2章-5
19話「第2章5話」
[他作品のあらすじ]
パン屋により産み出された人造人間である主人公は、そのエネルギー源である自身の生首を時折交換しながら争い事を暴力により解決してきた。
今日もまたいつもの黒い生き物が、代わり映えのしないマシンに乗って菌をばらまき始めたぞ!その理由を問いただしたことはないけど、今日も殴って解決だ!
獣人が話し始める。
「我々の種族は、ハーフウルフまたはワーウルフと呼ばれています。
当初はウルフとマンを合わせた呼び方を予定していたらしいのですが、色々と大人の事情があったらしく変更になりました。」
ナイトが頷く。
「そりゃそうだろう。バネっぽい悪魔にナントカトムボーイでバラバラにされそうな名前だもんな。」
賢者が突っ込む。
「一応言っておくけどそれ更に元ネタあるからな?」
獣人がちょうど話し出そうとしたタイミングで、白魔術師が反応する。
「元ネタって何なの?」
狩人が説明する。
「大昔、ものすごく強い力士がいてあだ名がそんな感じだったんだよ。」
獣人が再びちょうど話し出そうとしたタイミングでシーフが反応する。
「なんでオオカミ?」
ナイトが答える。
「そりゃ、オオカミみたいに…オオカミ…。
オオカミの特徴ってなんだ?」
狩人が答える。
「群れで生活する動物で、寒さに耐性が高い生き物だよ。」
忍者がすぐに反応する。
「それは生物としてのオオカミだろ?相撲と適合する要素無いな。」
皆が黙りこんで悩む中、黒魔術師が沈黙を破る。
「オオカミの実物ってどこに行けば見られるの?」
狩人が答える。
「日本だと、多摩動○園だな。その他ではあんまり飼育されてない。ぶっちゃけシベリアンハスキーを地味にした感じなだけだからね。」
ため息をつく獣人に監視員が声をかける。
「どうした?」
「いえね、話が進められるのは当分先かなって。」
一行の話が一段落ついたのを確認すると、獣人は再び語りだす。
「我々の先祖は21人の魔族でした。」
忍者が反応する。
「ドク○ーストーンよりは多いな。あんまり母数が少ないと近親同士の害が出るからな。」
黒魔術師が尋ねる。
「近親同士の害を避けるには何人位いればいいの?」
狩人が答える。
「それは分からない。だが、小さな閉じた集落なんて大昔から世界中にいくらでもあっただろう。少なくともそのぐらいいれば…。」
獣人は再び椅子に深く座り直すと、話が終わるのを待つためコップに注がれたお茶をゆっくりと時間をかけて飲み干していく。
話が落ち着くと、獣人は再び話し始める。
「我々の先祖は21人の魔族でした。男3人、女18人だったと言い伝えられています。」
獣人が続きを話し始める。
「種族変更希望者が国立病院の研究塔に集められ、特殊に調合された液体を摂取させられました。すると肉体に変化が起き、別の種族へと姿を変えました。
材料の関係で作る度に成分がばらつくので同じ種族になるようにまとめて作成したものを同時に摂取させたとかなんとか。」
忍者が尋ねる。
「その材料って何なんだ?」
獣人が答える。
「海外の名も知らぬ遠き場所から流れ寄る木だそうです。
どこの国から流れてくるのかは不明だそうですが、たまに流れ着くその木の樹液を数十年かけて集めそれらをまとめて1回に大量に、と言っても水で2倍に希釈してようやくコップ一杯程度なんだそうですが。」
一同が黙っていると、獣人がつぶやく。
「割り込みも突っ込みも来ないのは意外です。」
賢者が突っ込む。
「なんとなくヤシの実の歌詞っぽい言い方をしてたけど、その程度で突っ込んでもらえると思ったら大間違いだ。」
狩人が尋ねる。
「その植物の名前は?どこの国から来ているのかは分からないのかい?」
獣人は首を振る。
「その辺りは全く分かっていません。我が国では仮に魔界樹と呼んでいますが、他国で同じようなことをやっているという話は聞きませんし、人間が住んでいない所に生えているのではないかと言われています。
逆に、みなさんは心当たりがあったりしませんか?」
賢者がすばやく答える。
「無いな。仮にあっても、そんな悪用されるような植物を広めたら世界はおかしな魔物が溢れてしまうからな。」
監視員が横から割って入る。
「確かに、摂取量を増やせば魔物化する可能性もあるでしょう。実際、かつて濃度が高すぎて、意思を持たない化物になってしまった記録もあります。ですが、1本の木の葉や幹から採れる樹液はごく微量。魔物化するのに充分な量集めることは難しいでしょう。」
ナイトが小声でつぶやく。
「葉や幹はそうだろうな。」
忍者が獣人に文句を言う。
「話が進まないから、あんまり脱線させないでくれ。」
獣人が頷く。
「そのセリフ、言うことはあっても言われることがあるとは思っていませんでした。」
賢者がメンバーに問いかける。
「何か他に言っておくことがある人はいるかい?
