第70話 新たな仲間#1
ユトゥスがサクヤ達の成長をお楽しみの頃、暗き森の一角では二人の少女が正座して向かい合っていた。
そのうちの白髪の美少女は今の状況に心臓をバクバクとさせ、ド緊張していた。
「「.......」」
やっちゃった! やっちゃった! やっちゃった!
内心でそう言葉を繰り返しながら、今この状況を気まずく感じているのがリビアだ。
というのも、今の状況というのは彼女が意図的に作り出したものなのだ。
経緯を説明すると、ユトゥス達が突入し煙幕をしようした直後、リビアはすぐさま状況を確認した。
ユトゥス達がどういう目的でどこから現れてどのように去るつもりなのか。
判断が遅れれば今の状況を覆すチャンスは二度と来ない。それだけは肝に銘じて。
リビアは突然の事態に動揺して固まっているバンズの目を盗み、混乱に乗じて走り出す。
自分の理想の推しの行動をイメージし、これは魔族を逃がすために現れたと目的を仮定し、そのためには魔族を逃がすための場所はどこか。
魔族はバンズの策略により魔法は使えず、弱体化の影響も受けている。
つまり、強引にバルコニーまで突破するにはリスクが高く、誰かが付き添いとなって誘導する必要がある。
となると、その相手はあの耳付きフードを被った人。そして、接触するならその人。
リビアはバルコニーから外に出て屋根に飛び移ると、フィラミアが来るのを待った。
すると、リビアが出てきたバルコニーとは別のバルコニーから魔族が現れ、彼女は慌てて屋根を走って移動し、現れたフィラミアに対して言った――私を攫ってください!
そして現在、リビアの一世一代の大胆な行動をし、その余韻が抜けぬまま時間だけが過ぎる。
何か話そうと口をもごもごさせ、意を決して顔を見るも、目の前にいる目と口が三日月形をした真っ白い仮面を見ると思わず下を向いてしまう。
声をかけた時は興奮しててよくわからなかったけど、近くで見ると超怖えぇ......!
「.......このままでは話しづらいかもしれませんね」
すると、そんなリビアの様子に気付いたのかフィラミアはそっと仮面を外した。
リビアの伏せた視界の端で仮面が膝上に置かれたこと気付くと、ゆっくり顔を上げる。
そして、目の前に現れたド級の存在感に目を奪われた。
「か、可愛い......」
月光に照らされ輝く金髪にアクセントをつけたようなピンク色毛先。
誰もが悶え苦しむことになるだろう狐タイプのケモ耳。
美人的要素もありながら年相応の可愛らしさも兼ね備えた黄金律の顔面。
言葉で表すなら天女。あまりの可愛らしさに本当に同じ女かとい疑ってしまう。
「ですよね」
フィラミアはドヤァと言わんばかりの顔をする。
そんなナルシスト全開の表情にもかかわらずウザさよりもトキメキが勝ってしまう。
なんだこの生き物。卑しすぎる。同じ女であっても襲いたい。
「あの、お名前聞かせてもらっていいですか?」
「あ、えーっと、リビア=アルベールと言います。
その突然の要求を呑んでくださりあいがとうございます」
「ふふっ、そんなかしこまらなくていいですよ。
私は主様のメイドなので基本丁寧語を使っているだけですから」
「そ、そうですか.......じゃなかった、そっか。わかった」
リビアは若干声がうわずりながらも頷いて返事をする。
まだ若干手汗をかいている。大丈夫か私! まだ中ボス戦だぞ!
