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2章-2

16話「第2章2話」


[前回のあらすじ]

我々は今からこの道ばたで、テントを張るって言ってるんだ!



一行はテントの片付けをしていた。

「それにしても、みんながこっちを見ている気がするね?」

白魔術師の問いかけに獣人が半分呆れながら答える。

「そりゃそうですよ。こんな、なんでもない道端でテントを張る人なんて聞いたことないですからね。

霧の大陸では普通のことなんですか?」

ナイトが聞き返す。

「普通だと思うか?」

「…でしょうね。」


一行はアローワークの受付にやって来ていた。

ナイトが昨日回収した物品を次々と取り出す。

「依頼の物を回収してきたよ。ほとんどは軍服と軍の支給品だけど、一部手帳とかも混ざっている。」

受付は戸惑う。

「まさかこんな短期間でこんなにたくさんお持ちになるとは…。

最近、洞窟はコウモリやミミックが繁殖して危険になっていると聞いていたのですが…。」

賢者が答える。

「今回は大して襲ってこなかったから仕事はすんなり終わったよ。

それに、あの程度の魔物、いくらいても大した障害にはなり得ないでしょ。ミミックとウンディーネが中の上くらいだけど、それ以外は強くてもせいぜい下の上止まりだし。」

忍者が賢者の言葉に反応する。

「ミミックの評価が高すぎる。

あんなの事前に分かってればどうということはない、ただのデカい軟体生物だろ。

だいたい、シーフがいなきゃ宝箱は開けられないし、そのシーフはトラップ感知を持ってるんだから引っ掛からない。

モンスターとしてコンセプトが破綻しているんだよ。」

狩人が反対意見を述べる。

「だが、犠牲者が多いのは事実だ。

形が宝箱とは限らないしな。

お前も見ただろう。形がほしにくになった所を。」

賢者が突っ込む。

「○ちゃんねるの掲示板の強さ議論みたいな不毛な争いやめろ!」

2人が素早く反応する。

『お前が言い始めたんだろ!』

賢者は申し訳なさそうに引き下がる。

「…ごめん。」


しばらくして話がおさまると受付が業務を再開する。

「そろそろ、よろしいでしょうか?

では、鑑定のため軍に連絡を取りますのでお待ちください。」

受付は受話器を手に取り、電話に付いているダイアルを回し始める。

そんな受付を見て、賢者は耐えきれず突っ込む。

「黒電話、現役かよ!」

黒魔術師が尋ねる。

「何あれ?同じ所を回しているけど、どうやって番号を判別してるの?」

白魔術師が首をひねりながら答える。

「どういう仕組みなんだろう?回っている時間で分けてるのかな?」

シーフが推測を述べる。

「最初の、助走って言うのかな?手で回して手を離すと別のレーンを通るようになってるんじゃない?

