表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
最後の賢者 エレメニルの物語  作者: 山乃末子
隠れ里と火竜
8/33

火竜の家

 2017年10月25日加筆修正しました。

 10月28日にタイトルを変更しました。


 火竜ひりゅうフレドの娘ということはサーラも火竜なのだろうか。一見普通の子供に見える。ウェルも火竜フレドのことは知っていた。火の国の守り神、伝説の竜だ。エアリアは薄々感づいていたようで、それ程驚いていないようだ。サーラの魔力が普通でないことに、いち早く気付いていたからだろう。ウェルにはサーラの魔力がどれ程か見当もつかない。


「火竜フレド様の住家はここから近いのかしら。私達は風の国へ行かなければならないの。それ程急いでいる訳ではないけれど、あまり遠回りになるなら、また後日にお願いしたいわ」


「大丈夫。転送の魔石があるから。帰りは風の国まで送ることもできるよ」


 転送の魔石は特定の場所に瞬間移動できてしまう秘宝だ。そんなものが昔あったらしい、という伝説のアイテムだ。現存していて誰かが所持している、という話は今では聞かない。ほとんど失われたのかもしれないし、持っていても途方もない貴重品なので、秘密にしている可能性はある。サーラの持っている転送の魔石は、フレドの住処だけでなく、風の国、水の国、地の国のある特定の決まった場所へ移動できるらしい。


 ウェル達はとんでもない重要人物の招待に応じることにした。病気の火竜の力は借りることができなくても、火竜は長生きなので、何か良い知恵を持っているかもしれない。


 火竜の家は高い山の洞窟で、ウェルやエアリアの装備では寒かった。二人が震えていると、サーラが結界のようなものを造り出した。その中だと人間にはちょうどよい温度が保たれる。フレドは洞窟の奥の方でうずくまっていた。サーラが魔法で明かりを作っているが、全身までは見えない。それでも大変な大きさだった。ウェルの住んでいた家より大きい。


「よく来てくれた。このサイズでは話しにくかろうから、人になろう。火の騎士ジャックだ。よろしく」


 そこに竜の姿はなく、壮年の騎士風の男が右手を差し出していた。がっちりした体格で、髪は短く刈り込んでいる。髪や瞳の色がサーラの父親を裏付ける色をしている。さすがにエアリアも驚いたようだったが、握手をした。続けてウェルも握手をした。大きな暖かい手だった。


「体調が悪くてね。そこに腰掛けさせてもらおう。あなたがたもどうぞ」


 火の騎士ジャックを名乗り、人に変身したフレドは、強靭きょうじんそうな肉体をしていたが、たしかによく見ると顔色が悪い。とても病人には見えないが、あくまでフレドが魔法で変身した仮の姿なので、意外に病気は深刻なのかもしれない。


「そうか、あなた方が空の一族、巫女のエアリア殿、賢者のウェル殿か・・・空の賢者・巫女にお目にかかるのは私も初めてだ」


 火竜フレドは代々火竜の王に受け継がれる名前で、フレドは十一代目の火竜の王だ。火竜の一族は数は少ないが、世界中に今でもひっそりと暮らしているらしい。フレドは少し前まで人間の姿をして火の国で生活していた。強力な魔力と、人間ばなれした際限のない体力で、国の騎士にとりたてられたらしい。しかし当時の火の賢者と巫女には火竜であることを見抜かれた。その後火の巫女と結ばれサーラをもうけた。当時の火の巫女とは当代火の賢者のマチだ。チェイニに囚われている火の賢者はサーラの母、フレドの妻ということになる。フレドは人間の姿をしている時はジャックを名乗っている。当代火の騎士でもある。


「我らには()しくも共通の敵がいるようだ。私は今、万全な時の力の半分もないが、多少の協力を申し出ると共にお願いがある」


 ベルゼフは捕らえた火の賢者マチから魔力を奪っているらしい。エアリアの憂慮は現実のものとなったようだ。チェイニ達の危険性は想像以上に高く、ことはエレメニルに収まらない重大事だ。フレドはふたつずつの依頼と協力を提示してきた。ベルゼフを倒しマチを助け出して欲しい、ということと、サーラを同行させ守って欲しい、ということだ。そしてそのためにフレドの剣とサーラの力を使って欲しいと言った。


「私たちは危険な戦いに身を投じようとしています。サーラが、かえって危険ではありませんか。この洞窟に潜んでいた方がいいのではないでしょうか」


「サーラは火の巫女なのだ。チェイニにその力を狙われている。既に水の巫女の力はチェイニのものとなった。水の賢者カーミラは、ここの場所を知っているかもしれん。私の力が万全なら逃げることはできるかもしれんが、今の状態ではどうしたものかと困り果てていたところだったのだ」


「わかりました。お受けいたします。それと私に考えがあります。まずフレド様のご病気ですが、カーミラが仕組んだことかもしれません」


 火の騎士ジャックは、空の勇者ジロの旅に、火の賢者マチと共に同行していた。だが病気でチェイニとの最後の戦いには同行できなかった。フレドの病気がカーミラの仕業の可能性はある。