無ければ明日の具体的な作戦を決めよう。」
誰からも意見が出ないことを確認すると、賢者が話し始める。
「実は、明日の作戦はエリアと事前にある程度話し合って決めてある。
まず、朝起きたら、準備を済ませて6時にチェックアウト。」
シーフが手を挙げる。
「その前に朝食を食べたい!」
忍者がため息をつく。
「作戦の大幅な見直しだな。」
賢者が突っ込む。
「そんなに大きく変わらねーわ!」
白魔術師がホテルのパンフレットを開く。
「朝食のビュッフェは…7時からだって!」
賢者がつぶやく。
「となると王城に8時ってのは無理があるか。」
忍者が疑問を呈する。
「でも朝一じゃないと、他の利用客が増えて面倒なことになるぞ?」
賢者が応じる。
「じゃあ、山の中に行くのは今晩の内ってことかい?」
忍者が答える。
「一晩放置したら怪しまれるかもしれないだろ。それは無いな。」
狩人がつぶやく。
「なんか知らないけど計画は本当に大幅変更になりそうだな。」
「というわけで、あれから色々議論して最終的な作戦が決まりまし…た、と。」
忍者の宣言に賢者が突っ込む。
「時間がかかったけど特に面白いポイントが無かったから全カットしました、みたいな感じ出すのやめろ!」
賢者は気を取り直して話す。
「軽くおさらいしておこうか。
まず、明日は7時から朝食。
9時までにチェックアウトしてホテルのロビーに集合。
その後山に登り、転移用の陣を敷設。
終わったら山から降りてダミーの安物の武器防具を購入。
11時30分頃にそば屋で昼食。ニシンそばがオススメらしい。
パン屋で手土産のクルミ入りアンパンを買って、13時の午後イチで王城へ行く。」
白魔術師が補足する。
「武力衝突の可能性があるから、一般の人が少ない内に行くんだよね。」
獣人が小声でつぶやく。
「役所じゃないから一般人なんて滅多に訪れないって言ったんだけどなぁ…。」
賢者が続きを話す。
「門番には用件を正直に話す。このあいだ売られてきた魔族を買い戻しに来たってな。
断られたらレスターが調べた港ルートで不法侵入することになるが、それ以降は実力行使ルートになるからなるべく避けたい。
うまく王城の中に入れたら、王様と交渉してなるべく穏便にことを進める。ダメだったら強行突破で病院の研究棟と城の地下牢を、近い方から廻って目的の魔族たちを連れ出し、山に転移しそのまま北上。魔族を募集しているとかいう連中の船に救出した者たちを引き渡す。
穏便ルートになった場合、話の流れで武器を取り上げられる流れになったらダミー用のものを、さも愛用の武器であるかのように渡す。
城内と病院の地図は全員持っておく。誰かが地図を没収されたら、さも、その1枚しかないかのように振る舞うこと。」
シーフが地図を眺めながら尋ねる。
「こんな詳細な地図、どうやって手に入れたの?しかも、城内の兵士専用の秘密の暗号一覧までついて。」
狩人が答える。
「情報収集に長けた人間にツテがあってね。腕は確かだから信用していい。」
賢者が尋ねる。
「そいつはどんな奴なんだ?」
狩人が答える。
「占い師だよ。」
賢者がすかさず突っ込む。
「それ信用できないやつじゃねーか。」
白魔術師がフォローする。
「いや、本当に腕は確かなんだよ。ネタじゃなく。」
決行当日の朝、一行はホテルのレストランスペースに来ていた。
シーフはビュッフェの並んだ料理を皿に取っていく。スクランブルエッグを取り分け用の大きなスプーン一杯分すくい、手に持つトレーに載せた皿の一角に山型に盛り付ける。
トレーを一旦置き、スクランブルエッグの横に置かれていた小さめな入れ物に手を伸ばす。
小さめな容器の中に立て掛けるように置かれていたスプーンで中のケチャップをすくい、2度3度と皿に盛り付けたスクランブルエッグにかけていく。
ケチャップのスプーンをもとあったように戻すと再びトレーを持ち、スクランブルエッグの隣に置かれたベーコンの所に移動する。
細長く薄く切られたベーコンは肉感を失わない程度に加熱され、表面はベーコンの持つ脂で輝いていた。
シーフは側に置かれた、片面がフォーク状でもう片方がスプーン状の名前の分からない取り分け用の器具を使って6枚ほどを自分の皿に盛り付ける。
顔を上げると周りを見渡し目に止まった料理を順に回り、皿に盛り付けていく。
皿は、アサリのパスタや、コーンやミニトマトの野菜、一口サイズに切られた焼き魚やクロワッサンなどで彩られる。
シーフは満足すると、ドリンクコーナーへと赴き、置かれたコップを1つ手に取ると、それにオレンジジュースを注ぐ。
シーフはコップとトレーを持ち自席に戻るとそれらを置き、再び料理の置かれたスペースに戻る。
ボウル状の皿を手に取ると、近くに置かれていたヨーグルトを皿に注ぐ。
おたまのような器具ですくわれたヨーグルトは皿の上で傾けられ、細い滝のような形状を保ちながらゆっくりと皿へと移動していく。
そんなシーフの様子を横目で見ながら黒魔術師がつぶやく。
「この朝食の場面、必要?」
太陽が頂点を越えて少し経ったころ、一行は王城の前に来ていた。
狩人が周りを見回す。
「入館料はどこで払うんだ?」
獣人が不思議そうな顔をする。
「そんなものありませんけど…。」
シーフが驚きの声を挙げる。
「入場料、無料なの!?」
黒魔術師が忍者に尋ねる。
「普通はいくらぐらい払う物なの?」
忍者が答える。