「私はフィラミアといいます。どうぞよろしくお願いします。
にしても、リビアさんはとても可愛いですね。まるでお人形さんみたいです」
「いえいえ、私なんか。まぁ、周りから言われることはあるけど、フィラミアほどでは......」
「リビアさん、可愛いは誰かと比べることはないんです。
確かに誰かに見られて「可愛い」と言われるのは可視化された一つの評価です。
ですが、それはその人の評価に過ぎず、自分の可愛いと合致してないからといって自分を卑下することはありません。
自分の可愛いは自分にしかありません! ならば、胸を張って自分の可愛い道を歩きましょう!」
「フィラミア.......いや、フィラミア先生........!」
「さぁ、復唱してください! 私は可愛い!」
「わ、私は可愛い」
「自信を持って! 私は可愛い!」
「私は可愛い!」
「もっと大きな声で! 私は超可愛い!」
「私は超可愛い!」
「最後に! 私は超超可愛――」
「うるさい。静かにしろ。魔物が近づいてくるだろうが」
フィラミアに釣られて拳を突き上げながら叫んでいたリビアは途端にビシッと固まった。
その様子はさながら石像の如く。それもそのはず目の前に待ち焦がれた推しが現れたからだ。
頭上に伸びた手はするすると膝上にちょこんと戻り、小さな存在となった。
まるで心臓が耳元にあるかのように鼓動している。今まで味わったことのない感覚だ。
3次元の推しに会いに行くファンはいつもこういう気分なのだろうか。
コラボグッズを買いに行った時とはまた違う高揚感と変なことをしでかさないかという不安。
たぶんする。絶対変なことする! 頭の変なリミッターが外れる気がする!!
「フィラミア、この女は誰だ?」
「リビア=アルベールという方です。訳あって攫って欲しいとのことで攫ってきました」
「しれっととんでもないことを言うな、貴様。まぁ過ぎたことか。
にしても、リビア=アルベール.....この名前には聞いたことがあるな」
な、名前呼ばれちゃった!
「確か、"黄金の錬金術師”と呼ばれていた少女だった気がする。
そうか、貴様がその有名人か。まさかこのような小娘とは思わなかったな」
「.......っ!」
その言葉にリビアはそっと唇を噛みしめ、スカートの裾をギュッと握った。
どこか見下されたような言葉に僅かながらの失望感が過る。
「リビア、立て」
「ひゃい!」
突然の命令にリビアはビクッとしながら立ち上がった。
見た目の印象も声も好き。しかし、口の悪さと性格が何とも言えない。
若干の期待外れ感と「こんなもんか」という諦念感が襲い始めたその時だった。
「貴様の髪色に似合ったせっかくのドレスが汚れてしまう。
この外套ぐらいしかないがその上に座れ。そうすれば汚れない」
「.......え?」
そう言ってユトゥスは脱いだ外套を地面に広げた。
その行動にリビアが呆然としているとユトゥスは再度告げる。
「聞こえなかったか? そのままだと貴様のドレスが汚れる。
似合っているドレスを汚すのはこっちが見ていて気分が悪い。
だから、とっとと座れ。俺の外套が汚れるのは気にするな」
「あ、はい.......」
リビアは内心沸騰していた。
「似合っている」たったその一言で全ての負の感情が吹き飛んだ。
我ながら単純。あれど飛び上がるほど嬉しい。
(主様は言葉遣いで誤解されがちですが、行動は凄く優しいんですよ)
フィラミアがこっそりと教えてくれた。
その言葉が妙にしっくりきたのは先の行動を見たせいだろうか。
リビアは言われた通りに外套に座った。なんとなく外套の手触りを確かめてしまう。
というか、銀髪......よき。
「そういえば、俺の自己紹介がまだだったな。ユトゥスだ。覚えておけ」
「ユトゥス.......ユー様」
「ユー様? なんだその呼び方は? まぁいい。
にしても、貴様が仮面を外していれば俺が外さなかったら礼儀知らずみたいじゃないか」
「主様は口調の時点でもうアウトだと思いますけどね」
フィラミアに小言を返されながらユトゥスは仮面を外した。
その時の衝撃をリビアは二度と忘れはしない。
月光に照らされ宝石のように透き通って輝く深紅の瞳。
そして、リビアにあった確固たる好きなキャラデザインには白い髪に赤い瞳、もしくは銀髪に赤い瞳。
そのうち一つの究極のペアが自分の推したる存在に適用されていた。また、それをマッチする好きな顔。
それ即ち――あ、目が孕んだ。
読んでくださりありがとうございます(*‘∀‘)
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