Tが横に並んでて、手で横に引っ張って、離すと最初に出会う分岐で下に入るみたいな感じ。」

黒魔術師が尋ねる。

「そんなに苦労して見分けるぐらいなら最初からボタンプッシュ型にすればいいじゃん。」

などと一同が議論を交わしていると、いつの間にか受付が連絡を終えていた。

「あの…よろしいでしょうか。

あと30分ほどで鑑定のため軍の方々が来られますので、奥の待合室でお待ちください。」

忍者が真面目な顔で受付に問い掛ける。

「ひとつ聞きたいことがある。」

「…何でしょうか。」

「その黒電話の中…。」

「知りません!」


一行が待合室でババ抜きに精を出していると、受付が10人以上の軍人を連れて部屋に入ってくる。

忍者がつぶやく。

「ガサ入れか。ついにこの支店の闇が暴かれる時が来たか…。」

賢者がすかさず突っ込む。

「おい、やめろ。」

ナイトが黒魔術師の手札を引き、引いたカードと手持ちのカードを混ぜながら受付に尋ねる。

「随分と人数を揃えたじゃないか。

まるで我々を力でねじ伏せたいみたいな感じに見えるぜ。

まるで、な。」

狩人が続く。

「早くやることを済ませて帰りたいんだがな。今日は賞金で豪勢にビーフシチューにするから買い出しをしたいんだ。」

兵士たちは部屋に置かれた椅子と机を大きく囲うように並ぶ。

再びターンの回ってきたナイトが黒魔術師の手札を引きながらつぶやく。

「後ろに立たれるとカードが見えてしまうじゃないか。瞳に映った情報が読み取られるかもしれないだろ。」

賢者がやんわりと突っ込む。

「人間の瞳の情報を読み取れるでのはハン○ドマンと戦っている時の○京院とポル○レフだけだよ。

あとババ抜き2人になってから何ターンかかってるんだ。

そろそろ終わらせてくれ。」

ナイトは引いたカードを手持ちと混ぜることなく手札に加える。

黒魔術師は意図を察してナイトからジョーカーでない方のカードを引くと、揃った2枚を場に出しそのままカードを片付け始める。

ナイトは手の内のジョーカーをテーブルに置く。

「やれやれ、どうやらババを引いたようだ。」


軍のリーダーらしき人物が一行とは対面にある椅子にかけると、一行を見渡す。

「それで貴様らの目的へ一体何…。」

賢者が言葉をさえぎる。

「何の用事か知らないが、待たされているのはこちらだ。先にこちらの用件、報酬の受け渡しを済ませてもらおうか。」

軍のリーダーはうなずく。

「いいだろう。受付よ、件の物を持ってきてくれ。 」

受付は、かしこまりました、と言うと退室する。

軍人と一行だけが残された気まずい空間を切り裂くように白魔術師が提案する。

「またババる?」

賢者が突っ込む。

「新しい動詞を作るな!」

ナイトが問い掛ける。

「やるのはいいとして、そこの名も知らぬ人も混ぜるのかい?」

軍のリーダーは姿勢を正す。

「おっと、これは失礼。私は…。」

リーダーの言葉をかき消すように白魔術師が告げる。

「じゃあ、配るね!」

賢者がすかさず突っ込む。

「せっかく向こうが何か言おうとしてたんだから聞いてやれよ!」

白魔術師は残念そうに引き下がる。

「…分かった。」

リーダーは改めて姿勢を正す。

「私はグリーンガーデ…。」

言葉を遮るように扉が開き受付が荷物を抱えて入ってくる。

「お待たせしました。」

忍者が受付を誉める。

「いいタイミングだ。狙ってもなかなかできることではない。持ってるな。」


リーダーはテーブルに置かれた品々を数秒間俯瞰する。

「50万円でどうだ。」

賢者が応じる。

「服一着にその値段は遺族の気持ちに寄り添った適正価格だが、大まけにまけて一人分5万円でいいぜ。」

リーダーは鼻で軽く笑うと応じる。

「せいぜい出しても200万円だな。それで我慢してもらおうか。命が惜しくなければな。」

賢者は遺品の中から手帳を手に取る。

「仕方ない。この手帳以外は全部まとめてその値段でいい。

買い取ってもらえなかったこの手帳だけは国に帰って政府に買い取ってもらうよ。

水の大陸に渡ったこととか色々と書いてあったっけなあ。うちの国の政府は一体いくら出してくれるだろうか。

 もしこの場で争いが起きたら簡単に破損して中身が失われるかもしれない手帳…。

 よく考えたらこれは唯一の資料…つまり貴重品だ。相当な大金、それこそ出せるだけの資金全部を出すような相手にしか売れないか。

軍のリーダーは舌打ちをしながら自身の後ろにいる部下に命じる。

「我らの支部の内部留保している金を全額おろしてきてくれ。

800万円くらいはあっただろ!」

部下がリーダーに確認する。

「今日は休日です。それほどの大金の取引となると、窓口が開いている夜間銀行を使うしか…。」

リーダーはいっそう不機嫌になる。

「それしかないんだから、仕方がないだろ!さっさと行ってこい!」


部下が部屋を出ていくと、リーダーが問い掛ける。

「内部留保を全額お支払しよう。支払い可能な本当の限界だ。文句はなかろう?

さて、では次はこちらの用件を片付ける番だな。

と言ってもいくつか質問に答えてもらうだけだがね。」

賢者が応じる。

「こちらからも聞きたいことがいくつかある。ここはひとつずつ交互に質問し合おうじゃないか。」

リーダーはうなずく。

「いいだろう。

まずこちらから尋ねさせてもらうぞ。

お前たちの目的は何だ?」

賢者が応じる。

「その問いに答えるのは、先ほどの代金を受け取ってからだ。

持ってないから払えないなどという言い訳で踏み倒されては敵わないのでね。」


しばらくすると、部下が大きな紙袋を持って戻ってくる。

「全額下ろして参りました。金額が仰られたより大分多く、2,500万円ほどあったため、準備に時間がかかってしまいました!」

リーダーは部下をキッと睨み付けると紙袋を奪い取り賢者たちに放り出すように差し出す。

賢者は紙袋を引き寄せると思わず失笑してしまう。

「随分と正直な部下をお持ちのようで…。」

黒魔術師が白魔術師の袖を引っ張る。

「…今のどういうこと?」

白魔術師は少し考えたあと、獣人の毛を引っ張る。

「どういうこと?」

「ちょっと、毛を引っ張らないでくださいよ。」

獣人は少し考えたあと賢者の袖を引っ張る。

「今のどういうことです?」

ナイトが代わりに答える。

「全額なんてこっちは分かる訳ないんだから、向こうのリーダーが口にした金額かそれに近い金額だけを持ってくればそれで済むのに、バカ正直に全額を持ってきたせいでその3倍近い金額を支払う羽目になったってことさ。」


忍者は100万円ごとに束ねられた札束を、どこからか取り出した大きめな箱に詰め、それをバッグに入れようとするがファスナーが閉まらない。

「5,000万円入るはずのバッグなんだが、おかしいな。」

シーフが助けに入る。

「都知事…じゃなかった、エリア。バラバラにした状態じゃないのか?」

「いや、箱に入った状態だった…。あれ、おかしいな。」

賢者が突っ込む。

「どこぞの汚職で失職した元都知事か!ネタが古いんだよ!」

忍者とシーフはハイタッチする。

賢者がつぶやく。

「さっきコソコソと打ち合わせしてたのこれかよ…。」


「さて、質問にお答えしようじゃないか。」

賢者は忍者たちのミニコントが無かったかのように話を戻す。

「我々の目的は2つ。

数年前に起こったセント…霧の大陸への侵攻事件で起きた真実の出来事の調査。

それと、この大陸に来てから請け負った、盗賊退治だな。月夜の明星、と言えば通じるだろうか。」

賢者の答を聞いたリーダーは怒りを露にする。

「ふざけるな!あの大戦で何があったのか、だと!?

