たない。

なにせ地上から上空の生き物にアクセスするのは難しいからな。泳げば上に移動できる海とは違い、地上から上空に移動するのは労力が大きい。獲物にバレるくらい必死に頑張って羽ばたく、風が来るまでずっと待って獲物が去った頃に飛び上がる、といった具合だ。

昼間に至っては、上を見上げることさえ難しい。太陽の強すぎる光で眼を痛めるのが関の山だ。見上げてセルフ目潰しするよりは空の生き物が作る地表の影に注視した方がよっぽど有意義だ。

地上では腹が白いメリットは、下からの見つけにくさという点では海中と比べてかなり少ない。

空を飛ぶ生き物である鳥でも腹側が白くないやつは珍しくもないし、ましてや発光する奴なんていない。」

「でも不思議なこともあって、ネコやイヌ、タヌキといった地表で暮らす生き物も腹側が白っぽい者が多い。

色々と説はあるみたいだから興味があるなら自由研究の課題としてでも調べてみるといい。」

狩人は前方の上空を指さす。

「ちなみにあそこの、今こちらにまっすぐ向かって来ているワイバーンは腹が白いタイプだな。」

メンバーに動揺が走るが狩人は説明を続ける。

「ワイバーンは実体を持つタイプの魔物で、つがいを作って産卵することもある。

上空から降下して牛や馬や羊をさらい巣に持ち帰り食する。

気性は荒く、危害を加えてきた者や巣を襲おうとする者はもちろん、今こうして我々の上空でホバリングして狙いを定めていることで分かると思うが、縄張りに踏み入るだけでも襲ってくる。」

賢者が突っ込む。

「もう解説してる場合じゃないぞ!もう相手の射程圏内だ、みんな備えろ!」

狩人の解説を待つことなくワイバーンは大きく息を吸い込むと勢いよく炎を吐き出す。

白魔術師と賢者がいち早く魔法で防壁を張っていたため一行は被害を免れる。

しかし狩人は構わず説明を続ける。

「最大の武器は見ての通りの炎だ。

吸い込んだ空気と共に吹き出しているからそう長時間は続かない。」

白魔術師がようやく狩人にクレームを入れる。

「何をのんびりと解説してるのさ!

早く仕留めなさいよ!あんたならこの距離なら余裕でしょ。」

狩人はやれやれといった様子でゆっくりと弓に矢をつがえ眩しそうにワイバーンを見上げるが、すぐに矢を矢筒に戻す。

「そうそう、大事なことを言い忘れた。

空を飛んで狩りを行う魔物は大抵、上からの攻撃に弱い。太陽なんて見たら目を痛めるし、上、つまり太陽の方向から大型の魔物を襲う奴なんていないからね。

…見ての通り、な。」

狩人が言い終わるとほぼ同時に、何かがワイバーンに向かって上空から高速で落下する。ワイバーンはものすごい速さで地表に落下し激しい砂ぼこりを立てる。

忍者が真っ先に反応する。

「やったか!?」

賢者がすかさず突っ込む。

「失敗フラグ立てるのやめろ!」

砂ぼこりがおさまっていくと徐々にワイバーンの姿が見えてくる。

姿を表したワイバーンはぐったりと地に伏せ、完全に息絶えていた。

賢者が突っ込む。

「本当にやってるんかい!」


ワイバーンを落下で仕留めたシーフは手にしている槍をワイバーンから静かに抜き取ると、槍に付着した血液を布で拭き取り槍を収納する。

「一応、竜騎士だからね。この位は朝飯前だよ。

そう言えば、朝食って食べたっけ?」

忍者が応じる。

「やだわ、おじいさんったら。

朝ごはんならさっき食べたでしょ。

ゆで卵にケチャップ事件があったじゃない。」

「ああ、そう言われれば。

…あれは衝撃だったなあ。」

黒魔術師が抗議の声を上げる。

「それ、そんなにおかしい!?」


「スクランブルエッグとか目玉焼きはケチャップ一択じゃん。なら、ゆで卵だってケチャップでいいじゃん。」

賢者が突っ込む。

「目玉焼きは、一択ではないだろ。

それと、調理方法の差は大きい。

アジの刺身や寿司にはショウガやワサビをつけるが、アジの開きにつける奴はいない。」

「そうは言ってもさ、合うか合わないで言えば…。」

などといった、アローワークまで戻ってきた一行によるやり取りを目の前で繰り広げられている職員は、ひたすらに困惑する。

「(そんな話、完了報告に来る前に済ませてくれればいいのに。)」


アローワークから出た一行は、今後の予定を話し合っていた。

賢者が一同を見渡す。

「さて、今日の予定はどうしようか。」

シーフが勢いよく手を挙げる。

「お昼ご飯!