「うちの国では一時間1,000円だな。ボウリング場とかが使い放題だから人気があって結構長い行列が出来るんだが…。
この国は城の中にエンターテインメント要素が無いみたいからなのか、無料なのに人が集まらないな。おかしな国だ。」
獣人が小声でつぶやく。
「…おかしいのはそっちなんだよなぁ。」
賢者がメンバーに呼びかける。
「今客がいなくてガラガラなのは出足が遅いだけかもしれないし、混雑する前に行こうか。」
城の門に近づくと、衛兵が一行に対して槍を向ける。
「止まれ!何者だ!」
ナイトがつぶやく。
「そんな態度だから客が寄り付かなくてガラガラになるんだぞ。」
衛兵が問う。
「一体、何の話をしている!?」
狩人が呆れた様子で答える。
「客商売なのにそれはよくないぞ。」
賢者が割って入る。
「まあ、いいじゃないか。
そんなことより、早く用件を聞いてほしいものだが。」
衛兵は困惑しつつも尋ねる。
「…用件は何だ?」
賢者が用意していた答えを述べる。
「先日近くの魔族の集落から何人かを政府に売ったが一部買い戻したい者がいる。それなりの額を出すつもりだ。もし転売先があるのであればそこよりも十分に高い額を出すことを約束する。そちらにとっても悪い話ではないと思うが、どうかな。」
衛兵は近くにある内線用の電話を手に取る。
そしてしばらく思案した後、電話を置いて一行に尋ねる。
「…どの部署につなげばいい!?」
賢者が突っ込む。
「それは知らねぇよ。」
しばらく待つと、城の中からスーツの役人が現れる。
「総務省の雑務担当の者です。村を買うとかよく分からない事を言う怪しい連中が来たと聞き参りました。」
賢者がすかさず突っ込む。
「伝言ゲーム失敗しすぎだろ!それと、担当がどこなのかよく分からない仕事をとりあえず総務に回すのやめろ!」
賢者が役人に事情を話すと役人はうなずく。
「なるほど、そういうことですか。分かりました。担当部署にご案内しようと思いますが、あちらの都合もあるでしょうから先に聞いてみましょう。」
そう言うと役人は近くにある内線用の電話を手に取る。
そしてしばらく思案した後、電話を置いて一行に尋ねる。
「玉座の間の内線番号、何でしたっけ?」
賢者がすかさず突っ込む。
「知らねぇよ!
てか、こんな実務レベルの話なのにいきなり玉座の間に通してくれるの?」
一同は役人に玉座の間まで王城の中を案内される。
賢者が隣の狩人にだけ聞こえるような小声でつぶやく。
「(見た所、昨日の地図は正確なようだな。)」
狩人が同様のトーンで答える。
「(そりゃ腕の立つ占い師からの情報だからな。)」
「(そこの信頼感がよく分からないんだよ。)」
黒魔術師がナイトに小声で尋ねる。
「(国のトップがいる所に通されるのに武器没収されてないんだけど、普通なの?)」
ナイトが答える。
「(いや、普通は武器ぐらいは一時的に取り上げられる。なんて非常識な国だ。)」
そんなことを話していると玉座の間に到着する。
役人が一行に告げる。
「到着しました。簡単には話を通してありますので、あとは直接担当者とお話しください。」
すぐさま黒魔術師が頭を下げる。
「ありがとうございました。」
役人の姿が見えなくなると、忍者が言い放つ。
「終点が玉座の間とは上出来じゃないか。」
賢者が突っ込む。
「お前が空気を読んでボケるタイミングをずらすとは意外だったよ。」
一行は玉座の間に入り遠慮する様子もなく歩みを進め、そのまま武器を取り上げられることも止められることもなく王の前まで進み止まる。
賢者が切り出す。
「話は通っていると思うが、魔族を幾人か買い戻しに来た。」
すると横の方から声が上がる。
「担当は私です。」
賢者が突っ込む。
「王様じゃないんかい。じゃあ、なんでわざわざ王様がいる場所を選んだんだよ。」
王が口を開く。
「それはね、そなたたちに問いたださねばならないことがあるからだよ。まずは…。」
忍者がまじめなトーンで割って入る。
「こいつは本物の王様ではない。」
一同がざわつく中、忍者が続ける。
「本物であれば、この国の人間ではない我々が武器を持ってこんな至近距離に近づくことなんか出来るわけがない。
この部屋に入ってすぐ、もっと言えば城の入り口で武器は取り上げられるべきだし、こんな距離になる前に近衛兵が間に入ってくるだろう。
それに王の言葉遣いに緊張感が無さすぎる。
国の代表が外国の者を前にそんな態度を取るわけが無い。」
それを聞いた王や部下たちは互いに顔を見合わせ、皆なんだか申し訳なさそうにしている。
白魔術師が忍者に疑問を投げ掛ける。
「もしかして全員職務を怠っただけで、本物は本物なんじゃない?」
ナイトが続く。
「…おい、どうするんだよ。この空気。」
忍者はしばし考え込んだ後、口を開く。
「…時を戻そう!」
忍者は部屋の入口の方へ向かって歩き出す。
一行はそれにつき従い、一旦部屋の外に出る。
王たちが困惑しながら事態の推移を眺めていると部屋の外からかすかに、終点が玉座の間とは上出来じゃないか、お前が空気を読んでボケるタイミングをずらすとは意外だったよ、といった声がかすかに聞こえてくる。
そして、すぐに一行が部屋に入ってくる。
近衛兵が駆け寄り一行の前に立ち塞がる。
「ここから先は武器の所有は認められません。
預からせて頂きます。」