聞きたいのはこっちの方だ!

あの大軍はどうなった!船は1隻も戻ってこない!それどころか兵士たちは誰も帰ってこない!

私の兄も!同期でずっと共に歩んできた親友も!この支部から送り出したたくさんの部下たちもだ!」

忍者が答える。

「そんなこと言われてもなぁ。こっちは一切ふざけてないんだが。」

賢者がすかさず突っ込む。

「ついさっきふざけていただろ!お前が言うと説得力が無いんだよ!」

狩人がふぅと息を吐く。

「とりあえず、出兵が事実ということだけは分かったな。」

白魔術師が忍者の方に視線を送る。

「それで、名探偵エリアはどう推理するのかな?」

忍者がゆっくりと口を開く。

「そうだな…。

現状分かっているのは、事件の最初と最後付近だけだ。

この大陸を大人数で出発して、途中どこかに寄ったのかといったことは分からないが、その内の何人かは霧の大陸に人知れずたどり着き、本国に戻ろうとしたが全員力尽きた、というところは確かだ。」

先ほどとは打って変わってまじめに考察する忍者にリーダーは困惑するが、黙って推理を聞く。

「電車に例えると、始発の駅で大量に乗客が乗ったが、終点の駅では何人かがひっそりと下車した、という状態だ。

つまり事件の本体は途中駅のどこかで起きたってことだ。

始発の駅のことしか知らない彼らに聞いても我々の欲している答えは得られないだろうし、逆に我々が知る限りを話したところで彼らの欲しい答えは得られないだろう。」

忍者は立ち上がると賢者の持つ手帳を奪い、リーダーの方に放り投げる。

「あんたら、そして我々の欲する答えはきっとその中にあるだろう。

我々も先頭の方をちょっと読んだだけで内容はまったく把握していないに等しい。

ちょっと癖がある文章でな。我々だと判読に時間がかかりそうだ。

あんた自身で読み上げてみてくれよ。」

リーダーは手帳を拾い上げると、最初のページを開き読み上げる。

「本日は…太陽…?

水の大陸の港町に着いた我々は、観光がてら…山中で…棒を持った人の絵…?」

リーダーは首をかしげてしばらく考え込んだ後、手帳をそっと閉じる。

リーダーは顔をあげて賢者に問う。

「この絵文字入りの文章、どうやって読むんだ?」


リーダーはなお厳しい表情のまま問いかける。

「お前たちの目的にはある程度説得力がある。だが、霧の大陸がこの国を侵略しようとしている件はどう説明するつもりだ?」

賢者が聞き返す。

「何の話だ?」

リーダーは声を荒げる。

「ふざけるな!盗賊団、銀行、そしてお前たち腕の立つワーカーの派遣…。

これをどう説明するつもりだ!」

忍者が答える。

「そんなこと言われてもなぁ。こっちは一切ふざけてないんだが。」

賢者がすかさず突っ込む。

「ついさっきふざけていただろ!お前が言うと説得力が無いんだよ!」

先ほどと全く同じ流れに部屋全体がざわつく。

黒魔術師が白魔術師の袖を引っ張る。

「…もしかして勘違いネタもう一回やるの?」

白魔術師が小声で答える。

「しょうがないでしょ、向こうがやる気なんだから。」

狩人が問い返す。

「盗賊も銀行も、もちろん我々もだが、侵略とどう結びつくんだ?」

リーダーは興奮を収めることなく続ける。

「盗賊団で不安を煽り、銀行で金融の支配をもくろみ、今度は戦闘要員を送り込んできたんだろう?

 違うか!?」

シーフが答える。

「違う。」

皆が続きを待つがシーフは仕事が終わったと言わんばかりに落ち着き払っている。

しびれを切らし賢者が突っ込む。

「続き無いんかい!」


賢者が仕切り直して問いに答える。

「まず、政府が侵略をもくろんで盗賊団を送り込んだのではないか、という主張についてだ。

あの盗賊団は霧の大陸を蝕む害虫だ。

狩るべき害虫に国外でとは言え肥え太らせる策などあり得ない。」

「次に、銀行についてだ。

我々にとっては庶民の味方の企業というイメージしかなかったが、なるほどこの国の人にとっては海外からの侵略者に見えるんだな。勉強になったよ。

国防上の危機に感じるなら何らかの規制をかけりゃいいんじゃないのか。それはそちらの事情というものだ。知ったことではない。」

「最後に我々についてだ。

少数精鋭ってものは気づかれないように忍び寄り敵の上層部を狙うのでなければ意味がない。

入国していきなり道端でテントを張るなんて目立つことはしないだろ。」

答えを聞いたリーダーが答える。

「なるほど、ひとまずは分かった。

それで、次はそちらの万博のだ。我々に聞きたいことは?」

一同は顔を見合わせる。

「いや、特に…ないかな…。」

黒魔術師がふと思いだし声をあげる。

「ひとつだけある!