「なるほど。そこまでは考えなかったな」


「魔法によるものなら、何か対抗策があるかもしれません。同盟の会議には水の国の者も出席します。フレド様の病気についても聞いてみましょう」


「ありがとう。よろしく頼む」


「そしてもう一つは・・・フレド様の許可を頂かなければなりません」


 そう言ってエアリアはフレドに耳打ちした。ウェルは何とも思わなかったが、サーラは少し意外そうな顔をしていたようだ。フレドはなるほど、とうなっている。


「危険なことかもしれないが・・・逆に考えれば一番安全でもあるな。そんな手があるとは。・・・エアリア殿にお任せしよう。私の力が足りない今、これより良い手はない」


 その後エアリアはサーラをつれて、さらに奥の部屋に二人で入っていった。


「空の魔法とは便利なものよ。火の魔法をいくら極めてもこんなことはできぬ」


 フレドは少しうらやましそうに言った。ウェルは今までの事情をフレドに説明した。賢者とはいえ実戦経験もなく、今でも自分が空の賢者という実感がないと率直に言った。


「心配は要らぬ。そなたの魔力の潜在能力は尋常ではない。ベルゼフはもちろんエアリアも、おそらくチェイニでさえ、とても及ぶとは思えん。もしそなたが自身の能力を自在に操ることができれば、エレメニルの何者も適わんだろう」


 ウェルは耳を疑った。


「だがチェイニ達は禁じられた秘法を、古いゴミ箱をあさって引きずり出してきたようだ。油断はされるな」


 エアリアとサーラが戻ってきた。サーラは首に赤い宝石をはめた首飾りをかけている。これがエアリアの施した策なのだろうか。


「私の剣も貸そう。今の私では存分に振ることも適わん。火の魔剣ゾルンエルデだ」


 火の騎士ジャックの背丈よりも長く、幅もある大剣だった。これをエアリアやウェル、もしかしてサーラが振るのだろうか。あまりに物々しい剣だった。


「私達に使いこなせるかは分かりませんが、ふさわしい者がおります。ベルゼフの弟子だった空の戦士レイドです」


 エアリアのすぐ横にすっと膝をついて、フレドに頭を下げた姿勢の騎士が現れた。それは見覚えのある鎧、顔は兜で見えないが、ウェルを抱えて逃げて、助けてくれた男に違いない。だがレイドはエアリアが空魔法で造り出した魔法の騎士ではないのだろうか。レイドはフレドから剣を受け取り、一礼して抜くと、軽がると振って見せた。


「ほう。素晴らしい膂力(りょりょく)だ。ジャックよりふさわしいかもしれんな。もし良ければ差し上げよう。病気のジャックに剣は振れんし、火竜フレドにも剣は必要ないからな」


 レイドはフレドの魔剣ゾルンエルデと共に消えた。エアリアが魔剣に空の魔法をかけたようで、レイドと一緒に消えたり現れたりするようにしたようだ。ウェルたちはフレドの住処を後にし、サーラの持つ転送の魔石で一気に瞬間移動した。風の国にやってきたらしい。そこは開けた場所で、前にはきれいな湖があった。そこでウェルたちは少し休憩していくことにした。ウェルは気になっていたことを聞いた。


「レイドはどこからやって来るのですか。すっと現れたり消えたりしますが」


「どこからでもありません。レイドは囚われていた私を逃がすためベルゼフと戦い、チェイニに空魔法で消されたのです。私の空魔法で一時的に元に戻すことはできますが、チェイニを倒すしか完全に戻す方法はありません」


 エアリアは少し悲しそうな顔をしている。ですが大丈夫です。必ずあなた達と一緒にチェイニを倒してみせます、と強く言った。


 軽く食事を取った後、ウェルが空を見ていると、上空から強い風が吹き付けてくる。すると人がものすごい勢いで空から落ちてきた。次第に強くなる風に塞いだ目を開けると、そこには軽鎧をつけた女の子の騎士がいた。薄い緑色の髪にウェルより少し高い身長だ。ショートカットで少しくせ毛のようだ。しゃべらなければ少年に見えなくもない。


「遅いので迎えに来ましたよ。エアリア様。かわいらしいお連れがいますね。はじめまして風の騎士フェイです」


 次回から章が変わり、風の国での話になります。


 レイドかフレドから借りた魔剣がどうなったのか説明がなかったので追加しました。フレドが魔剣をレイドに譲渡しても良い、と言っているので、魔剣はレイドが持っているという頭だったのですが、よく考えると、レイドが消えても魔剣は残ってしまいそうです;


 サーラが魔剣を持っていくという方法もあったと思います。サーラの戦闘シーンはないと思いますが、魔力の後衛かと思いきや、身体能力はずば抜けているというタイプでしょう。それも良かったかもしれません。


 この話はエアリアが裏でごそごそ何かしており、ずいぶん後で回収される伏線になっています。エアリアというキャラクターの一面が出ています。話も新キャラ登場やらいろいろ詰め込んだせいか分量も多くなっています;


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