狩人が買ったばかりのダミー用の新品の弓を手渡しながら残念そうにつぶやく。
「未だに買った当時の事を覚えている弓なんだ。大切にしてくれよ。」
忍者が同じく買ったばかりの初心者用の刀を差し出す。
「買ったばかりみたいに綺麗な状態を保つのって大変なんだぜ。汚すなよ。」
ナイトは剣を差し出すと衛兵に注意する。
「その剣は心眼ソードといって、装備中は自分の周りのことが見なくても把握出来るようになる優れものだ。
把握出来る範囲は達人になれば半径4m。つーかそれが限界。普通は1mかそれ未満だ。
だが、決して一時間に3回以上振るうなよ。恐ろしい呪いが降りかかるからな。
ちゃんと警告したからな。絶対にやるなよ、絶対だからな!」
白魔術師が小声で尋ねる。
「(あんた、あの武器の呪いガチの奴?)」
「(ああ。周囲を探るのに凄い集中力が必要だし呪いの発動条件が簡単なわりに効果が強すぎて全く実戦では役に立たない。ちょうど破壊しようと思ってたんだ。
無事に戻ればそれでよし。裏切られて敵に使われて最後に活躍できたらもっと良し、だと思ってね。もっとも、使用者のその後のことなんて知ったこっちゃないがな。)」
武器を手渡した一行に大臣らしき人物が話しかける。
「私が担当の大臣でございます。ですが、その前に我が王がお話があるとのこと。
もう少しお進みください。」
一行が少し進むと近衛兵が立ち塞がる。
「そこで止まれ!」
ナイトが苦言を呈する。
「なんでお前が大臣より偉そうな言葉遣いなんだよ。お前はただの公務員だろ?」
近衛兵は少し悩むと告げる。
「時を戻そう。」
一旦元の位置に戻り、再び一行の前に立つ。
「そこでお待ちください。」
シーフが思わずこぼす。
「あっ、時を戻した。」
忍者が続く。
「それはズルいだろ。」
賢者がすかさず突っ込む。
「お前が言うな。」
王は座ったままで一行に問い掛ける。
「汝らは何をしにグリーンガーデンにやって来たのだ?」
なぜか忍者が突っ込む。
「ユーは何しに、みたいな感じで言うな。」
賢者がすかさず突っ込む。
「たまたまだろ!」
困惑する王に賢者が答える。
「観光と、霧の大陸の国内で起きている不可解な事件の原因調査かな。国内じゃ知り得なかった情報得られたらな、と期待して来た。
ついでに道すがら色々と仕事を引き受けているよ、ワーカーだからね。
今日ここに来たのもその一環さ。」
狩人が王に問う。
「他に聞きたいことはあるかい?
→観光で回りたい場所はどこか?
ここまでの観光でどこが良かったか?
今日は何を食べた?
好きな本は何?
仕事が無く遊びにいくならどこに行くの?
」
賢者が突っ込む。
「久々に見たなその形式。
後半の選択肢なんだよ、どこぞのアイドルか!」
シーフが答える。
「朝はホテルのビュッフェ、昼はニシンそばをミニかやくご飯付き。
好きな本は特に無い。活字は苦手。
遊びにいくのは、動物園や水族館が多いかな。」
シーフが続ける。
「まあ、プライベートな事を聞かれてものらりくらりとかわすだけだよ。」
賢者が突っ込む。
「ガッツリ答えてるじゃねーか!」
王が一行に問い掛ける。
「霧の大陸は、この国を滅ぼそうとしているのか?」
白魔術師が答える。
「いや。」
全員が白魔術師の続きを待つが、白魔術師は仕事をやり終えた顔で一向にリアクションを取る気配がない。
黒魔術師がそんな様子の白魔術師にささやく。
「(みんな言葉の続きがあると思って待ってるんだけど…。)」
白魔術師は合点がいった様子で咳払いをする。
「いや、無い。」
賢者がしびれを切らして突っ込む。
「その後の話の展開ノープランかよ!」
忍者が後を受ける。
「その話、前も聞かれたことがあるが、逆に何かそう考える理由があるのか?
共通認識だと思っていることが共有されていない可能性もある。
ちょっとくどいと思っても最初から話してくれ。そうすれば、こちらとしてもそちらの認識に寄り添った答えを提供できるかもしれない。」
白魔術師が納得した様子で小さな声でつぶやく。
「ああ、そう言えば今のセリフ、昨日の打ち合わせでチャンスがあれば聞くって決めた文言そのままだね。」
黒魔術師が小声で突っ込む。
「そうだよ。だからみんな続きを待ってたんだよ。」
王が語り出す。
「合意に基づいて1万人の兵を用意したが…。」
賢者が堪らず突っ込む。
「話へたくそか!いきなり何の話だ。」
王が答える。
「分かった。ちょっと考えるから少し待て。」
数年前のある日、水の大陸のとある貿易都市で、そこの国と我が国との首脳会談が行われました。
賢者が突っ込む。
「急にですます口調になるな!」
王はため息をつく。
王は兵士のひとりを指差す。
「あとはよろしく!」
黒魔術師がつぶやく。
「うわぁ…。」
兵士が語り始める。
ーー
会談はつつがなく進行していきました。重要な懸案が粗方片付いた頃、水の大陸にある国の代表が切り出しました。共に霧の大陸に攻め込まないか、と。
その提案は私たちにとって非常に魅力的でした。ご存知の通りグリーンガーデンは長年、港の少なさに悩まされて来た国です。
距離的に近い場所の港町があれば、と何度思ったことでしょう。
ですが、その想いを成就させるべく霧の大陸に侵攻したことは今まで1度もありませんでした。
それは、霧の大陸に対する見えない恐怖があったためです。我が国には古くからの言い伝えがあります。霧の大陸には手を出すな、決して敵わないから、と。