この国の軍服のエンブレムって何色かあるけど、どういう違いがあるの?」

リーダーは意外そうな顔で答える。

「これか。これは個人の好みで好きな色を選ぶから意味なんか無いぞ!」

それを聞いた忍者は残念そうに大きく舌打ちをする。

その隣のシーフは天を仰ぎ、ため息をつく。

「なにそれ、つまんない。心底ガッカリだよ…。」

リーダーは困惑する。

「いや、別にエンブレムはウケを狙う物じゃないんだが…。」


一行はアローワークを出て近くの喫茶店で人心地ついていた。

獣人は深くため息をつく。

「はあ~。

死ぬかと思いましたよ。

ところで、結構な大金が入りましたけど、何に使うんです?パーッと使っちゃうタイプですか?」

狩人が冷静に答える。

「あんまり気を抜くなよ。どうやら監視を付けられたらしい。

確認してもいいけど絶対気づかれるなよ。

入り口から3番目のテーブル、というか客は我々を含め2組しかいないから、もう一組の方、と言えば分かるかな。」

賢者が尋ねる。

「私の所からだと振り返らないと見えない位置だな。

どんな格好をしているんだ?」

シーフが答える。

「2人組で、どっちも同じ服装だよ。

スーツの上に茶色のコート。茶色の中折れ帽をかぶっていて、中折の立ち上がる部分に黒い線が入っている。」

賢者が応じる。

「ふーん。なんだかルパ○三世の銭○警部みたいな格好だな。」

監視員たちが見える側に座る4人が一斉に反応する。

「それ。」

「まさにそう。」

「完全にそれ。」

「そうとしか表現出来ない。」

ナイトが付け加える。

「あと、ヒゲダンスでつける髭とまっ黒なサングラスをかけている。」

黒魔術師が感想を漏らす。

「なにそれ。完全に不審人物じゃん。」

監視員たちが見える側に座る4人が一斉に反応する。

「それ。」

「まさにそう。」

「完全にそれ。」

「そうとしか表現出来ない。」


獣人が賢者に尋ねる。

「それで、あの監視員はどうやって撒くんです?」

賢者がアイスコーヒーが入ったコップを口から離す。

「バカなこと言うなよ。

あいつらにはずっと着いてきてもらう。

それで我々がおかしな行動をしないということをちゃんと報告してくれなくちゃ困る。」

「なるほど。

でも、おかしな行動をしないかについてはちょっと不安です。」


一行が喫茶店で落ち着いていると、店員がプレートを持ってくる。

「お待たせしました。ナポリタンです。」

シーフは皿を受け取り自分の前に置く。

「アローワークであんなことがあったからさすがにお腹が空いちゃってね。」

賢者が突っ込む。

「ごめん、その理屈は分からない。」

シーフはフォークで麺を数本巻き取ると、フォークの先端にソーセージとタマネギを刺して口の方に運ぶ。

巻き取った麺は徐々にほどけていき麺の塊は上下に伸びるが、シーフはその一番下を口で受け止め、フォークがまとう麺と具をすべてを口の中に収めると口をすぼめると共にフォークを引き抜く。

シーフは目を閉じゆっくりと咀嚼する。

「パスタというよりはうどんに近い食感の麺がトマトの甘みを凝縮したケチャップを中に浸透させているかのようにしっかりと絡み取っている。

そこにソーセージの旨味としっかりと熱が通ったタマネギの甘みが加わる。

野菜由来の甘さを前面に出した良くできた料理だと思う。」

シーフが一心不乱に食べ進める様子を見て白魔術師は思わず唾を飲む。

「そんなに美味しそうに食べるからこっちもお腹空いてきたじゃない。」

白魔術師はメニューを開くと、おもむろに手を上げ店員を呼ぶ。

「オムライスひとつ下さい!」

店員が戻ろうとするとナイトが声をあげる。

「ハヤシライス下さい!」

他のメンバーをメニューを見ながらオーダーをする中、シーフも注文する。

「私はデミグラスソースハンバーグをパンスープ付きで!」

次々と注文する一行に獣人は戸惑う。

「まだ10時半ですけどガッツリ食べる感じですか?」

ナイトが獣人に忠告する。

「食べなくてもいいけど、後で一人だけズレた時間に空腹になっても知らんぞ。」

獣人は渋々メニューを広げる。


一行は食事を終えて店を出て、入り口の脇に集まっていた。

「さて、このあとどうしようか。」

賢者の問い掛けに獣人は呆れながら答える。

「食事中にたっぷり時間あったんだからその時に話しておけばよかったですよね。

なんで今なんですか?

