嵐を鎮める抱擁
暴走するドラケアの炎は庭を焼き尽くそうとしていた。だがシオリが命を懸けて抱きしめ、竜の怒りを鎮める。
炎は方向を失い、灼熱の海のように広がっていた。ドラケアはもはや学生ではなく、竜そのものとなり、力に呑まれていた。
ゼイリンとアザリナは限界に近く、防御は崩れかけていた。水は蒸発し、盾は砕けそうに揺れていた。校長エレナラは一歩前に進み、介入の準備を整えていた。
その時、混乱の中で一人の影が動いた。
シオリは涙を浮かべながら進み出た。体は震えていたが、決意は揺るがなかった。
彼女は炎を突き抜け、焼ける痛みに耐えながらドラケアへと近づいた。
「もうやめて…お願い!」
シオリは抱きしめた。
世界は一瞬、静止した。炎の轟きは止まり、全てが息を呑んだ。小さな体で竜を抱きしめ、消えそうになりながらも離さなかった。
学生たちは凍りついた。
カオリ「シオリ…!」
リウィン「危ない…燃えてしまう!」
だが抱擁は解けなかった。シオリは必死に、ドラケアの中に残る人の心へ届こうとした。
炎は揺れ、咆哮は途切れ、燃える瞳がシオリを見た。怒りと優しさが交錯する瞬間だった。
炎は次第に弱まり、ドラケアは頭を垂れた。息は荒かったが、怒りは消えていた。シオリは焼け焦げた服のまま涙を流し、微笑んだ。
「もう大丈夫…落ち着いて。」
ドラケアは初めて、怒りではなく疲れの咆哮を漏らした。炎は消え、庭は煙と静けさに包まれた。
ゼイリンとアザリナは驚き、防御を解いた。
ラルティは震える声で呟いた。
「やった…彼女は止めた。」
校長エレナラは足を止め、尊敬の眼差しを向けた。シオリは誰にもできないことを成し遂げたのだ。
草の上で、ルナラは微笑んだ。耳は弱々しく動き、尾は重く垂れていたが、瞳には共感が宿っていた。彼女は知っていた。シオリが皆を救ったのだと。
シオリは膝をつき、傷つきながらも生きていた。ドラケアが鎮まったことに安堵し、抱擁が嵐を止めたのだった。




