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最後の賢者 エレメニルの物語  作者: 山乃末子
隠れ里と火竜
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竜の王女

 2017年10月28日追加しました。

 サーラは生まれた境遇も特殊だし、少し変わった女の子かもしれない。母親も父親も健在で、幼い頃から何不自由なく暮らしてきた。サーラの母親は火の国の賢者で王女、サーラの父親は火竜ひりゅう族の王だったから、サーラは火の国の王女でもあり、火竜の王女でもあった。


 同じ年頃の友達はいなかったが、それを寂しいともあまり思っていないようだ。以前はサーラは火の国の王宮で家族と暮らしていた。火の国の貴族の子が友達役として連れてこられるのだが、それもあまり長続きしない。サーラは体を動かしたり、火の国の山を探検したりするのが好きなのだが、そんなのについてこられる女の子はあまりいない。サーラの身体能力は竜の子供並みだ。他の人間の子供と比べれば、大人と子供の差どころではない。サーラは周りの人間にケガをさせたりはしなかったが、その力を見れば恐がられることもあるだろう。山の中には獣もいるし、場所によっては山賊がいるかもしれない。魔獣が出たって不思議はない場所へ入っていく女の子はいない。サーラにとって山の中はそれ程危険なところではない。だって、サーラよりも危険なけものは、父親のフレド以外に火の国にはいないから。


 サーラの母親のマチは、貴族の女の子として育てたかったようだが、フレドの教育方針はそうでもなかった。子供は元気に外で遊ぶべきと常々主張していた。魔法や戦いの手合せももちろんしたし、狩の仕方も教えていた。手合せは人気ひとけのない山奥でやっていたのだが、もしそれを見たり聞いたりしている者がいたら、震え上がっただろう。サーラはどちらかと言えば、外観はともかく性格はフレド似だったから、竜の教育方針の方がしっくりきたようだ。一言で言えば野生児だ。


 マチは妥協点として、せめて学問や常識は人間の貴族のものも学ばせることにした。サーラは別に勉学は好きではなかったが、記憶力は良く、特に苦にはならなかった。サーラ専属の家庭教師がローエンという爺さんだった。変わり者の男で、結婚もせずエレメニルの古代史を専門に調べているアマチュア学者だったが、講師として話が面白く人気はあった。サーラはローエンから常識や貴族の慣習、作法などを学んだ。ローエンは歴史や物語も教えてくれたが、サーラはそれらが好きで、気に入った本は熱心に読んだ。


 サーラはよく大きなリュックサックを背負って、探検に出かけた。一人で出かけるのだが、マチもさすがにこれは許さず、実はフレド配下のむしや獣、火の国の騎士がこっそり尾行していた。フレドやマチがつけると、さすがにサーラも気がつくだろう。母親や父親と一緒に出かけると、それはもう、ただのハイキングということらしい。


 サーラは人間の社会からは少し浮いているようだが、結構楽しんで暮らしていた。だが、その日々にも影が射す。父親のフレドが病気になり、母親のマチが行方不明になってしまった。マチは出かける時、サーラをフレドに任せた。はじめは二人とも王宮でマチの帰りを待っていたが、病状が悪化してくると、フレドはかつての自分の住処に戻った。サーラはもちろんついていった。そっちの方が好きだから。


 サーラが王宮に顔を出さないと、火の国から騎士が様子を見に来た。王宮にもたまには来て下さい、というかできればお戻りくださいと諫言かんげんして帰っていった。ローエンも騎士達についてきた。年齢からは信じられない体力だ。サーラのことも気になっていたのだろうが、火竜の住居に興味があったためでもあろう。高度もある結構な山の中なので、人が来るのはなかなか大変だ。サーラが王宮へ行く方が早い。それからは時々顔を出した。


 その後しばらくしてから、マチと同行していた地の国の賢者から火の国へ送られた書簡によって、マチがチェイニ達に囚われたらしいことがわかった。母が不在で父が病気の今、サーラは一人で何でもしている。火の国の王宮に戻れば何不自由なく暮らせるのだが、サーラは父の家に住んで、狩をしたり、採集をしたり、探検をしたりして、気ままに暮らす方が楽しかった。


 母の帰還と父の回復を信じ、時に火の神に祈る姿も見られた。かつてはあまりなかった光景だ。最近は泣いていることさえあった。火の王女サーラに涙はあまり似合わない。


 そんな時に現れたのが空の巫女エアリア、空の賢者ウェルだった。病気が悪くなり、最近はあまり目を覚ますこともなく眠っているフレドが目を開き、サーラに二人を迎えに行って欲しいと告げた。


 サーラに関する話が少ないように感じたので追加しました。

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