監視員の方々も戸惑っているじゃないですか。」

賢者が困った様子でぼやく。

「そうは言われてもなあ。ここの大陸のことあんまり知らないし。

現地人のガイドがいればこれからの道のりの候補を上げてくれるのになぁ。」

獣人は仕方ないといった様子で話し始める。

「まず目指すはここから北にあるこの国の最大都市オーミャの町です。

そこからさらに北上して王都ミットを経由して、目的地の最寄りの魔都マエバシに向かいましょう。」

ナイトが尋ねる。

「それでどの道を行けばいいんだ?」

獣人が答える。

「ルートは2つあります。表街道を通るオーミャルート、そして裏街道を通るウラワルートがあります。」

白魔術師が尋ねる。

「どっちの方が面白そうなの?」

獣人が答える。

「断然オーミャルートですね。

そちらは催し物がよく開かれるスーパースペシャルアリーナという施設もあり、また飲食店も豊富、サッカーチームもあります。」

忍者が尋ねる。

「もう片方のルートは?」

獣人が答える。

「ウラワルートは寂れていまして…。

行政機関はそちらにしかないので仕方なく住民は足を運びますが、面白いイベント会場もなく商店街はシャッター通り。

サッカーチームはありますがサポーターがマフィアみたいな連中で、罵詈雑言や暴力は当たり前。はっきりいってこの国の中で人としてのレベルが一番低い集団でしょう。

逆の見方をすると、ルート全体の人通りが少なく盗賊が人知れず移動するには適しているかもしれません。」

シーフが提言する。

「じゃあ表ルートかな。」

獣人が疑問に思いシーフに問う。

「盗賊団を追うのですから、ウラワの方が良いのでは?」

シーフがやれやれといった様子で答える。

「身を隠す時の考え方は2つ。

誰にも見つからないようにすることと、大勢に紛れること。

見つからない方が優れているようにも見えるけど、一回見つかると周りに誰もいない状態になる。そうなるといくら逃げ回っても追手の目から逃れるのは難しい。

それに、生活に必要な物資を確保するためには少なからずリスクを取って誰かに接触する必要がある。生活用品を買い込んで人里離れた場所に戻るとか目立つよね。

逆に大勢に紛れる場合、見つかりやすいのは確かだけど逃げるのも簡単だし、何より買い物がしやすい。勘づかれていないか常に警戒し続けなくちゃいけなくて心労は半端ないけどね。」

忍者が会話に入ってくる。

「果てのない草原の中でひとりぼっちなのと街中の人混みでひとりぼっちみたいなもんか。

泣きたくなる場所はどっちだろうか。」

シーフが答える。

「大人だからね。2つに○をつけるよ。」

ハイタッチする忍者とシーフを見て賢者が呟くように突っ込む。

「堂々とパクるな!霊界の探偵にあの世を見せられても私は知らないからな。」


一行はようやく次の町に向かって進み始める。

賢者がメンバーに告げる。

「だいぶ予定が押してるから急ぐよ。

本家の『水曜○うでしょう』ぐらいの予定の押しっぷりだからね。」

白魔術師が獣人に確認する。

「さっきの町って面白い場所は無かったの?」

獣人が答える。

「あそこにはこの国有数の大きい動物園があります。」

一行は足を止める。

「ヒグマやハシビロコウ、オカピ、マヌルネコなんかもいます。

ゾウは…どうだったかな。多摩にいたのは覚えているけど、こっちの動物園はたしかいなかったような…。」

賢者が突っ込む。

「実在の施設名を出すな!」

獣人は続ける。

「私が最後に訪れた時はパンダの親子がいました。

子供もそれなりにいましたが、一番多かったのは、ババアでしたね。」

賢者がすかさず突っ込む。

「おい、言い方に気を付けろ!」

白魔術師が呟く。

「マヌルネコか、いいねえ。」

狩人がたしなめる。

「ダメだよ。そんな所に立ち寄る時間なんて全然…いや、あんまり無いんだから、わがまま言っちゃダメだよ。」

白魔術師がうなずく。

「そりゃそうだよね。我々には無駄にできる時間は、少なめだからね。」

ナイトが同調する。

「そうそう。たくさんの動物全部じっくりと見るほどの時間は無い。

じっくり見られるのは数が限られるな。」

黒魔術師が続く。

「食後にいきなり激しい運動するのはダメって聞くから、ちょっとのんびり散歩がてら動物園の辺りまで行ってみる?」

シーフも続く。

「今後現地の人と会話するとき、仕事で来たというよりは観光目的って言った方がスムーズだと思うんだよね。そのためのカモフラージュとして、形だけでも中に入っておいた方がいいと思う。」