この何百年、あるいは何千年と伝わってきた古の戒めは私ももちろん承知していました。
その心に刻まれた忌避感から我が国は先方の申し出を断ろうとしていました。
ですが、そんな私の後ろ向きの心を察したのか、先方は誘惑の言葉をかけてきました。『実際にあそこと戦った記録は残っていないだろう』、『仮に言い伝えが当時の情勢では正しくても何百年も経った今も当てはまるとは言えない』、『5大陸の力を合わせればなんとかなるだろう』、『古からの幻想を打ち破ってみないか』、と。
たしかに、言い伝えは所詮、言い伝え。実際の記録の記録が残っているわけではありません。そして2カ国だけではなく5大陸の国全てということの心強さ。現実味を帯びた領土への欲に負け、私は差し出された手を取ってしまいました。
我々はそれぞれ1万ずつの兵力を、水の大陸の国のひとつは霧の大陸と関係が良好なため1,000人、風の大陸も霧の大陸と同盟関係だったため表立って兵は送れず義勇兵という名目の1,000の兵となりましたが、総勢4万2,000人という軍が、水の大陸の南端の都市ナンキシラハマに集結しました。
その時は誰もが勝利を信じて疑いませんでした。
霧の大陸の北部中央にあるミヌエットから上陸し数日後にはそのまま霧の大陸の王都を陥落させるだろうと。
黒魔術師が疑問を投げかける。
「なんでミヌエットからなの?5方面から攻めれば良かったのに。」
狩人が答える。
「ミヌエットは海に隔てられているとはいえ水の大陸との距離が一番近い都市で、何かのトラブルで互いの軍同士が衝突しないようにミヌエットとナンキシラハマは非武装にする条約が結ばれているんだよ。
条約を破棄するつもりなら攻め込むポイントとしてはおかしくはない。南下すればすぐに王都だしね。」
忍者がつぶやく。
「正しい判断だな。うちの北部の防衛体制を知らない人間にとっては、な。」
黒魔術師が尋ねる。
「どういうこと?」
狩人が答える。
「水の大陸は大昔から、国家そのものが海賊とも言われる国だ。だから、うちの国の海賊対策も当然、かなり強固なものとなっている。
もちろん軍はいない。その代わり、ワーカーがかなりの数常駐しているんだ。
あの町は常時、海賊狩りの依頼が出ていて、不法入国の外国人を生死問わず捕らえれば賞金が出る。
それと、あの町はワーカー用の無料宿泊施設があり、何もせずとも滞在しているだけで生活補助金が出るから、ちょっと休暇を取りたいっていう時はみんなミヌエットに向かう。
チームの実力があるほど支払われる補助金が大きくなるから、実力のあるパーティも結構見かける。
ミヌエットはわざと入り組んだ街並みになっているから、足並みの揃った軍隊よりも我々ワーカーに有利な地形になっている。
仮に数万の軍が来たとしても市街戦の訓練を受けまともに戦える人数はそのごく一部だけであろう。軍隊でワーカーの街ミヌエットを陥落させるのはほぼ無理と言ってもいい。」
狩人が続ける。
「ちなみに捕らえた盗賊は裁判無しで懲役99年固定だ。」
黒魔術師が更に問う。
「99年ってかなり重い方なの?」
狩人が答える。
「うちの国は原則的に懲役刑しか存在しない。その年数と執行猶予だけが変わる。
ただしひとつだけ例外があって、懲役年数が積み重なって年数が100を越えると死罪に変更になる。
懲役中に越えてもアウトだ。」
黒魔術師が更に問う。
「刑の最中に年数が増えることもあるの?」
狩人が答える。
「刑務所から脱走を企てたり窃盗や傷害事件を起こしたりとかね。
逆に減ることもある。社会奉仕活動や研究への協力とかね。困難なものほど減刑の度合が大きいんだそうだ。」
忍者がつぶやく。
「もし懲役が90年近くあったら、農場で奴隷的労働10年で釈放、って言われたら飛びつく奴がいてもおかしくはない…か。」
王が割って入る。
「あの、そろそろこっちの話に戻ってきてもらっていいですかね?」
狩人は無視して忍者に問い掛ける。
「エリア、それはどういう意味だ?」
忍者が答える。
「いや、何でもない。気にするなって。」
狩人が重ねて問う。
「何でもないわけあるか。何か分かったんだろ?」
王が横から口を挟む。
「あの、そろそろ…。」
忍者が無視して狩人に答える。
「いや、おかしいとは思っていたんだ。
政府が農場に人を安く払い下げるなんてさ。でも、大量の長期囚人を抱えていたとなれば話は分かる。食費等で結構な経費がかかっていたのだろう。過酷な農場で10年、いや5年働けば釈放、という条件で外部に移管したとしてもおかしくはない、と思ってさ。
ついでに売却益まで得られるんだから、もしそれが真実だとすれば、政府内になかなかのやり手がいるようだ。」
王は助けを求めるように周りを見渡す。
それに気づいた獣人が首を振る。
「こうなったらもう話が落ち着くまで待つしかないです。」
一行の話が終わると兵士が話し始める。
「えっと、どこまで話したのだったか…。
そうそう、連合軍が霧の大陸に向かって…。
あの、もうちょっと興味持ってもらっていいですかね?なんかもう終わったことをまた聞かされるなぁ、みたいな雰囲気出さないでもらいたい。」
ナイトが手鏡を手に持ち枝毛を切りながら答える。
「もういいよ。大軍を送ったけどワーカー連中にズタボロにやられて残りは海賊と間違えられて捕まって牢屋の中なんだろ?