早く食べないと飢え死にしてしまう!」

賢者が突っ込む。

「地下迷宮でパンを切らしたト○ネコか!」

ナイトが獣人に尋ねる。

「この街には、なにか名物はないのか?」

獣人が答える。

「オーミャの名物は…。」

一同が固唾を飲む。

「…何もないですね。」

賢者が素早く突っ込む。

「何も無いんかい!」

獣人が補足する。

「この一帯、サイタマ地方は、これと言ったものは無いですね。

結構都会で、何でも揃うけどこれと言った名物は無い、住むには便利な居住向け地方です。」

監視員が補足する。

「チェーン店なら普通に何でもありますよ。」

「この街を発祥とする、メダカ屋っていう駅前中華の最大手チェーンがそこそこ有名ですよ。」

賢者がつぶやく。

「駅前中華か…昨日の夜もそうだったんだよなぁ。」


一行は件の中華屋でメニューを広げていた。

獣人が席に置かれたタブレットを手に取る。

「注文はこれで入力してください。」

白魔術師が応じる。

「ああ、よくある高齢者切り捨てのシステムね。」

賢者がすかさず突っ込む。

「おい、やめろ!

ここはわりと使いやすい方だろ。

メニューもちゃんと、広げて見られる紙のやつあるし。」

シーフが続く。

「たまに紙のメニューも無くてタブレットしかないチェーン店あるよね。俯瞰して見られないからメニュー選びにくいんだよね。あれって客の満足度下げてまで導入するほど店にとってメリットあるのかなぁ。」

忍者が答える。

「仕方ないだろう。上層部は現場のことなんて分からない。ましてや客の気持ちなんてな。」

ナイトが獣人に尋ねる。

「オススメとか面白いものはあるのかい?」

獣人がメニューのページを何度かめくり、それが終わると、メニューと一緒に置いてあったラミネート加工された紙の表と裏を確認する。

「一部店舗でしか扱っていないキムチチャーハンというものがあるのですが…。」

狩人が反応する。

「水っぽいキムチをチャーハンに合わせるって結構大変なんだよ。

その腕前を拝見することとしようか。」

白魔術師が同調する。

「面白そう!じゃあ、私もそれで!」

忍者が続く。

「ぐぬぬ…負けてられん。私もキムチチャーハンだ!」

賢者が突っ込む。

「誰と何の勝負だ。

まあ、いいや。私もそれで。」

シーフも手を挙げる。

「私も!」

ナイトが続く。

「私も空気を読んで、それで。」

賢者が突っ込む。

「空気ってなんだよ。キムチチャーハンに対して気を使う奴なんて見たこと無いわ。」

黒魔術師も手を挙げる。

「私も空気キムチチャーハン!」

賢者が突っ込む。

「そういう料理みたいに言うな!」

獣人がつぶやくように告げる。

「タブレットで各自注文って申し上げたはずなんですが…。

それは置いておくとして、先ほどからメニューを探しているのですが、この店舗には無いみたいです。」

白魔術師が不満を漏らす。

「ええーっ。もう口の中がキムチチャーハン仕様だよ。

キムチチャーハンを返して!」

賢者が突っ込む。

「仕様って何だ。食べたい料理を表現するのにそんな単語使わねーわ。」

シーフが告げる。

「早くキムチチャーハンを食べないと、飢え死にしてしまう!」

賢者が突っ込む。

「だから、お前はト○ネコか!」

監視員が提案する。

「この近くにあと数店舗あるので行ってみますか?」

「ここからちょっと南に行った店舗で去年食べたことがあります。」

賢者が突っ込む。

「お、おう。お前たちいたのか。」


2つ目の店舗に移動した一行は、メニューの隅から隅まで目的のものを探していた。

白魔術師がメニューを閉じる。

「もしかして、無い?」

奥の店員に聞きに行っていた獣人が戻ってくる。

「前は取り扱っていたそうですが、今はもうこの店舗では扱っていないそうです。

取り扱い店舗はネット上に公開されているからそれを見て欲しいとのことです。」


一行はアローワークの受付に来ていた。

賢者は千円札を差し出す。

「アローワークに対して仕事を依頼したい。」

受付は困惑しつつも応じる。

「えっと…内容は何でしょうか。」

賢者が答える。

「メダカ屋のキムチチャーハンの取り扱い店舗を調べるからちょっとPC貸してください。」


困惑しつつも受付が席を空けると忍者が代わりに座る。

「まずはメニューのページに行って…。

ああ、これか。確かに店舗限定って書いてあるな。」

シーフが急かす。

「いいから個別ページに飛んでよ。

どこの店舗で取り扱っているか情報があるでしょ。」

忍者は目的の商品をクリックする。

すると商品単独のページに画面が遷移する。

パーティ皆で画面を覗き込むが、それらしい情報は見当たらない。

賢者が突っ込む。

「無いんかい!」

賢者の突っ込みをよそに、忍者が適当にサイト内を探す。

「…ああ、あった。

トップのお知らせの所にひっそりとあったよ。」

賢者が突っ込む。

「なんでメニューの個別ページからリンクして無いんだよ!