忍者が続く。

「この国の各種の動物が我々の認識と同じものとは限らない。

同名の獰猛なモンスターかもしれない。

姿だけは確認しておくべきだ。」

賢者が続く。

「この大陸の空気に慣れておくのも必要か。

2時間…結構広いんだっけ、全部見て回るともっとかかるか。

じゃあ中に入ってから3時間後に入口付近に再集合ってことで。」

一行が口々に、仕方ない、などと言いながら街に戻っていくのをワンテンポ遅れて獣人が追いかける。

「観光に行きたいなら素直にそう言えばいいじゃないですか!」

忍者が獣人の方に振り返る。

「そうだ、今の内容を監視員の2人にも伝えておいてくれるかい?」

獣人が答える。

「あっ、はい。 分かりました。


…ええっ!?」


動物園を満喫した一行は、出口付近に集まっていた。

「全員集まった?」

賢者の問いに黒魔術師が答える。

「監視員の2人がまだだよ。ケバブ買って来るってさ。」

しばらくすると、見知らぬ男2人がケバブを持って走ってくる。

「すみません、遅くなりました。」

シーフが尋ねる。

「えっと…誰?監視してた人?」

片方の男が答える。

「はい。変装は子供たちに怪しまれるので着替えました。

申し遅れました。私はスケ。助さんとお呼びください。

そしてこちらが…。」

「カクです。格さんとお呼びください。」

狩人が賢者に小声で確認する。

「(この状況、突っ込まなくていいのか?)」

「(ここまでひどいと、もう突っ込む気もしないよ。)」


「さて、今後の、というより今日の予定を決めようか。

今は15時。これから次の町に向かうと何時ぐらいになる?」

助さんが手を上げる。

「今後長旅になるのでしたら、鍋と水筒とテントと寝袋など旅に必要なものを用意したいので、ちょっとお時間をいただけないでしょうか?」

賢者はしばらく怪訝な顔で助さんを見つめたあと答える。

「…45分で支度しな。」

狩人が獣人に尋ねる。

「この街には店が雑多にある横丁があると聞いたのだが…。」

「ええ。ユキヤ横丁ですね。

手軽に発展途上国の商店のような雰囲気を体験できる場所として有名です。」

白魔術師が呟く。

「この国でしか見られなさそうな光景なんだろうね。

立ち寄る時間は無いけど。」

狩人が同調する。

「そうだな。見て回るほどの時間があるかと言うと、決して十分な時間があると言えないな。」

ナイトが続く。

「ひとつひとつの店をじっくりと見るほどの時間があるとは言えないな。」

獣人がしびれを切らす。

「またその流れやるんですか?