セントラル…霧の大陸側はただの海賊退治の認識だから騒ぎにならず、逆に周辺国は誰も帰ってこないから騒いでるってだけだろ?
もうネタ割れてるんだから何の興味も涌かない。
さっさと用件済ませて帰りたいんだが。」
脇に控えていた老将が口を開く。
「お前たちを帰す訳にはいかない。」
忍者が面倒くさそうに応じる。
「そういうセリフは将来好きになった相手の為にとっておきな。」
老将はボケに一切触れず話し始める。
「連合軍が大敗したのがお前たちの国のワーカーによるものだということは我々も把握している。といってもほんの数日前知ったばかりだがな。
お前たち以外にも霧の大陸からワーカーチームが来ていてな。そいつらはあの海底洞窟を抜けてきた化け物だ。
そして、そいつらは海底洞窟から我が国の敗走兵の遺品を回収して届け出た。
ほとんどが軍服などの標準装備であったがその中には、一冊だけ日記が含まれていた。
ヒエログリフみたいな絵文字だらけで解読には苦労させられたが、日記のおかげで真実を知ることができた。」
賢者がつぶやく。
「私たちの『他に』、か。大した情報収集能力だ。」
老将は賢者が言ったことが皮肉であることに気づくことなく話を続ける。
「上陸した先遣隊は苦もなくミヌエットの市街地に入り中心部の広場に陣を敷設しようとしたが、ゲートボールに勤しむ老人を排除出来ず返り討ちにあい、その間に通報されワーカーが続々と集まり先遣隊は壊滅させられ散り散りに逃走。3首の化物が召喚されたり見たこともない高レベルの風属性の魔法が放たれたり、地獄絵図だったようだ。」
狩人が補足する。
「ゲートボールやってたのは3丁目老人会だろうな。」
黒魔術師が尋ねる。
「有名な団体なの?」
狩人が答える。
「ほぼ全員が元ワーカーだよ。タナカさんは麻雀の腕が達人レベルだ。フセさんは暇を見つけては釣りに出かけることで知られている。マスダさんは手品がうまい。
覚えておくべきはこのぐらいか。」
シーフが更に補足する。
「ナガオカさんの作るおはぎは美味しいよ。」
黒魔術師が戸惑いつつもうなずく。
「分かった。覚えておく。」
忍者が補足する。
「ちなみに全員今後のストーリーには一切絡まない。」
黒魔術師がすぐに反応する。
「えっ、そうなの?じゃあ覚えないよ。」
狩人が続ける。
「3首の怪物というのはケルベロス…うちの国のもう1人の賢者ビサイドの召喚獣だな。
相手が強敵や未知の場合にとりあえず召喚される奴で、簡単に言えば噛ませ犬だ。召喚獣でありながら通称が与えられていて、人呼んで特攻隊長。あそこのパーティと一緒に仕事をすれば高確率でお目にかかる、特にありがたみの無い召喚獣だ。」
老将は咳払いをして話を続ける。
「手帳の著者は先遣隊のメンバーで、襲撃を受けた後本体のいる船に戻ろうとしていたが、そこはすでに戦闘区域になって近寄ることができなかった。白魔術師…多分見間違いだろうが、白魔術師の格好をした者が恐ろしい破壊力の打撃を繰り出し続け血の雨を降らせていたんだそうだ。」
白魔術師がつぶやく。
「そんな人物、心当たり無いなぁ。」
老将は気にせず話を進める。
「既に押され気味であったが、しばらくするとでかい城みたいな召喚獣が現れた。」
狩人が補足する。
「ビサイドの手持ちの最強召喚獣だな。通称ア◯クサンダー大先生。目から聖属性のビームをお出しになられる。」
ナイトがつぶやく。
「やっぱり特攻隊長は重要場面では使われないんだな。」
老将が続ける。
「恐れをなした連合軍船は地上展開していた兵を全て見捨てて出港の支度を始めたが、潮の流れに対応するため全艦隊を鎖で繋いでいたのがアダとなった。」
忍者が横やりを入れる。
「リアル赤壁の戦いだな。」
賢者が突っ込む。
「むしろあっちがリアルだろ!