メニュー名とかにaタグひとつ足せばいいだけだろ!webの素人か!

よくこのレベルで注文システム導入できたな!」

狩人が呆れるようにつぶやく。

「こんな些細なことに対してよくそんなに長く突っ込めるな…。」

白魔術師が近くの椅子に座り込む。

「もう歩くのめんどい!

料理持ってきてよ。」

忍者がため息をつく。

「じゃあ、届けてもらうか?

配達業者に頼むかい?」

白魔術師が答える。

「うん、もうそれでいいでしょ。」


数十分後、一行がアローワークの、受付からは離れた場所にある待ち合わせ用スペースで昼食をとっていると、受付に現地のモブワーカーチームがやってくる。

「えっと…完了報告に来たんだが…さすがにノータッチでスルーは出来ない。

…あの連中は何だい?」

受付が遠目に賢者たちを眺めながら答える。

「外国からいらしたワーカーチームですよ。」

「そうかい。あんな所で本格的に昼食を食べてもいいものなのかい?」

「飲食は自由なのですが、あくまで軽食しか想定していなかったので困惑しております。」

「そうだろうな。

それであの非常識軍団はどこの国の人たちなんだ?」

受付が手に持った書類を整えながら答える。

「霧の大陸です。

盗賊退治の依頼を受けているとのことですが、元々は数年前のあの大戦争について調べるためにうちの国に来たんだそうですよ。」

モブはそれを聞くと急に真面目な顔になる。

「やっぱり、霧の大陸は仕返しを目論んでいて、その斥候ってことだよな。

国の危機じゃないか。すぐに上に報告した方がいいんじゃないか?」

受付は淡々と答える。

「もちろん私もそう思いますがね、私は守秘義務があるので職務上知り得た情報は漏らせないのですよ。

こうやって雑談で話すのが精一杯なんです。

話した相手がどう行動するかまでは誰も拘束できませんがね。」

モブは身を乗り出す。

「なるほどな。私たちが代わりに通報しろってことか。それであんたには謝礼金のうちいくらバックすればいい?」

「そんなこと必要ありませんよ、この国の人間として当たり前のことをしているだけですから。」

モブは少し考える。

「じゃあ、せめて昼飯をおごらせてくれ。代金は私が持つ。適当に出前を取ってくれ。」

「それじゃあの方々とやってること同じじゃないですか。」


受付が片づけをしていると、シーフが近づいてくる。

受付は一瞬緊張した面持ちになるが、すぐに冷静になり通常通りに応対する。

「何か御用でしょうか。」

シーフが尋ねる。

「この辺で、杏仁豆腐を食べられる場所は無いだろうか。」

「知りませんよ、コンビニにでも行ってください。」

シーフが更に尋ねる。

「あと、マンゴープリンとティラミスが欲しい。」

「どれもコンビニにはあるんじゃないですか?あと、一個中華じゃないもの混ざってません?」

シーフは少し考える、納得する。

「なるほど、この国のコンビニもうちの国と似たような品揃えなんだね。

ありがとう、私の分のデザートはなんとかなりそう!」

走って戻っていくシーフの背中を見ながら受付は心の中でつぶやく。

「(今の3品で一人分!?)」


賢者は水ようかんを頬張るシーフを横目に皆に問いかける。

「今日はこれからどうしようか。

まだ時間はあるし、次の王都まで行っちゃおうか?」

監視員が答える。

「王都までは電車で90分位ですね。」

「ですが、今日の夜はサッカーのサイタマ地方ダービーの、アールvsレッドの試合があるのでそれを見てから明日出発という手もありますよ。」

賢者がつぶやく。

「とうとう観光を促すようになったか。」



[次回予告]

アローワーク職員です。

例の外国人パーティは王都に到着すると、一旦バラバラに行動を始めます。

一部はこの国一番の水族館に向かったようですが、観光客を装って何かをするつもりでしょうか。なんと怪しいことでしょう!

だけど我々もやられっぱなしじゃありませんよ。

オーミャから王都ミットまでの間は腕利きのワーカーが一切バレることなく尾行を成し遂げ、あの人達が3日連続中華にするかで揉めるところをバッチリ目撃してるんだから!

他国の侵略に対抗するグリーンガーデンの人々の頑張りをお楽しみに!


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