行きたいなら行きたいって素直に言ってくださいよ!」


2時間後、一行は再び街のちょっと外に集合していた。

「さて、今後の、というより今日の予定を決めようか。

今は17時。これから次の町に向かうと何時ぐらいになる?」

獣人が答える。

「歩きか馬か鳥ですね。」

黒魔術師が尋ねる。

「鳥ってあの、ダチョウ型の黄色い…?」

獣人はうなずく。

「そうそう。まるで金銀のエンゼル的なお菓子から取ったみたいな名前の…。」

狩人が補足する。

「空飛ばされたり水上を走らされたり…。」

忍者が続く。

「初期の原画だとかわいさの欠片もない化物の…。」

賢者が突っ込む。

「あの絵に触れるのはやめてさしあげろ!」

獣人は一同の話が落ち着いたのを確認すると続きを話す。

「ちなみに鳥は登場させるとスク○ニから刺客を送られるかもしれないので出せません。」

賢者がすかさず突っ込む。

「じゃあ最初から選択肢に入れるな!」

獣人が続ける。

「馬もあまりオススメしません。」

ナイトが尋ねる。

「なぜだい?」

獣人が答える。

「馬を使うという性質上、夜は動けないので、今日今の時間から次の町までの移動を引き受けてくれる人はいないでしょう。」

シーフが巨大な干しスルメをかじりながらつぶやく。

「ということは、歩きで今夜は野宿かぁ…。」

白魔術師が素早く反応する。

「今日はこの街で宿を取るしかないんだね。

じゃあさっそく探しに行こう!」

そう言うとそのまま間髪いれずに街の中心部に向かって歩き出す。


一時間ほど後、一行は街の中心部の公園に集まっていた。

ナイトがメンバーに問いかける。

「宿あったか?こっちは全然だ。」

狩人がお手上げといった様子で応じる。

「ダメだね。公開したての子パンダ目当ての観光客でどこも一杯だ。」

白魔術師が、座っているベンチを悔しそうに叩く。

「まったく…あの小汚いパンダに苦しめられることになるとはね。」

賢者がすかさず突っ込む。

「小汚いとか言うな。たしかに白の部分は薄い茶色になって見た目汚かったけど。」

獣人は腕組みをする。

「やはりババア寄せの名は伊達じゃありませんな。」

賢者がすかさず突っ込む。

「その呼び方やめろって言ってるだろ!」

シーフが報告する。

「宿は無かったけど中華料理屋と牛丼屋とうどん屋はあったよ。」

賢者がすかさず突っ込む。

「お前は本当に宿を探していたのか?」

忍者が提言する。

「現実問題として宿が無いんだから、どうするか考える必要があるだろう。

ゆっくり食べながらでもいいんじゃないか?」

ナイトがやれやれといった様子でつぶやく。

「結局、宿より飯ルートになったか…。」


中華料理屋に入った一行はメニューを広げオーダーをしていた。

「私は、えっとねぇ…蒸し鶏とクラゲの和え物とレタスチャーハンと回鍋肉!それとマンゴープリン!」

シーフに続いて監視員2人が手を上げる。

「生ビール!」「同じく生ビール!」

全員のオーダーが終わるとすぐに2人分の生ビールとその他のメンバーの人数分の茶が運ばれてくる。

賢者はひと口飲むと茶碗を静かに置く。

「さて、今日のこの後の予定だが…。」

獣人が小声でナイトに尋ねる。

「(霧の大陸では、最初に乾杯の音頭をとったりお酒を飲んで騒いだりするという文化は無いのですか?)」

ナイトが逆に聞き返す。

「(うちのパーティが標準的だと思うか?)」

「(なるほど理解しました…。ですが、そんな事情があるとは知らずにビールのジョッキを抱えた2人が気の毒で見ていられません。)」


白魔術師はレンゲで掬った麻婆豆腐を白米にのせ白米と麻婆豆腐を半々ずつぐらいになるようにレンゲで掬い口に運ぶ。

ひと口お茶を飲むとレンゲから箸に持ち替えザーサイの方に手を伸ばす。

「明日は馬車を使うとして、今夜はどうする?

さすがにまた野宿ってのもクレーム殺到するでしょ、主に私から。

その辺の民家に突撃して、田舎で泊めてもらう企画です、って言って無理矢理泊めてもらう?」

狩人が獣人に尋ねる。

「キーリ…だっけ?お前はここでの宿泊はどうするつもりだったんだ?」

獣人はレバニラをひと口頬張ると数回咀嚼して飲み込む。

「私もこんなに混雑しているとは知らず…万が一と思って持って来た段ボールが役に立つとは思いませんでした。」

忍者が尋ねる。

「そういや、なんで我々が海底洞窟を抜けて来た時に出口にいたんだ?

誰かが来るという確信でもあったのか?」

獣人が答える。

「たまたまですよ。最初は港で張っていたのですが商人しか来なくて…。ダメ元で入管の職員に聞いたら、ちょうど向こうの大陸を出たワーカーの方々が2組いるという連絡を受けた、とのことだったので待ってたのですよ。まさかその日の内に抜けてくるとは思いませんでしたが。」

白魔術師が首をかしげる。

「2組?」

シーフが答える。

「入るときは私は別パーティだったでしょ。」

白魔術師が相づちを打つ。

「なるほどね。

で、今日の宿はどうするの?」

賢者が突っ込む。

「話題転換、強引すぎるだろ。」

黒魔術師が白魔術師に同調する。

「実際問題、どうするの?

寝台列車や夜行バスがある訳じゃないんでしょ?」

酔った監視員が答える。

「軍の秘密の地下鉄を利用します?

私たちが一緒なら利用できます。」

賢者が五目チャーハンを掬ったレンゲを置いて聞き返す。

「この国にも列車があるのか…?」

監視員がためらうことなく答える。

「軍事機密なんですがね、この町から最大都市オーミャを通り首都ミットまで至る地下鉄があるんですよ。」

賢者は突っ込まず黙って続きを聞く。

「機密と言っても関係者がメンバーにいれば自由に使えますよ。

存在は極秘なので口外無用ですよ?」

「列車でオーミャに向かって向こうで宿を探してはどうですかね?」

忍者が尋ねる。

「使えるのが軍関係者だけってのが解せないな。

地上じゃなく地下なのは秘密にするためか?」

監視員はそれぞれハイボールと生ビールを飲み干す。

「地下である理由は単純です。

この国は雨が多く年中多湿で地面が柔らかくレールを錆から守りつつ水平に保つのはコストが大きくなります。」

「地下には大きな岩盤の層があるのでそこをくりぬいているのです。」

忍者が再び尋ねる。

「それで、利用者を絞る理由は?」

監視員が答える。

「昔の偉い人物の教えに依るものです。

自動車という機械は便利なものだが誰も彼もが乗るから道路が混雑してしまう、と。」

賢者がすかさず突っ込む。

「そいつ酒を飲まずにはいられないアル中だぞ。」

監視員が付け加える。

「実際は馬車業界の圧力が強くて一般に開放できなかっただけです。」


食事を終えてひとここちつくと、賢者は勘定書に目を通し、監視員に手渡す。

「お前たちの酒代まで持つつもりは無い。お前たちの分はお前たちで支払ってくれ。」

監視員は渋々レジに向かう。

賢者は酔っ払い2人の背中を見ながら黒魔術師に忠告する。

「一流のワーカーを目指すなら絶対ああなるなよ?」

黒魔術師が尋ねる。

「なんで?」

狩人が答える。

「お酒ってのは毒物だ。

無理矢理利点を挙げて擁護するものもいるが、体や精神に害悪を与え中毒性も低くない正真正銘の毒。合法麻薬と言ってもいいかもしれない。

年齢制限があるが、年齢によって害が無くなるわけじゃない。低年齢の方が毒性を大きく受けるっていう話もあるが、年齢を重ねれば安全になる訳じゃない。むしろ体質的に弱いのに年齢だけで安心して大量に飲む方が個人的には怖ろしいね。酒ってのはどこまで行っても本当にただの毒だ。