あっちも大部分創作なんだろうけど、こっちは100%創作なんだよ!」
老将は続ける。
「全ての係留ロープを切り離した直後、この戦いで最大の被害が出た。
陸から離れて間もない3隻がまるでそこだけ重力が数十倍になったかのように、急速に海中へと引き込まれていった。
船を全て鎖で繋いでいたのがここで裏目に出た。
最初の船が沈むとその隣が引きずられ海中へ、更に隣が引っ張られ海中へ。
またたく間に全ての戦艦が海の藻屑と化した。
皆が呆気にとられ静まり返る中、『全部、繋がってたんかい!』という何者かの突っ込みの声が響き渡ったのだそうだ。」
ナイトが老将に尋ねる。
「それで、無関係な私たちに何の用があるんだ?そいつらにはとても勝てそうもないから替わりに私たちを相手に八つ当たりってことかい?」
老将が答える。
「いやいや、そうじゃない。むしろ、いつか2つの賢者パーティに出会えたら我が国に与して貰いたいと思っているのだよ。」
ナイトが疑問をぶつける。
「それで、私たちには何を望むのかな?」
老将が答える。
「なあに、簡単なことよ。君たちには我々の最初の手駒になってもらう。力ずくでもな。
そして同格かちょっと上のチームを引き入れるための戦力になってもらう。
そうしてどんどんと強いチームを手にしてやがて賢者パーティも手中に収める。
その力が手に入れば世界を手にすることも容易。
素晴らしいとは思わないか?」
忍者がうなずく。
「つまり、ポ○モンでいうところのゼニガメのポジションになれと言っているのだな?」
老将が顔をしかめる。
「…んんっ?」
忍者が続ける。
「そして、電気ネズミやらモグラやらスプーン曲げそうなエスパー、ガスっぽいゴーストなどを配下にしつつ笛で寝てる奴を起こしたりとかサファリで動物に石を投げたりして最終的には強い鳥2種や品種改良されたエスパーを使役しようって企みだな?」
老将は隣のモブ兵士に尋ねる。
「今のはどういう意味だ?」
モブ兵士が答える。
「金銀バージョンで言い換えましょうか?」
賢者が突っ込む。
「今ので全然ピンと来ていない奴に第二世代で例えても通じ無いだろ!」
忍者が更に付け加える。
「我々を草むらから飛び出した弱い奴だと思っているようだが、正体を知らぬ相手に油断は禁物だぜ。
固くなるだけのサナギだと思っていたら伝説の3犬かもしれないぜ。」
老将が隣のモブ兵士に尋ねる。
「おい、今のはどういう意味だ?」
モブ兵士が渋い顔で答える。
「えっ、今のは金銀ネタだから分かるでしょ?」
賢者が突っ込む。
「なんで第二世代は常識みたいな反応なんだよ!」
老将は咳払いをして話を再開する。
「何を言っているかは分からんが、お前たちのことはちゃんと調べている。
実は尾行を付けていてな。お前たちのここ2日ほどの行動は2割位は把握している。」
賢者が素早く突っ込む。
「率低いな。」
老将が続ける。
「まさかバラけるとは思わなかったのでな。
どうしても人員の関係で、監視対象ひとりあたり数時間しかチェックできていないが、そこの2人だけは二日間きっちりマークしていたぞ。」
老将がゆっくりと指を指した先にいる監視員2人はドキッとする。
「まさかマークされていたとは…。」
「全く気づきませんでした。」
賢者が困惑する。
「別にいいけど、そいつらこの大陸に来てからの臨時メンバーだぞ?
というか、そもそもにおいてメンバーに加えた覚えもない。」
老将が驚く。
「えっ、そうなの?」
老将は咳払いをすると手元の書類を読み上げる。
「魔族2人の行動レポート。
昼、パチンコへ行きそのまま夕方まで。夕食はとんかつ屋で酒をあおりながらロースカツを堪能。そして、宿泊するホテルへ。
翌日はホテルから出たのは12時過ぎ。お好み焼き屋で昼食を取ったあとはパチンコ屋へ。夕方にパチンコ屋から出てきて景品交換所で換金後にピザ屋へ。ビール3杯とピザ2枚を平らげ、ホテルに戻る。」
老将が書類から顔を上げると賢者が突っ込む。
「何の価値もない調査結果だな!なんで読み上げたんだよ!」
老将が2枚目の紙を読み上げる。
「ここから先は一日中張り付いてはいないから目撃した場面のみだ。
獣人の行動レポート。
目撃箇所は漫画喫茶の中だ。」
賢者が突っ込む。
「それ調査員が仕事サボって漫画喫茶に入らないと目撃できないだろ!仕事しろ!」
老将は続きを読み上げる。
「獣人は漫画十数冊を抱え、それを棚に戻していた。全てを戻し終えると続きの十数冊を抱えて席に戻っていった。」
賢者が突っ込む。
「一冊ずつにしろ!他の客が持って行った中の一部を読みたいかもしれないだろ!自己中な行動やめろ!」
獣人は小声でつぶやく。
「その、すみません…。」
老将は紙をめくる。
「次は、ナイト。」
ナイトが待っていましたと言わんばかりに声を上げる。
「おっ、来たか!あの場面しっかりとレポートしてくれよ。」
老将が読み上げる。
「目撃箇所は、繁華街の防具屋。
明らかにまがまがしい品々を手に取り価格交渉をしていた。」
ナイトが自ら補足する。
「なかなか面白い物もあったよ。
呪いかどうか微妙な特殊なタイプの防具が多かった。
例えば、鳥型のモンスターを遠ざける効果があるけど本物の鳥から嫌われる『ライトニングメイル』なんてのもあった。全身がピカピカ反射するんだぜ。」
賢者が突っ込む。
「それただの鳥避けだろ!あの銀色のキラキラした奴。CDを吊ってぶら下げておいてもある程度代用できる奴。」
ナイトが付け加える。
「実際、公園のハトたちは一目散に逃げていったぜ。」
賢者が突っ込む。
「買ったんかい!っていうかそんなもの着て街を歩いたんかい!」
老将が紙をめくる。
「次は黒魔術師。」
ナイトが割って入る。
「ちょっと待て!もう終わり?
私が暴漢に襲われる女性を助けた場面は?」
老将が答える。
「いや、これだけだが…。」
狩人がつぶやく。
「そりゃ、そんな怪しい格好してれば尾行も逃げるだろ…。」
忍者が続く。
「尾行避けの効果もあるみたいだな。」
老将が続きを読み上げる。
「次は黒魔術師。
目撃場所は、水族館の中。」
賢者が突っ込む。
「またサボってるじゃねえか。仕事しろ!
