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最後の賢者 エレメニルの物語  作者: 山乃末子
風の国
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風の騎士

 突然現れた風の騎士フェイはウェルとサーラを見くらべている。


「どちらが空の賢者様なのかな」


「僕が空の賢者ウェルです」


「火の巫女サーラ」


「さすがエアリア様。火の国からも会議の参加者を引っ張ってきたんですね。しかしこのような年齢のお嬢さんとは」


「なに。サーラが子供で頼りないって言ってるの。私の火魔法はすごいんだよ」


 サーラがふくれているが、その様子もかわいらしい。フェイもにこにこしている。サーラを構って遊びたそうだ。


「失礼かもしれないけど、若い女の子が騎士というのもあまりないんじゃないかな」


「じゃあいわせてもらうけど、僕よりも小さい子が賢者というのもどうなのかな」


 ウェルは率直に感想を述べただけだが、フェイは女が騎士、というところに引っかかったらしい。エアリアは笑っている。


「大人一人ぐらいなら楽々うちの家まで連れていけるんだけど・・・まあウェルとサーラなら、がんばればいけるかなぁ」


 そこで考え出されたのがこの形だ。まずフェイがサーラをおんぶしてエアリアの腰を持って抱える。ウェルは自力でサーラの上からフェイの腰にしがみつく。サーラが落ちないように押さえ込む意味もあるらしい。


「おちないようにしっかりしがみついていてよ。サーラも見ててね。まあ万が一落ちても、拾ったげるから大丈夫だけど・・・」


 エアリアは本気で心配している。サーラは空を飛べるので楽しそうだ。まあエアリアやサーラなら、もし落っこちたとしても自力でなんとかできるんじゃないだろうか。ウェルが一番危ないかもしれない。フェイは剣を持ってぶつぶつ何か唱えている。飛行魔法を使う前の準備だろうか。


「さあいくよ。しっかりつかまっててね」


 周囲に強力な上昇気流ができて、さらに強くなっていく。エアリアはすそを押さえ、サーラは目を見開いて強くフェイにしがみついている。ウェルはフェイの腰を持つというより二人にしがみついている感じ。そして4人はふっと浮かび上がった。最初少しふらついていたようだが、飛んでいるうちにフェイは慣れてきたようで、安定してきた。


「これも訓練だね」


「フェイ。やはり飛ぶと速いですね。もう城と城下町が見えていますよ」


 風の国も広大だが、首都の城下町は小さくまとまっている。城下町の中央の小高い丘の上に王城があった。城下町の周りには貴族の屋敷がぱらぱらとある。フェイの家というのは、そのどれからしい。ウェルの住んでいた里は森の中にあったが、風の国も緑の多いきれいなところだ。


「ええ。さあ皆様。楽しい空の旅も、もうおしまいです。最後にサービスッ!」


 フェイは宙返りと急降下をやってのけた。サーラはきゃっきゃ喜んでいた。エアリアも楽しんでいる。ウェルは真っ青になった。もう一度やろうとしたので必死で止めた。フェイには冷やかされ、サーラには文句を言われた。


 フェイの家は風の国の貴族フォーゲル卿の屋敷だった。フォーゲル卿は会議には出席しないらしい。風の賢者セトがチェイニに殺されたことに心を痛めているようだった。


「長旅でお疲れだろう。ゆっくりと休んでください」


 フェイは類稀な風の魔法の才能の持ち主で、前代風の騎士の弟子となった。前代風の騎士が病死して、遺言により風の騎士となった。その際にフォーゲル家の宝剣ウィンデスヴォルテを継承した。先ほどフェイが飛ぶ前に持って、呪文のようなものを唱えていた剣だ。緑の魔法の宝玉が柄についた細身の剣だが、強い魔力を持っているらしい。


 フォーゲル卿は娘を騎士にはしたくなかったようで、心配ばかりしているらしい。


「とんでもないお転婆で気苦労が絶えません。どうかフェイが無茶をしないように見ていて下さい」


 かわいがりぶりも印象に残ったが、フェイは子供扱いを嫌がり、少しうるさがっているようだ。


「ところで。ウェル」


「何かな」


「ウェルは荷物を置いたらっ・・・て君何も持ってなかったね。少し休んだら。裏の庭に来てね。待ってるから」


 何となく含みのあるフェイの笑いに嫌な予感がした。


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