どうしても飲みたけりゃ自律ができてかつリスクを正しく理解できるまで成長しろ、その上で自殺行為をしたけりゃ後は知らん。年齢制限はそういう意味がある。

家庭や学校で酒のリスクを教えず、また、全体に精神年齢が低い日本なんか制限年齢は30でも低すぎると個人的には思っているがね。」

狩人が続ける。

「我々にとって酒の中毒症状で一番危険なのは、正常な判断が出来なくなるって所だ。」

黒魔術師が尋ねる。

「軍事機密を平気でバラしちゃう、とか?」

狩人が答える。

「それもあるが、一番怖いのは暴力沙汰になることだよ。力のあるワーカーが暴れると甚大な死傷被害が出る。

うちのメンバーを見てみなよ。誰かが暴れだしたら止めるのは骨が折れるし、全員無傷なんてシナリオは思い浮かばないだろ?」

シーフが付け加える。

「一定以上の力のワーカーで酒場に行く人なんて見たことないね。

特に、止めてくれる仲間のいないソロはお酒にはかなり気を使うよ。酔った相手に絡まれるのも、正当防衛であっても相手に大怪我させちゃうのは気分が悪いから酒場自体に近づかないようにしているよ。

レスターもソロの時は、そうだったんだよね?」

ナイトはドキッとしながらも冷静を装いお茶をひと口飲み干す。

「も……もちろん…だよ…。」


一行は、監視員の案内で地下鉄のホームに来ていた。

賢者が明るい構内を見回すと、それなりにホームは混雑しており、多くは軍関係者とおぼしき客であったが、その他に明らかに一般人と思われる客もかなりの数見つかる。

「どう見ても一般人らしき人もいるが?

スーパーのロゴが入った買い物袋からネギが顔を出しているあそこの人も軍の関係者なのかい?」

監視員が答える。

「いえ、一般の方ですね。

特に入場者のチェックはしておりませんので。みなさんもゲートを通るとき何も調べられなかったでしょう?」

「これだけたくさんの人が利用しながら、存在は一般にはバレていない。

皆が口外していないということです。

この一般人の数はこの国の人間の口の固さの証左なのです。」

賢者が突っ込む。

「この一般人の数は、バラしたこの国の軍人の口の軽さの証左でもあるけどな。」


しばらくすると駅に列車が到着する。

列車は構内に入ると徐々に減速していき、やがて所定の位置で停止する。

停車後少し間を空けてホームドアと列車の扉が開く。

扉の脇でシーフが降りてくる客を眺めながらつぶやく。

「ちゃんとホームドアを完備しているんだねぇ。」

白魔術師が反応する。

「こんなにたくさんの利用客がいれば当然でしょ。

逆に、列車の規格とかそういう言い訳で付けなかったら、もうそれは客の命より儲けを重視する未必の故意の殺人犯だよね。」

シーフは列車に乗り込みながら答える。

「そりゃそうか。」


「…というわけで、列車に乗ってオーミャの町に着きまし…た、と。」

忍者の宣言に賢者が突っ込む。

「車窓の景色が地下で面白くなかったので全カットしたけど無事に目的地に着いた体で話を進めます、みたいな感じ出すのやめろ!」

ナイトが切り出す。

「宿を探すんだろ?早くしないと昨日の二の舞になるぜ。」

それを聞いた監視員が告げる。

「みなさん、安心してください。」

忍者が素早く反応する。

「どう見ても履いてるじゃないか!そのボケは違うぞ!」

賢者がすかさず突っ込む。

「お前のその反応が間違いだよ!」

監視員は気を取り直して続ける。

「あそこに軍関係者専用の宿舎があるんです。

空きがあれば泊めてもらえるはずです。」

「ちょっと聞いてきますね。」

小走りで近くの建物に向かう監視員2人の背中を見ながら黒魔術師がつぶやく。

「あの人たち普通に話しているけど、私たちを秘密裏に監視してるんだよね?」

狩人が続く。

「酒を飲む前からあの調子だからな。

あれがデフォルトってことだ。

この国の人の秘密の概念は我々と異なるようだ。」

獣人が素早く反応する。

「あれが普通だと思わないでください。」


数分後、監視員が建物から出てきて頭上で大きな丸を作る。

賢者がつぶやく。

「よその国の人間がいるのにオーケーしたか。宿舎の管理人もなかなかだな。あの2人だけがおかしいって訳ではないようだ。

やっぱりこの国の人間は…。」

獣人が素早く反応する。

「あれが普通だと思わないでください!」


[次回のあらすじ]

こんばんは、リンです。

なんとか野宿を免れてまともな寝床にありつけて、起きて朝食を食べて自由行動で、まあそんな感じ。

さらにもう1つ次の町である王都を出発できる所までイベントを進める予定だよ!

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