なんで正直に中で見つけたって白状しちゃうんだよ。水族館に向かっている所を見つけたとか言えばいいだろ。」
老将が続きを読み上げる。
「一緒にいたのは、見た目からジョブが分からない2人のうちのメガネじゃない方。そちらはこの時にしか一切目撃されていない。」
忍者が反応する。
「普段から忍んでるからそう簡単には見つからんニン。当然だニン!」
賢者が突っ込む。
「不自然きわまりない語尾やめろ!」
老将が続きを読み上げる。
「黒魔術師は各水槽で魚を下から覗きこんでいた。」
ナイトが黒魔術師に尋ねる。
「どういうことだ?」
黒魔術師が答える。
「深海魚はお腹側が光るみたいな話があったでしょ?普通の魚はお腹が白いらしいけどどうなのかなって気になって…。」
忍者が補足する。
「真剣に観察してたよ。マンボウの腹を覗きこんで見る人、初めて見たよ。」
忍者は更に付け加える。
「シノノメサカタザメっているだろ?」
賢者が相づちを打つ。
「ああ、あの上から見るとサメみたいなエイだろ?水槽の下の方を泳ぎ回ってるやつ。」
忍者がうなずく。
「そうそう、それ。
そいつの腹が見たかったのか、水槽の下の端に目線を合わせてエイの動きを追いかける変態ムーブしてた。」
黒魔術師が素早く反応する。
「ちょっと!それバラさなくてよくない?」
老将が続きを読み上げる。
「黒魔術師はもうひとつ。」
黒魔術師が反応する。
「なんで私だけ2つあるのさ!?」
老将が続きを読み上げる。
「目撃場所は市場。狩人とともに店を回っていた。
回っていた店はほとんどが八百屋。
八百屋を回ってカニステルという物がないか聞いて回っていた。」
賢者が突っ込む。
「どんだけあの果物のこと気に入ったんだよ。」
黒魔術師が弁明する。
「ちょっと食べたくなったから少し買っただけだよ。」
狩人が補足する。
「買ったのはたった31個だもんな。」
賢者が突っ込む。
「完全に買い占めているじゃねーか!転売ヤーか!」
老将が読み上げる。
「次は見た目からジョブが分からんメガネ。」
賢者が突っ込む。
「誰がメガネだ!…してるけど。」
狩人がつぶやく。
「なんで突っ込んだんだよ。」
老将が続きを読み上げる。
「図書館で何か本を読んでいた。近寄って内容を確認するとサメの図鑑だった。」
賢者が補足する。
「水族館にサメがいっぱいいるって聞いていたから事前に調べておこうかと思って。」
賢者の言葉に誰も反応せず、重苦しい静寂が支配する。
賢者は空気に耐えかね自分でフォローする。
「マジメか!」
狩人がつぶやく。
「とうとう自分にも突っ込みだしたか。」
老将が読み上げる。
「次はシーフ。
目撃場所は繁華街のど真ん中。
行き倒れが出たと騒ぎになっており、倒れている人物を確認するとシーフだった。
シーフは力を振り絞ってポケットからパンを取り出して口にすると、数十秒後には立ち上がり何事も無かったかのように歩き去っていった。」
シーフが抗議の声を上げる。
「そういうでっち上げはよくない。」
賢者が反論する。
「いいや、お前は倒れていた。」
「そんな…見てもいないのに。」
「見てないけど、間違いない。」
老将が読み上げる。
「次は狩人。
白魔術師と一緒に繁華街で目撃。
道端にいた占い師に…。」
狩人が割って入る。
「そこまでだ。それ以上しゃべると明日の朝日は拝めなくなるぞ。」
ナイトが白魔術師に尋ねる。
「何があった?」
白魔術師が答える。
「占いは何とも言い難い感じだったんだけど、最後に今後の旅に関わる情報くれたから気前よく5,000円ポンと払ったよ。
で、いい情報をゲットした位の気持ちで昨日の夜の打ち合わせに臨んだら、同じ内容、というかもっと詳しい内容をノルドが話して完全に無駄な出費だったって話。」
賢者が確認する。
「もしかしてアローワークで無料で聞けたあの話?それにいくら出したって?」
「5,000円。いい話が聞けたぜあばよ、みたいな感じで。」
狩人が割って入る。
「おい、そんな感じは出さなかっただろ!」
白魔術師が突っ込む。
「いや、実際ちょっとそんな感じ出てたよ。」
老将が確認する。
「あとひとりだけどもう尺が無い。どうする?」
賢者が答える。
「気づかなかったけど、とうに尺ぶっち切ってたからもうこのまま続行で。」
老将が読み上げる。
「最後に白魔術師。
目撃場所はゲームセンターの中。」
賢者が突っ込む。
「仕事しろ!」
老将が続きを読み上げる。
「熊手で潮干狩りみたいに小物をすくうゲームに真剣に取り組んでいた。」
シーフが補足する。
「透明なドーム型の、回転寿司みたいに回ってる大量のお菓子とかを拾い上げて上にある前後移動する棚に乗せるやつ?」
白魔術師がうなずく。
「それ。
珍しいグッズがあったから、つい。」
狩人が問う。
「珍しいグッズ?」
白魔術師がポケットか小さなグッズを取り出す。
「これ。サ○リオのキ○ィがプロペラ機のパイロットやってる謎のコラボ商品。」
ナイトが困惑する。
「翼の星マークは何だ?会社のロゴでもないし。どこかの軍隊?なんにせよあんまりいいコラボとは思えんな…。」
老将が読み上げる。
「目的の物を手にすると間もなく、たまたまメガネの何のジョブか分からない奴が通りかかり、白魔術師が手にした物を見せると『第1次世界大戦の偵察機か!少しはコラボ相手に選べ!』と突っ込んだ。」
狩人がつぶやく。
「ノルドお前、静かだと思ったら既に突っ込んでたのか…。」




